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18 あの日

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────でも、具体的にどうやるの?オロヴァセーレのサイコメトリーを学園長に見せるとか?
────サイコメトリーというのは、極めて主観的なものだ。俺が幻影魔法を使って証拠を捏造していると言われれば否定するのは難しいだろうな。結局のところ証拠が必要だ。
────……私のことは証拠もなしに捕まえた癖にね。
────全くだ。……しかし、確固たる証拠は出づらいだろうな。奴らも上級の悪魔と組んでいる。……説明は省くが、抜け目ない悪魔だ。
────じゃあ、どうすれば……。
────簡単なことだ。現行犯を捕らえればいい。

……現行犯?
現行犯って?

彼、現行犯の意味がよくわかってないのだろうか。知りたての言葉を使いたがる子供みたいだ。

────何か失礼なことを思っているな?……まあいい。今夜、お前の牢に行く。直に話そう。
────いいけど……。


夜とは言われたが、地下牢にいる私にははっきりとした時間がわからない。オロヴァセーレと指輪で会話してから、もう数時間は経っただろうか。そろそろ彼が来るかもしれない。

でも、どうして夜なんだろう。何か準備があるのだろうか。
いくら学園長の孫とはいえ、わざわざ夜に私に会いにくるのは怪しいだろう。
何をする気なのか事前に伝えてくれればいいのに……と、内心で悪態をついていると、地下に張ってある結界の魔力が揺らいだ。

バチッ!

電撃のような音がしたかと思えば、いつの間にか私の老の前にはオロヴァセーレがいた。
アルトゥールではなく、漆黒の髪とザクロの瞳をしたオロヴァセーレだ。

あまりに突然なことで状況が把握できず、目を白黒させてしまう。

「え……?なんで、さっきまでいなかったよね?」
「当たり前だ。転移してきた」
「転移……って、じゃあ結界は、……あ、」

今気づいた。地下牢全体にに張られていた結界が破られている。

「破ったの!?」
「破った。もう結界なんてどうだっていい。行くぞ、お前に罪を着せた愚か者共を裁きに」

革靴の足音を立てて彼がこちらへと近付いてくる。牢の格子に体が触れた瞬間、青い炎が燃え上がり、鉄格子が一瞬で溶けて消えてしまった。気付けばいつの間にか私の拘束具も消えている。

いつの間にか目の前にまで来ていた彼が、すっと手を差し出してきた。

「手を取れ。決して離すな。俺たちが今から向かう場所は、恐ろしく遠い。はぐれるなどあってはならない」
「あの、どこに……?」
「3日前。お前が捕まった不名誉な事実ごと、全て吹き飛ばそう。……戻るぞ、過去に」

オロヴァセーレが私の手を握った。
その途端、私たち以外の全てがぐにゃりと歪んだ。キュルキュルとフィルムを巻くような音が辺りに響く。

「……ほんと、何でもできるんだね」
「魔界ならともかく、ここまで人間界に大きく干渉できるのは一度きりだ。とはいえ、失敗などありえないが」

無意識なのか、握る手に力が入った気がする。もしかするとオロヴァセーレも緊張しているのかもしれない。

「戻るのは、3日前の夕刻。お前がレオナードを召喚した日だ」
「時間が戻ったら、今の私たちはどうなるの?」
「その日、その瞬間に移動する。俺は……授業中か?仕方ない、抜け出すとするか」
「じゃあ、どこかで落ち合った方がいいよね」
「そうなる。場所は……」
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