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2巻
2-3
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「もう少し詳しく聞かせてもらえるか?」
「いやぁ、全部風の噂程度の話ですけど、なんでも、気に入らない相手がいるみたいですよ。ミストレード侯爵様はかなりの傍若無人で有名みたいですし、きっと周りが騒ぎ立てているだけだと思いますがね」
「分かった。となると……攻め入ってくる日は近いというわけか」
「ん? 攻め入ってくるって……まさか! そんな事がありえるべ!?」
俺が手を止めてポツリと言葉をこぼすと、ゴロンガはハッと何かに気がついて声を大にした。
ピクピクと交互に胸の筋肉を動かしている。
「そうだ。ミストレード侯爵の標的は俺達だ。オリハルコンの水晶を奪った俺達を憎んでいるんだ。ついこの間まであの領地に住んでいただけあって、ゴロンガは察しがいいな」
「え? ちょっと待ってください。ダーヴィッツ領のような小さな領地がミストレード領のような規模の大きい領地から攻め入られたら、さすがにひとたまりもないのでは? それに、ゴローがあそこに住んでいたって……」
ベンは動揺を隠す事なく俺とゴロンガの顔を交互に見やった。
まだ彼はゴロンガと相棒になってから日が浅いので、俺達の内情についてはそれほど詳しくない。
「そこら辺の詳しい事情はゴロンガに直接聞いてくれ。とにかく、どうにかしてもっと情報を集めないといけないな」
「そんなら、オイラとベンが直接ミストレード領に行ってくるだよ!」
ゴロンガは強気な態度で自身の胸をドンッと叩くと、白い歯を光らせながら笑みを浮かべた。
「大丈夫なのか?」
俺は確認として聞き返す。
自身や仲間の土の民が閉鎖的で悲惨な暮らしを強いられていた場所には行きたくないはずだが、本当に問題ないのだろうか。
俺なら嫌な思いをした場所に志願して行くなんて真っ平ごめんだ。
「問題ないべ。野菜の販売をしながら情報を集めるだよ! 気に食わない侯爵の好き勝手にはさせないべ! ベンもそれでいいだか?」
「うーん……でも、ミストレード領まではそれなりに距離があるし、向こうで集めた情報をこちらに伝達する術が無いですよね?」
「確かに……どうにか離れた距離でも連絡を取れる手段があればいいんだけんども……」
ゴロンガとベンは唸り声を上げながら腕を組んだ。
向こうの領地に行ってもらったところで、情報共有する手段がなければ対策が間に合わなくなってしまうかもしれない。
手紙だと緊急を要する情報を知らせるには遅過ぎる。
「ゴロンガの言う通りだな。よし、分かった。俺はその辺りの連絡を取れる手段についてどうにかならないか確認してみるから、また明日ここに集合してくれ」
俺は二人にそれだけを告げると屋敷の中へ戻った。
もしかすると、遠方からでも連絡を取り合える手段が見つかるかもしれない。
鉱石や貴重な宝石などが眠るあそこなら、相応しい魔道具があるかもしれない。
ついこの前に続いて、俺は再びレレーナの元へ顔を出していた。
やはり、魔道具関係の知識を得るなら彼女に頼るのが最善なのだ。
「忙しいだろうに悪いな」
「ううん、大丈夫」
レレーナはベッドに腰掛けながら足をぶらぶらさせていた。小柄だからか床に足はついていない。
「それで、遠くからでも連絡が取れる魔道具……だっけ?」
「都合よくそんな便利な魔道具とかあったりしないか? 急用が出来たからあれば欲しいんだけど……」
俺は向かいに座るレレーナに尋ねる。
淡い期待になるが、彼女なら何か知っていてもおかしくはない。
「ある」
「本当か!?」
「うん。待ってて」
レレーナは迷いのない足取りで部屋の隅へ向かうと、そこに積み重ねられていた鉱石の山を掻き分け始めた。
お宝が多過ぎるあまり物一つを探し出すのも、少しばかり時間がかかるらしい。
というわけで、レレーナが鉱石の山の中を捜索している間、俺は部屋の中を見て暇を潰す事にした。
「あ、オリハルコンの水晶……ここにあるのか」
土の民がミストレード侯爵に強奪されそうになった例のお宝だ。ゴロンガから受け取った後はレレーナに預けていたが、大事に保管してくれているようだ。
元々はゴロンガ達土の民の物だし、一段落したら返還しないといけないな。
そんな事を俺が一人考えていると、レレーナは手には何も持たずにこちらへ戻ってきた。
「魔道具は?」
「ライチに貸してたのを忘れてた。ごめんなさい」
レレーナはしゅんとして俯いていた。俺が無理を言って押しかけてきたんだし、別にそんな落ち込まなくてもいいのだが。
きっとライチは冒険に持参しているので、いつ戻ってくるのか分からない。
ゴロンガとベンにはそのまま伝えて、手紙でやり取りするしかないだろうか。リアルタイムの情報を拾えなくなるのは残念だが仕方ない。
「気にするな」
俺は落ち込んだ様子のレレーナを慰めるために、彼女の頭を軽く撫でた。柔らかな髪は心地よい感触だ。
それから二、三秒、感触を堪能し、その手を離した瞬間の事。
ガチャリと部屋の扉が開かれると、扉の隙間からは狐耳のクールな顔つきの女性がこちらを覗き込んでいた。俺と目があった瞬間に顔がほころび、にっこりと口角を上げている。
彼女の名前はライチ。狐の獣人で元冒険者だ。
「フーくん!」
ライチは俺の名前を呼ぶと、散らかった足元の隙間を縫いながらこちらに駆け寄ってきた。
すぐさま眼前に参上して尻尾をブンブン振っている。
楽しそうで何よりだ。
「ライチ、今日は冒険に行ってないのか?」
ライチはいつものような軽鎧を装備しておらず、身軽なノースリーブとタイトなパンツを着用していた。相変わらず腰には錆びついた剣を携帯しているが、それ以外は普段着だ。
「はい。今日は近くの丘の上でピクニックをしてました!」
「いいなぁ。ワンダ達と四人だけで行ったのか?」
近くの丘というと、我が領の西端にある古の城跡地と呼ばれるキャッスル・ヒルの事だろうか。小高い丘の上には城跡があって、見晴らしも良いのでピクニックには最適である。
「はい。昼食はメアリーさんとリリのお手製だったので、それも大満足でしたっ!」
ライチは色々なジェスチャーを織り交ぜながら言葉を紡いでおり、ピクピク動く耳や揺れ動く尻尾を見ても心の底から楽しんでいた事が容易に分かる。
「ほうほう、俺も行きたかったなぁ。な、レレーナ」
「ちょっと遠そうだし、ライチがおぶってくれるなら行ってもいいかも」
「お安い御用です。あっ、そうだそうだ、これを返すのをすっかり忘れていました。これはレレーナから拝借していた魔道具です。お返ししますね」
ライチは腰元に下げていた袋の中から二枚の石板を取り出してレレーナに渡した。
「レレーナ、これがさっき言っていた魔道具か?」
「うん、さっき私が探してたのはこれ。名前は〝メッセージプレート〟。二枚で一セットになっていて、この石板の片方に書いた文字がもう片方にも表示される遠距離連絡用の魔道具」
レレーナはメッセージプレートを俺の眼前に突きつけ見せてきた。俺が立っている位置はしっかりと把握出来ていないようで、後数ミリでも前に出たら石板と俺の額が衝突してしまう。
時々忘れてしまうが、こういった細かなところで彼女が盲目だという事を思い出させられる。
「随分と便利な魔道具だな」
俺は眼前に突きつけられたメッセージプレートをその手で取った。
石板一つの大きさは約十五センチ四方、厚さは三センチほど。石で作られているので、それなりに重量がある。
「魔力で文字が書ける。でも、別に意識して指先に魔力を集める必要は無い。体内にある微弱な魔力だけで反応する仕組み」
レレーナがもう片方のメッセージプレートに指を走らせると、そこには指先でなぞった通りの軌跡が浮かび上がってきた。
数秒遅れて、俺が持つ方のプレートにも、じんわりと同じ軌跡が浮かんでくる。
「ふむふむ。書いた文字は消せるのか?」
「文字は息を吹きかけると……こんな感じで消える。書いたり消したりすると、相手が持つメッセージプレートに反映するまで時間はかかるけど、これを使えば遠くにいる人と簡単にやり取りが出来る」
レレーナはメッセージプレートに軽く息を吹きかけて文字を消すと、少し得意げな顔で説明してくれた。
「デメリットはあるのか?」
「魔力伝導性が高い特殊な鉱石を使ってるから、これ自体がかなり高価な事くらい。手に入れちゃえば特に気にする事はない」
「レレーナの言葉に補足するなら、少し壊れやすいかもしれませんね。特殊な鉱石で、強度は今ひとつなので、強い力を加えると割れちゃいそうです。力加減が苦手なゴロンガさんなんかに持たせたら、バキッと壊れる事は間違いなしです」
レレーナの説明に付け加えるようにしてライチが詳しく補足してくれた。そのせいでレレーナがムッとして頬を膨らませている。得意分野の解説を奪われたような形になって不服なのだろう。
ライチは年長者らしくレレーナの肩を軽く抱き寄せて背中をさすってあげていた。
こういうムキになるところはレレーナの子供らしい一面だし、相手の顔色を窺って行動に移せるのはライチの大人らしい一面である。
「了解だ。それにしても、父上がまさかこんな便利な魔道具まで持っていたとはな。まだまだたくさんお宝が眠っていそうだしワクワクするな」
俺は部屋の中を見回して彼女に微笑みかけた。
「うん。ここにいるだけで楽しい。でも、お宝以外の物もたくさんあるから、ちょっと大変かも」
歩くだけのスペースはあるが、お宝以外の物も散らばっているので、目の見えない彼女からすれば歩きにくいのは間違いない。
「……困った事があったらなんでも言ってくれ」
その目を治させて欲しいとは彼女自身から頼まれるまで言わないが、やはり大変な思いをしているだろうし、しつこいと思われようと労いの言葉は忘れない。
「ありがとう。ところで、それは何に使うの?」
「えーっと……少し用事があってな」
「遠距離で連絡を取る必要があるって事は、フローラルはどこかに行っちゃうの?」
レレーナは俺の服の裾をギュッと握った。
同時にライチもこちらを見つめてくる。
「俺は行かないから大丈夫だ」
「よかった。フローラルがいなくなると不安だから」
俺の答えを聞いたレレーナは、ほっと一息をついて安心したかのように胸に手を当てる。
「そうなのか?」
「うん」
「……そっか。今日は忙しくなるからあまり話せないが、今度時間がある時にでも街へ出かけるか?」
彼女はどこか寂しさを隠しているようにも見えたので、俺は軽く頭を撫でて問いかけた。
「いいの?」
「当たり前だ。じゃあまた来るから、その時にでも話そうぜ。もちろん、ライチもな」
「はい! ボクもフーくんとお出かけしてみたいです!」
「おう。二人とも、また今度な」
俺はレレーナとライチに別れを告げると自分の部屋へ戻る。
手には二枚のメッセージプレートがある。これを持たせて、ゴロンガとベンにはミストレード領に向かってもらおう。
今日のところは二人にはゆっくり休んでもらって、明日の朝メッセージプレートを渡してそのまま出発してもらうとするか。忙しくて大変だろうが、領地外に行って色々と出来る二人は貴重な情報源となるので頑張ってもらおう。
そして、翌日。
「――というわけで、レレーナから便利な魔道具を借りたから、これを持っていってくれ」
正門の前。俺はゴロンガが引く荷車の上に座るベンに、メッセージプレートを手渡した。
朝が早いからかゴロンガはぼーっとして寝ぼけ眼のままだった。そんなやつに魔道具を渡したら紛失してしまいそうだし、ライチの言葉の通りなら壊しかねないので、当たり前だがシャキッとしているベンに預ける事にした。
「分かりました」
「ふわぁぁぁあ~あぁ……まだまだ眠いけんども、オイラ達はいけ好かない侯爵の領地に向かうだよ~」
「せっかくいつもより多くのポーションを用意してくれたのですから、ゴローはもっと気合を入れてください」
荷車の前に立ってだらしない顔であくびをするゴロンガと、それを窘めるベン。
ゴロンガは凄くリラックスしているように見えるが、臆病な彼の事だ。内心は怖いに違いない。その辺りはベンが上手くカバーしてくれる事だろう。
「まあまあ……それと、今回は試験的に程度の低いポーションを荷車に積んでおいたから、向こうの市場価格に合わせて適当に販売してみてくれ。野菜だけだと腐る可能性があるからな」
「ほーー、初めての販売だべな。不安しかねぇけんども、ちゃんと売れるべか? 今のミストレード領は戦いの前って事で結構ピリついてると思うけんども」
ゴロンガは太い腕を胸の前で組み眉を顰める。
昨日は息巻いていたが、やはり、多少なりとも不安に思う気持ちがあるのだろう。
「比較的安全そうな場所に拠点を構えて、情報を集めながら販売してみてくれ。もちろん、危険な目に遭いそうになったらすぐに逃げるんだぞ」
「ゴローは向こうに住んでいたという事で顔が割れているかもしれませんし、安全を優先するなら街外れの宿を取るのがベストでしょうね」
ベンの提案は尤もだったが、今のゴロンガの姿を見ても、死にかけの村人時代を想起する人なんていないと思う。
でもまあ、念には念を入れておくのも大切か。
危険な目に遭って命を落としたら元も子もない。
「そういう事だ。分かったか、ゴロンガ」
「はいだ! あ、それと、昨日の果物はどれも絶品だったべ! ベンなんか少食のくせに全部平らげていたくらいだよ!」
「それは嬉しい報告だな。じゃあ、最後に幾つかお願いがある。まずは、些細な事でも分かったらすぐにメッセージプレートで情報を共有する事。次に危険があったら真っ先に逃げる事。そして困っている人がいたらなるべく助けてあげる事。分かったか?」
「はい。お任せください」
「りょーかいだべ!」
二人は真剣な顔つきで力強く頷いた。
「それじゃあ、無事を祈っているよ。二人が使えるように最高品質のポーションも載せておいたから有効活用してくれ」
俺が軽く手を振ると、ゴロンガは荷車を引いて歩き出した。
ポーションと野菜、少しばかりの荷物が所狭しと積み込まれた大きな荷車の端にベンが座り、彼はメッセージプレートを大事そうに抱えている。
ゴロンガでは頭が回らなさそうだったので、向こうからの情報の伝達はベンが全て行うように頼んでおいた。
彼の、見た目に反して強気な性格と、持ち前の冷静さを存分に活用させてもらう。
二人の姿が見えなくなった後、俺は次の段階へと思考を巡らす。
「さてと……対策なしに攻め込まれたら、俺達の敗北は必至だな。どうにかして抗う手立てを考えないと……」
セバスチャンから聞いた話によると、ミストレード侯爵はかなりの武闘派らしい。
他の領地に戦争を仕掛ける事もしばしばあるらしく、武力での領地拡大を得意としているようだ。
抱える騎士の数も多く、いつでも自由に千人程動かせるというのだから驚きだ。
そんな軍勢が攻めてきた日には、我が領は耐える事など許されずに即陥落するだろう。
だからこそ、どうにか準備をするしかない。
「部屋で考えるか」
いつまでも正門に突っ立っているわけにもいかない。紅茶でも飲んで冷静になろう。
俺は思考を巡らせながら屋敷へ戻った。
俺は自室に戻り一息ついてから、テーブルの上に地図を広げた。
「ふむ……ミストレード侯爵の領地の中心の街は〝バトルタウン〟と呼ばれているのか。由来は、昔から戦争が頻繁に行われてきたから……って、物騒だな」
まずは相手を知るところから始める。
これまでに調べて把握している事を含め、改めて頭の中で今判明している情報を復習していく。
「攻めてくるルートは、西の丘〝キャッスル・ヒル〟しかありえないな」
侯爵が住むバトルタウンは、この屋敷から見てちょうど西側に位置している。
我が領とミストレード領の境目にあるのがキャッスル・ヒル。周辺と比べやや標高が高く、なだらかな坂道の上には城跡がある。
城跡とは言っても過去の産物であり、時間の経過と共に崩壊し、今では岩の山でしかないが、待ち受けて真正面からやり合うには最適だと言える。
「好都合だ」
俺は依然として地図を眺めながら思考を巡らせる。
戦力差は向こうも把握しているはずなので、おそらく正攻法で攻撃を仕掛けてくるはずだ。
ゴロンガとベンから侵攻の詳細についての情報が手に入れば、こちらで迎え討つ構図を作りあげる事が可能となる。
油断した侯爵に一泡吹かせるにはそれしかない。が、今のところ策もなければ自信もない。
「まあ、坂道を上手く使うしかないか」
俺は右手に持つペンを回しながら、ひたすらに地図を眺める。
立地は問題ない。むしろ有利だと思う。
「……後は攻撃手段と人員だけだが……かなり厳しいな」
乱暴にペンを投げ置いた俺は、肝心な部分が欠落している事に気がつく。
うちの戦力はライチを筆頭とした冒険者組の四人と、セバスチャン、そしてメアリーくらいなものだ。合わせて六人しかいないようでは、千人規模の軍勢に対抗するなど到底出来ない。
個々の力で上回ろうと、これだけの数の差を覆す事は不可能である。
何か妙案はないか……
顎に手を当て思考すると、癖の強い種族の存在を思い出した。
「あぁ! 土の民がいたな!」
えっさほいさと屋敷の裏で野菜を大量生産する彼らの力は絶大だ。
土魔法という特有の魔法は、おそらく農業や建築に対してだけではなく、戦いにも使えるだろう。
キャッスル・ヒルは短い草が生い茂る草原なので、土さえあれば使用可能という土魔法の条件も満たす事が出来る。
彼らを上手く指揮する事が出来れば、かなり戦力として期待出来そうだ。
「いやぁ、全部風の噂程度の話ですけど、なんでも、気に入らない相手がいるみたいですよ。ミストレード侯爵様はかなりの傍若無人で有名みたいですし、きっと周りが騒ぎ立てているだけだと思いますがね」
「分かった。となると……攻め入ってくる日は近いというわけか」
「ん? 攻め入ってくるって……まさか! そんな事がありえるべ!?」
俺が手を止めてポツリと言葉をこぼすと、ゴロンガはハッと何かに気がついて声を大にした。
ピクピクと交互に胸の筋肉を動かしている。
「そうだ。ミストレード侯爵の標的は俺達だ。オリハルコンの水晶を奪った俺達を憎んでいるんだ。ついこの間まであの領地に住んでいただけあって、ゴロンガは察しがいいな」
「え? ちょっと待ってください。ダーヴィッツ領のような小さな領地がミストレード領のような規模の大きい領地から攻め入られたら、さすがにひとたまりもないのでは? それに、ゴローがあそこに住んでいたって……」
ベンは動揺を隠す事なく俺とゴロンガの顔を交互に見やった。
まだ彼はゴロンガと相棒になってから日が浅いので、俺達の内情についてはそれほど詳しくない。
「そこら辺の詳しい事情はゴロンガに直接聞いてくれ。とにかく、どうにかしてもっと情報を集めないといけないな」
「そんなら、オイラとベンが直接ミストレード領に行ってくるだよ!」
ゴロンガは強気な態度で自身の胸をドンッと叩くと、白い歯を光らせながら笑みを浮かべた。
「大丈夫なのか?」
俺は確認として聞き返す。
自身や仲間の土の民が閉鎖的で悲惨な暮らしを強いられていた場所には行きたくないはずだが、本当に問題ないのだろうか。
俺なら嫌な思いをした場所に志願して行くなんて真っ平ごめんだ。
「問題ないべ。野菜の販売をしながら情報を集めるだよ! 気に食わない侯爵の好き勝手にはさせないべ! ベンもそれでいいだか?」
「うーん……でも、ミストレード領まではそれなりに距離があるし、向こうで集めた情報をこちらに伝達する術が無いですよね?」
「確かに……どうにか離れた距離でも連絡を取れる手段があればいいんだけんども……」
ゴロンガとベンは唸り声を上げながら腕を組んだ。
向こうの領地に行ってもらったところで、情報共有する手段がなければ対策が間に合わなくなってしまうかもしれない。
手紙だと緊急を要する情報を知らせるには遅過ぎる。
「ゴロンガの言う通りだな。よし、分かった。俺はその辺りの連絡を取れる手段についてどうにかならないか確認してみるから、また明日ここに集合してくれ」
俺は二人にそれだけを告げると屋敷の中へ戻った。
もしかすると、遠方からでも連絡を取り合える手段が見つかるかもしれない。
鉱石や貴重な宝石などが眠るあそこなら、相応しい魔道具があるかもしれない。
ついこの前に続いて、俺は再びレレーナの元へ顔を出していた。
やはり、魔道具関係の知識を得るなら彼女に頼るのが最善なのだ。
「忙しいだろうに悪いな」
「ううん、大丈夫」
レレーナはベッドに腰掛けながら足をぶらぶらさせていた。小柄だからか床に足はついていない。
「それで、遠くからでも連絡が取れる魔道具……だっけ?」
「都合よくそんな便利な魔道具とかあったりしないか? 急用が出来たからあれば欲しいんだけど……」
俺は向かいに座るレレーナに尋ねる。
淡い期待になるが、彼女なら何か知っていてもおかしくはない。
「ある」
「本当か!?」
「うん。待ってて」
レレーナは迷いのない足取りで部屋の隅へ向かうと、そこに積み重ねられていた鉱石の山を掻き分け始めた。
お宝が多過ぎるあまり物一つを探し出すのも、少しばかり時間がかかるらしい。
というわけで、レレーナが鉱石の山の中を捜索している間、俺は部屋の中を見て暇を潰す事にした。
「あ、オリハルコンの水晶……ここにあるのか」
土の民がミストレード侯爵に強奪されそうになった例のお宝だ。ゴロンガから受け取った後はレレーナに預けていたが、大事に保管してくれているようだ。
元々はゴロンガ達土の民の物だし、一段落したら返還しないといけないな。
そんな事を俺が一人考えていると、レレーナは手には何も持たずにこちらへ戻ってきた。
「魔道具は?」
「ライチに貸してたのを忘れてた。ごめんなさい」
レレーナはしゅんとして俯いていた。俺が無理を言って押しかけてきたんだし、別にそんな落ち込まなくてもいいのだが。
きっとライチは冒険に持参しているので、いつ戻ってくるのか分からない。
ゴロンガとベンにはそのまま伝えて、手紙でやり取りするしかないだろうか。リアルタイムの情報を拾えなくなるのは残念だが仕方ない。
「気にするな」
俺は落ち込んだ様子のレレーナを慰めるために、彼女の頭を軽く撫でた。柔らかな髪は心地よい感触だ。
それから二、三秒、感触を堪能し、その手を離した瞬間の事。
ガチャリと部屋の扉が開かれると、扉の隙間からは狐耳のクールな顔つきの女性がこちらを覗き込んでいた。俺と目があった瞬間に顔がほころび、にっこりと口角を上げている。
彼女の名前はライチ。狐の獣人で元冒険者だ。
「フーくん!」
ライチは俺の名前を呼ぶと、散らかった足元の隙間を縫いながらこちらに駆け寄ってきた。
すぐさま眼前に参上して尻尾をブンブン振っている。
楽しそうで何よりだ。
「ライチ、今日は冒険に行ってないのか?」
ライチはいつものような軽鎧を装備しておらず、身軽なノースリーブとタイトなパンツを着用していた。相変わらず腰には錆びついた剣を携帯しているが、それ以外は普段着だ。
「はい。今日は近くの丘の上でピクニックをしてました!」
「いいなぁ。ワンダ達と四人だけで行ったのか?」
近くの丘というと、我が領の西端にある古の城跡地と呼ばれるキャッスル・ヒルの事だろうか。小高い丘の上には城跡があって、見晴らしも良いのでピクニックには最適である。
「はい。昼食はメアリーさんとリリのお手製だったので、それも大満足でしたっ!」
ライチは色々なジェスチャーを織り交ぜながら言葉を紡いでおり、ピクピク動く耳や揺れ動く尻尾を見ても心の底から楽しんでいた事が容易に分かる。
「ほうほう、俺も行きたかったなぁ。な、レレーナ」
「ちょっと遠そうだし、ライチがおぶってくれるなら行ってもいいかも」
「お安い御用です。あっ、そうだそうだ、これを返すのをすっかり忘れていました。これはレレーナから拝借していた魔道具です。お返ししますね」
ライチは腰元に下げていた袋の中から二枚の石板を取り出してレレーナに渡した。
「レレーナ、これがさっき言っていた魔道具か?」
「うん、さっき私が探してたのはこれ。名前は〝メッセージプレート〟。二枚で一セットになっていて、この石板の片方に書いた文字がもう片方にも表示される遠距離連絡用の魔道具」
レレーナはメッセージプレートを俺の眼前に突きつけ見せてきた。俺が立っている位置はしっかりと把握出来ていないようで、後数ミリでも前に出たら石板と俺の額が衝突してしまう。
時々忘れてしまうが、こういった細かなところで彼女が盲目だという事を思い出させられる。
「随分と便利な魔道具だな」
俺は眼前に突きつけられたメッセージプレートをその手で取った。
石板一つの大きさは約十五センチ四方、厚さは三センチほど。石で作られているので、それなりに重量がある。
「魔力で文字が書ける。でも、別に意識して指先に魔力を集める必要は無い。体内にある微弱な魔力だけで反応する仕組み」
レレーナがもう片方のメッセージプレートに指を走らせると、そこには指先でなぞった通りの軌跡が浮かび上がってきた。
数秒遅れて、俺が持つ方のプレートにも、じんわりと同じ軌跡が浮かんでくる。
「ふむふむ。書いた文字は消せるのか?」
「文字は息を吹きかけると……こんな感じで消える。書いたり消したりすると、相手が持つメッセージプレートに反映するまで時間はかかるけど、これを使えば遠くにいる人と簡単にやり取りが出来る」
レレーナはメッセージプレートに軽く息を吹きかけて文字を消すと、少し得意げな顔で説明してくれた。
「デメリットはあるのか?」
「魔力伝導性が高い特殊な鉱石を使ってるから、これ自体がかなり高価な事くらい。手に入れちゃえば特に気にする事はない」
「レレーナの言葉に補足するなら、少し壊れやすいかもしれませんね。特殊な鉱石で、強度は今ひとつなので、強い力を加えると割れちゃいそうです。力加減が苦手なゴロンガさんなんかに持たせたら、バキッと壊れる事は間違いなしです」
レレーナの説明に付け加えるようにしてライチが詳しく補足してくれた。そのせいでレレーナがムッとして頬を膨らませている。得意分野の解説を奪われたような形になって不服なのだろう。
ライチは年長者らしくレレーナの肩を軽く抱き寄せて背中をさすってあげていた。
こういうムキになるところはレレーナの子供らしい一面だし、相手の顔色を窺って行動に移せるのはライチの大人らしい一面である。
「了解だ。それにしても、父上がまさかこんな便利な魔道具まで持っていたとはな。まだまだたくさんお宝が眠っていそうだしワクワクするな」
俺は部屋の中を見回して彼女に微笑みかけた。
「うん。ここにいるだけで楽しい。でも、お宝以外の物もたくさんあるから、ちょっと大変かも」
歩くだけのスペースはあるが、お宝以外の物も散らばっているので、目の見えない彼女からすれば歩きにくいのは間違いない。
「……困った事があったらなんでも言ってくれ」
その目を治させて欲しいとは彼女自身から頼まれるまで言わないが、やはり大変な思いをしているだろうし、しつこいと思われようと労いの言葉は忘れない。
「ありがとう。ところで、それは何に使うの?」
「えーっと……少し用事があってな」
「遠距離で連絡を取る必要があるって事は、フローラルはどこかに行っちゃうの?」
レレーナは俺の服の裾をギュッと握った。
同時にライチもこちらを見つめてくる。
「俺は行かないから大丈夫だ」
「よかった。フローラルがいなくなると不安だから」
俺の答えを聞いたレレーナは、ほっと一息をついて安心したかのように胸に手を当てる。
「そうなのか?」
「うん」
「……そっか。今日は忙しくなるからあまり話せないが、今度時間がある時にでも街へ出かけるか?」
彼女はどこか寂しさを隠しているようにも見えたので、俺は軽く頭を撫でて問いかけた。
「いいの?」
「当たり前だ。じゃあまた来るから、その時にでも話そうぜ。もちろん、ライチもな」
「はい! ボクもフーくんとお出かけしてみたいです!」
「おう。二人とも、また今度な」
俺はレレーナとライチに別れを告げると自分の部屋へ戻る。
手には二枚のメッセージプレートがある。これを持たせて、ゴロンガとベンにはミストレード領に向かってもらおう。
今日のところは二人にはゆっくり休んでもらって、明日の朝メッセージプレートを渡してそのまま出発してもらうとするか。忙しくて大変だろうが、領地外に行って色々と出来る二人は貴重な情報源となるので頑張ってもらおう。
そして、翌日。
「――というわけで、レレーナから便利な魔道具を借りたから、これを持っていってくれ」
正門の前。俺はゴロンガが引く荷車の上に座るベンに、メッセージプレートを手渡した。
朝が早いからかゴロンガはぼーっとして寝ぼけ眼のままだった。そんなやつに魔道具を渡したら紛失してしまいそうだし、ライチの言葉の通りなら壊しかねないので、当たり前だがシャキッとしているベンに預ける事にした。
「分かりました」
「ふわぁぁぁあ~あぁ……まだまだ眠いけんども、オイラ達はいけ好かない侯爵の領地に向かうだよ~」
「せっかくいつもより多くのポーションを用意してくれたのですから、ゴローはもっと気合を入れてください」
荷車の前に立ってだらしない顔であくびをするゴロンガと、それを窘めるベン。
ゴロンガは凄くリラックスしているように見えるが、臆病な彼の事だ。内心は怖いに違いない。その辺りはベンが上手くカバーしてくれる事だろう。
「まあまあ……それと、今回は試験的に程度の低いポーションを荷車に積んでおいたから、向こうの市場価格に合わせて適当に販売してみてくれ。野菜だけだと腐る可能性があるからな」
「ほーー、初めての販売だべな。不安しかねぇけんども、ちゃんと売れるべか? 今のミストレード領は戦いの前って事で結構ピリついてると思うけんども」
ゴロンガは太い腕を胸の前で組み眉を顰める。
昨日は息巻いていたが、やはり、多少なりとも不安に思う気持ちがあるのだろう。
「比較的安全そうな場所に拠点を構えて、情報を集めながら販売してみてくれ。もちろん、危険な目に遭いそうになったらすぐに逃げるんだぞ」
「ゴローは向こうに住んでいたという事で顔が割れているかもしれませんし、安全を優先するなら街外れの宿を取るのがベストでしょうね」
ベンの提案は尤もだったが、今のゴロンガの姿を見ても、死にかけの村人時代を想起する人なんていないと思う。
でもまあ、念には念を入れておくのも大切か。
危険な目に遭って命を落としたら元も子もない。
「そういう事だ。分かったか、ゴロンガ」
「はいだ! あ、それと、昨日の果物はどれも絶品だったべ! ベンなんか少食のくせに全部平らげていたくらいだよ!」
「それは嬉しい報告だな。じゃあ、最後に幾つかお願いがある。まずは、些細な事でも分かったらすぐにメッセージプレートで情報を共有する事。次に危険があったら真っ先に逃げる事。そして困っている人がいたらなるべく助けてあげる事。分かったか?」
「はい。お任せください」
「りょーかいだべ!」
二人は真剣な顔つきで力強く頷いた。
「それじゃあ、無事を祈っているよ。二人が使えるように最高品質のポーションも載せておいたから有効活用してくれ」
俺が軽く手を振ると、ゴロンガは荷車を引いて歩き出した。
ポーションと野菜、少しばかりの荷物が所狭しと積み込まれた大きな荷車の端にベンが座り、彼はメッセージプレートを大事そうに抱えている。
ゴロンガでは頭が回らなさそうだったので、向こうからの情報の伝達はベンが全て行うように頼んでおいた。
彼の、見た目に反して強気な性格と、持ち前の冷静さを存分に活用させてもらう。
二人の姿が見えなくなった後、俺は次の段階へと思考を巡らす。
「さてと……対策なしに攻め込まれたら、俺達の敗北は必至だな。どうにかして抗う手立てを考えないと……」
セバスチャンから聞いた話によると、ミストレード侯爵はかなりの武闘派らしい。
他の領地に戦争を仕掛ける事もしばしばあるらしく、武力での領地拡大を得意としているようだ。
抱える騎士の数も多く、いつでも自由に千人程動かせるというのだから驚きだ。
そんな軍勢が攻めてきた日には、我が領は耐える事など許されずに即陥落するだろう。
だからこそ、どうにか準備をするしかない。
「部屋で考えるか」
いつまでも正門に突っ立っているわけにもいかない。紅茶でも飲んで冷静になろう。
俺は思考を巡らせながら屋敷へ戻った。
俺は自室に戻り一息ついてから、テーブルの上に地図を広げた。
「ふむ……ミストレード侯爵の領地の中心の街は〝バトルタウン〟と呼ばれているのか。由来は、昔から戦争が頻繁に行われてきたから……って、物騒だな」
まずは相手を知るところから始める。
これまでに調べて把握している事を含め、改めて頭の中で今判明している情報を復習していく。
「攻めてくるルートは、西の丘〝キャッスル・ヒル〟しかありえないな」
侯爵が住むバトルタウンは、この屋敷から見てちょうど西側に位置している。
我が領とミストレード領の境目にあるのがキャッスル・ヒル。周辺と比べやや標高が高く、なだらかな坂道の上には城跡がある。
城跡とは言っても過去の産物であり、時間の経過と共に崩壊し、今では岩の山でしかないが、待ち受けて真正面からやり合うには最適だと言える。
「好都合だ」
俺は依然として地図を眺めながら思考を巡らせる。
戦力差は向こうも把握しているはずなので、おそらく正攻法で攻撃を仕掛けてくるはずだ。
ゴロンガとベンから侵攻の詳細についての情報が手に入れば、こちらで迎え討つ構図を作りあげる事が可能となる。
油断した侯爵に一泡吹かせるにはそれしかない。が、今のところ策もなければ自信もない。
「まあ、坂道を上手く使うしかないか」
俺は右手に持つペンを回しながら、ひたすらに地図を眺める。
立地は問題ない。むしろ有利だと思う。
「……後は攻撃手段と人員だけだが……かなり厳しいな」
乱暴にペンを投げ置いた俺は、肝心な部分が欠落している事に気がつく。
うちの戦力はライチを筆頭とした冒険者組の四人と、セバスチャン、そしてメアリーくらいなものだ。合わせて六人しかいないようでは、千人規模の軍勢に対抗するなど到底出来ない。
個々の力で上回ろうと、これだけの数の差を覆す事は不可能である。
何か妙案はないか……
顎に手を当て思考すると、癖の強い種族の存在を思い出した。
「あぁ! 土の民がいたな!」
えっさほいさと屋敷の裏で野菜を大量生産する彼らの力は絶大だ。
土魔法という特有の魔法は、おそらく農業や建築に対してだけではなく、戦いにも使えるだろう。
キャッスル・ヒルは短い草が生い茂る草原なので、土さえあれば使用可能という土魔法の条件も満たす事が出来る。
彼らを上手く指揮する事が出来れば、かなり戦力として期待出来そうだ。
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