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1巻
1-3
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「じゃあ、私達も奴隷じゃないって事?」
「まあ、そうなるな。奴隷として買ったのは事実だが、この領地に入った時点……いや、この領地にいる間は平等になる」
世間一般では奴隷は物として扱われるので、厳密に言えば彼女らは俺の所有物になるわけだが、逃げてはいけないなどの厳しい制約はないし、主である俺が何かを強制する事もない。
「逃げても何も言わないの?」
「我が家のために働いてほしいとは思うが、一人で生きていけるなら止めはしない。現にリリはもう逃げてるからな。全力ダッシュでいなくなったぞ」
逃げないようにするなら、うちに来た時に鎖をつけているし、自由に屋敷の中を歩かせたりはしない。
この待遇は、危険性がないと判断した事に加えて、今後はダーヴィッツ家のために自主的に働いてもらいたいと俺が望んでいるからこそだ。
「え? さっきの回復魔法の話は本当だったの?」
先ほどの反応が薄かったのは、やはり俺の回復魔法を信じていなかったからこそのようだ。
「おう。嘘なんてついてないぞ」
「……じゃあ、本当にこの目も治せるの?」
「当然。さっきも聞いたはずだが、治すか?」
「……いや、いい」
黒い布で覆い隠された両の目を治そうと提案したが、レレーナは少し間を置いた後に、やっぱり首を横に振った。
本人がそう言うなら強要はしない。
「そうか」
「うん。じゃあ私は食堂に行く」
「もうそんな時間か。気をつけてな」
「またね」
立ち上がったレレーナは、こちらに向かって小さく手を振ると、左手を壁につきながらゆっくりと立ち去った。
右手には大切そうにさっきの水晶を持っている。
宝石や鉱石、その他の価値ある物は見えてるように思えたんだが、普通の景色は見えてないらしい。
どういう理屈か分からないが、不便な事に変わりはない。
「さて、俺も軽く片付けたら、部屋で食事にするか」
ここ数日はセバスチャンにもメアリーにも会っていない。
二人はこれまで他の召使がこなしていた、日常的な業務の全てを請け負っているからだ。
まずは一人でも召使を雇えるようにならなければ、二人の負担を減らす事は出来ない。そのためにも、定期的な収入を期待出来る当てを考えなければならないな。
それまでは食事も、自室に蓄えてある保存食が中心になるだろう。
治した少女が逃亡するのは想定外だったので、そろそろ本格的に動き出さないとまずい。
一先ずは、選別を終えた物品を自室に運び込むとしよう。休憩はその後だ。
「はぁぁぁぁ……疲れた」
部屋に戻った俺は吸い込まれるようにソファに身を委ねると、だらしない体勢で天を仰いだ。
先ほどレレーナと選定を終えた物品を部屋まで運んだ事で、体力はもうゼロに近い。
運んだと言うか、あまりに重すぎたので、非力な俺はここまで時間をかけて引きずったのだが。
疲れたので食事をしようと思ったが、蓄積した疲労が食欲を押しやり、そんな気分ではなかった。
誰かの手料理なら喜んで食べるのだが、セバスチャンもメアリーも忙しいので無理な注文はしたくない。
そんな事を考えながらも、ソファに深く腰かけてボーーッと天井を見ていると、扉をノックされた。
セバスチャンかメアリーだろう。
というか、二人しかありえない。
「入っていいぞ」
許可を出すと扉が開かれたが、疲れているので、そちらに顔を向ける気力もなかった。
たちまち部屋の中に広がるのは、香ばしいチキンと焼きたてのパンの香り。
料理を持ってきたという事はメアリーだろう。
彼女が振る舞ってくれる料理はお気に入りだ。
鼻腔をくすぐる香りを堪能しながらも、俺はため息交じりに言葉をかける。
「別に俺の食事なんて作らなくていいんだぞ? 彼女達の栄養状態を第一に考えてやってくれ。今日、レレーナっていう盲目の少女と話したんだが、やっぱりかなり痩せてるし、もっと食べさせてあげた方が良さそうだったからな。俺なんて後回しでいい」
俺は体勢を変えずに言った。
静かに目を閉じて腹の虫が鳴くのを我慢する。
レレーナは今まで食事と睡眠を満足に取れていなかったのか、健康状態は良くないようだった。
ここで何日か過ごした事で、多少は改善されたようだが、健康体というには程遠い感じがする。
「……」
しかし、そんな俺の言葉に反して、テーブルの上にはトレーが置かれた。
メアリーは俺の側に立っているのか、少しばかり妙な視線を向けてくる。
返答すらしてくれないとは、きっと俺の健康状態も考えてくれているのだろう。
さすがはメアリー。良い召使を持ったものだ。
「分かった分かった。食べるから」
面倒臭い感じを出して言ったが、体は正直だった。
その証拠に、グゥッと腹が鳴る。
俺は体を起こして目を開くと、目の前の食事に視線を移す。
疲労からか視界がぼやけているが、嗅覚は正常だった。
美味そうだ。こんがり焼きたてで、ふっくらしたパンに、野菜入りのスープ、そして輝く大きなチキン。
こんな食事は久しぶりだな。もう我慢出来ない。
「……美味い! 美味いぞ!」
フォークを動かす手が止まらない。
貴族の行儀作法など忘れて、ガツガツむしゃむしゃ、ひたすらに食べ進めていく。
だが、少しだけいつもと違う気がする。
うちの召使が作る料理は、父の意向もあって、もっと濃くてコッテリとした味わいだった気がする。
対して、これは以前に比べて味が薄く、体に優しい味付けに感じる。
まるで噂に聞く一般の民の家庭料理のような味だ。食べた事はないが、普段の味付けとは明らかに違う。
「調味料とか変えたのか?」
パンを齧りながら問う。
「いえ」
「ふーん。そうなのか」
となると、味が薄めなのは弱っているレレーナ達の健康状態を思っての事に違いない。
シェフが変われば味も変わると思ったが、今この屋敷で料理が出来るのはセバスチャンとメアリーくらいなので、それはありえない。
俺としても、濃い味は胃もたれして今の体にはあまり好ましくないので、これくらいがちょうどいい。
今後はこの味で作ってもらおう。
「そういえば、メアリー。彼女達の件なんだが……もう聞いてるよな?」
「……」
メアリーは特に返事をしない。リリが逃げ出したことを聞き、逃げ出されるような対応をしてしまった俺に怒っているのか、はたまた呆れているのか。
どこかいつもと雰囲気が違うため、彼女はすぐ斜め後ろにいるというのに、顔色を窺う事すら憚られる。
「赤毛の子、いただろ? リリっていうらしいんだけど、治した途端に逃げ出しちゃってな。本当は追いかけるべきなんだろうけど、泣いてたからさ。ここに縛り付けておくのも酷かなって思って、何もしなかったんだ。わざわざ買いに行ってもらったのに悪かったな」
もう会う事もないであろう赤毛の少女の姿を思い浮かべながら、俺はメアリーに話す。
今頃、どこかで元気にしているだろうか。料理や散歩が好きと言っていたので、治療した手足で趣味を楽しんでくれてるといいんだが。
それでも、やはり申し訳なさはある。
メアリーとセバスチャン、双方の期待を裏切る結果になってしまった。
「全て俺のせいだ。悪かった」
話しながら、食事を終えた俺は、フォークを置いてからその場で立ち上がった。
すると、鼻を啜り、静かに泣く声が聞こえてきた。
「メアリー、どうした……」
あのメアリーが人前で涙を見せるなんて、何事かと思い、俺はついに振り向いた。
「え? 君は……リリ?」
しかし、そこにいたのはメアリーではなく、赤毛の少女だった。
艶やかな赤髪は綺麗に整えられており、雰囲気もどことなく違うので、パッと見ただけでは理解が追いつかなかった。
「……うぅ、ごべんなざい……」
「は? そ、その格好……いや、そもそもなんでここにいるんだ?」
リリは顔を歪ませて大粒の涙を流していた。
黒と白を基調にしたひらひらのメイド服を着ており、ふんわりとしている袖の部分で涙を拭っていたのか、くしゃっと皺が出来ている。
「……ご主人様は、善意で助けてくれたのに、逃げ出しちゃうなんて、私は最低です……! あの後、すぐに戻ってメアリーさんのところに駆け込みました。それで事情を説明したら、お礼がまだなら恩返しをしなければいけませんって言われて。それで、料理を作ってみたんです……」
涙をこらえながら、ぽつぽつと俺の知らない出来事を口にするリリの表情からは、申し訳なさが溢れていた。
瞳を潤ませながら、上目遣いで俺の事を見上げてくる。
「そういう事か。じゃあ、今はメアリーのところでメイドの修業中って感じか?」
「は、はい……」
もじもじと気恥ずかしそうに返事をするリリ。
その姿を見た俺は、気が抜けてソファにへたり込む。
思わず笑みがこぼれてしまう。同時に、一気に全身の疲れが吹き飛ぶような感じがした。
「良かった。本当に良かった……」
思いが言葉となって溢れ出てきた。
「あ、あの……本当にごめんなさい。罰なら受けますから、どうかこのお屋敷にいさせてください……」
リリは怯えるような口振りで言った。
どうやら、俺が怒っていると勘違いしているらしい。
今まで数多の貴族から受けた仕打ちがトラウマとなり、罰を受けるのが当然とでも思っているようだ。
だが、俺はそんな事はしない。
「……逆だよ。戻ってきてくれてありがとう」
「っ……! 私! 料理も洗濯もまだまだですが、ご主人様のために一生懸命頑張ります!」
顔を上げた俺が軽く笑いかけると、リリは今にも泣きそうな表情で元気に宣言した。
そして、俺の手を両手で包み込んできた。
治療を施す前のやつれた姿とは大違いだ。やはり綺麗な笑顔を見せてくれると、こちらも嬉しくなってしまう。
「これからよろしく頼む。仕事は楽しいか?」
「やっぱり、自分の体を使って仕事が出来るのは楽しいです! 洗濯も料理も、なんだって出来ますからね!」
リリは満面の笑みを浮かべながら、胸の前で拳を握って、ぶんぶんと首を縦に振っている。
キャラ違いすぎない? もっと凶暴性があってツンツンしてたような気がするんだけど……
「そうか……」
「お疲れでしたら、肩でも揉みましょうか?」
本来は献身的な性格なのだろう。俺が息を吐いただけで、すぐさま背後に回って肩に手を添えてきた。
「いや、いい。というより、もっとフランクな態度で接してくれ。今後もメイドとして働くのなら、ラフな方が落ち着くんだよ。真面目なのはセバスチャンとメアリーだけで十分だ」
「……いいの?」
「気を遣う必要はない」
亡くなった父や二人の兄はどうだったか知らないが、俺は堅苦しい主従関係は苦手だ。
セバスチャンとメアリーは、長年染みついた敬語なので仕方ないが、他の者にはフランクな態度で接して欲しい。
本来のダーヴィッツ家はそうあるべきだしな。
「分かった! ご主人様は……本当に優しいのね」
「当たり前だ」
「ふふっ……悪い人じゃなくて良かった」
俺が即答するとリリは小さく笑った。
貯め続けていたポケットマネーをはたいて、辞めていった召使達に給与を支払ったし、残りの金で欠損奴隷を購入し、さらには打算ありきとはいえ治療までした。
これだけ見れば優しい事この上ないが、まだ何も成し遂げてはいないし、優しさだけを誇らしげに自慢は出来ない。
まあ、俺が悪人ではない事は確かである。
「ふぅ……俺はもう寝る。リリも休んでもらって構わない。慣れない環境で働き続けて疲れてるだろ?」
俺は改めてソファに腰を下ろした。満腹だし疲れたし眠くなってきた。
「いいの?」
「当たり前だ。メイドの仕事は大変だろうしな」
「うん……まさか、メイドになるなんて思ってもいなかったから。それにしても、随分と寝るのが早いけど明日は大切な用事でもあるの?」
「まあな。父上の部屋で見つけたお宝を売りに行くんだ。商人に足元を見られたくないから、誰かついてきてくれると助かるんだがな」
セバスチャンもメアリーも、長く貴族家に仕えているとはいえごく普通の一般の民なので、物品の売買に関しては期待出来そうにない。
俺よりは目利き出来るだろうが、高値で売り捌くとなると限界がある。
「レレーナは?」
「連れていく事も考えたんだが、いきなり同行させるのも悪いと思ってな」
今日は成り行きで手を貸してもらったが、やはり頼りすぎてしまうのも良くないと思っていた。
まだ新しい環境に慣れていないように見えたし、一気に距離を詰めるのはどうなのだろうか。
「レレーナは、生まれてすぐに目が見えなくなったらしいんだけど、なぜか価値のある物は鮮明に見えるみたい。例えばお宝とか。それにとても優しいから、きっと手伝ってくれるよ」
リリは顎に手を当てて記憶を探るように言った。奴隷だった者同士、互いの内情は少し理解しているようだ。
「……それなら、明日誘ってみるか。そういえば、レレーナともう一人の娘には、メイドとして働いている事は教えてないのか?」
「まだ言えてないわね。というか、言えないわよ。私だけご主人様に救ってもらったなんて、二人への裏切りみたいじゃない。だから、二人の事も助けてあげて欲しいの。お願い」
リリは悲しそうな表情を浮かべながら懇願してきた。
「そういうもんか? 本人が望むなら、俺はいくらでも手を貸すつもりだが」
レレーナには目の治療を提案したが拒否されている。
本人の意思に反して回復魔法は使用するべきではないのだ。
「そう。お願いね? それじゃあ、おやすみなさい、ご主人様」
「ああ、また明日」
リリはぎこちなく頭を下げると、空になった食器を手にして静かに部屋を後にした。
明日の朝一にでもレレーナに会いに行って話を持ちかけてみよう。
本当はもう一人の獣人の女性にも一度会っておきたいが、それはまた今度だな。
とりあえず、明日に備えて眠るとしよう。
第二章 レレーナのお宝販売会
リリとの再会を果たした次の日。
俺はメアリーの案内のもと、屋敷の地下へと通じる階段を下りていた。
目的はもちろん、レレーナに会うためである。
元々地下は物置として使っていたのだが、どうやら今は、レレーナと獣人の女性の部屋になっているようだ。
ちなみに、リリは働き始めたので、召使用の私室を与えられているらしい。
「眠いなぁ」
「フローラル様、しっかりなさってください。領主がそれでは領民に示しがつきません」
ボーッとしながら歩いていると、前方を歩くメアリーがため息交じりに注意してきた。
「はいはい」
「はいは一回です」
「はぁーい。それにしてもメアリーも人が悪いよな。リリが逃げてなかったんなら、もっと早めに教えてくれれば良かったのに」
「リリに教えないでと言われていたのです。決心がついたら自分の口から謝りたかったみたいですよ? まあ、無事に話が済んだようで何よりです」
そういう事か。だからわざわざ俺の部屋に夕食を運んできたのか。
「ふーん。ところで、セバスチャンはどこにいるんだ? 最近、見かけないけど……」
「彼はお屋敷の裏手にある農地を耕しています。なんでも、昔からのんびりとした生活が夢だったみたいで、他の執事の教育に充てていた時間が使えるようになったので、まとまった時間が出来たと言って喜んでましたよ。全く、ただでさえ人手が足りなくて忙しいというのに……はぁぁぁ……」
メアリーはこめかみを押さえながら、深いため息を吐いた。
だが、セバスチャンとは旧知の間柄という事もあってか、咎める事はしないようだ。
「農地って、あの荒れ地だろ? セバスチャンが一人で耕すなんて無理があるんじゃないか?」
屋敷の裏手にある土地は、農地とは呼べないほど荒れている。
自然が好きだった曾祖父が、好んで作物を育てていたという話を聞いた事があるが、気がつけば誰も手入れする事なく時が過ぎていた。
ごくたまに深夜になると、セバスチャンが足を運んでいるのを見た事があったが、てっきり簡単な手入れをしている程度かと思っていた。
外観上の変化は何もないしな。
そんなところを一人で耕し始めるなんて、セバスチャンは中々の物好きというか、チャレンジャーである。
「ええ。ですから、リリ達の暮らしが落ち着いたら、彼の様子を少し確認してみてください」
「だな。まあ、しばらくは父上のコレクションを売るのに手一杯だし、何か手を打つとしても先になりそうだけどな。メアリーはもっとメイドを増やしたいか?」
「いえ、今のところ二人で十分です。もっと屋敷に住まう人間が増えるようであれば、別ですがね」
「そうか。じゃあ何か困った事があれば言ってくれ」
「ええ」
そんな話をしているうちに地下へと到着した。
広い廊下を歩き続けると、その先には古臭い扉がある。
元々、冒険者を志していた父が“ダンジョンらしさ”をテーマに、あえて陰湿で暗い雰囲気を醸し出すように作ったそうだ。
確かに雰囲気はそれっぽい。
「……」
俺は扉をノックした。
すると、中から静かな足音が聞こえてくる。
そして、扉がゆっくりと開かれる。
「誰?」
レレーナはひょこっと顔を覗かせて尋ねた。
「フローラルだ。レレーナ、朝早くに申し訳ない。今日は時間あるか?」
彼女は目が見えていないので、俺は声で自身の存在を知らせると、まずはレレーナの予定を確認する。
「……うん。どこかに行くの? 私の事を幼女趣味の変態貴族に売りつけに行くとか?」
「馬鹿言うな」
「冗談」
くすくすと小さく笑うレレーナ。
笑えない冗談はやめて欲しい。胸がキュッとしたぞ。
「はぁぁぁ……昨日選別した宝石とか、色々とあるだろ? それを売りに行くから、もし暇なら手伝って欲しいんだ。レレーナの力を貸してもらえるか?」
「うん、いいよ、準備するから待ってて」
「悪いな」
ぱたりと扉が閉められた。
昨日の感じからして、断られるとは思っていなかったが、予想以上にサクサクと話が進んでくれて助かる。
俺は少しばかり距離を詰める事に遠慮していたが、そんな必要はなかったようだ。
「彼女とはどこかで?」
「へそくりまみれの父の書斎で少しな」
「あー……何度かワタシとセバスチャンで注意はしていたのですが、やはりあのお方は変わりませんでしたか」
「あれが他の召使に見つかっていたら、間違いなく後ろから刺されていただろうな」
やれやれと呆れるメアリーに向かって、俺は笑いながら答えた。
あの書斎の中を知っているのは、俺と二人の兄、メアリー、そしてセバスチャンのみだった。
「まあ、そうなるな。奴隷として買ったのは事実だが、この領地に入った時点……いや、この領地にいる間は平等になる」
世間一般では奴隷は物として扱われるので、厳密に言えば彼女らは俺の所有物になるわけだが、逃げてはいけないなどの厳しい制約はないし、主である俺が何かを強制する事もない。
「逃げても何も言わないの?」
「我が家のために働いてほしいとは思うが、一人で生きていけるなら止めはしない。現にリリはもう逃げてるからな。全力ダッシュでいなくなったぞ」
逃げないようにするなら、うちに来た時に鎖をつけているし、自由に屋敷の中を歩かせたりはしない。
この待遇は、危険性がないと判断した事に加えて、今後はダーヴィッツ家のために自主的に働いてもらいたいと俺が望んでいるからこそだ。
「え? さっきの回復魔法の話は本当だったの?」
先ほどの反応が薄かったのは、やはり俺の回復魔法を信じていなかったからこそのようだ。
「おう。嘘なんてついてないぞ」
「……じゃあ、本当にこの目も治せるの?」
「当然。さっきも聞いたはずだが、治すか?」
「……いや、いい」
黒い布で覆い隠された両の目を治そうと提案したが、レレーナは少し間を置いた後に、やっぱり首を横に振った。
本人がそう言うなら強要はしない。
「そうか」
「うん。じゃあ私は食堂に行く」
「もうそんな時間か。気をつけてな」
「またね」
立ち上がったレレーナは、こちらに向かって小さく手を振ると、左手を壁につきながらゆっくりと立ち去った。
右手には大切そうにさっきの水晶を持っている。
宝石や鉱石、その他の価値ある物は見えてるように思えたんだが、普通の景色は見えてないらしい。
どういう理屈か分からないが、不便な事に変わりはない。
「さて、俺も軽く片付けたら、部屋で食事にするか」
ここ数日はセバスチャンにもメアリーにも会っていない。
二人はこれまで他の召使がこなしていた、日常的な業務の全てを請け負っているからだ。
まずは一人でも召使を雇えるようにならなければ、二人の負担を減らす事は出来ない。そのためにも、定期的な収入を期待出来る当てを考えなければならないな。
それまでは食事も、自室に蓄えてある保存食が中心になるだろう。
治した少女が逃亡するのは想定外だったので、そろそろ本格的に動き出さないとまずい。
一先ずは、選別を終えた物品を自室に運び込むとしよう。休憩はその後だ。
「はぁぁぁぁ……疲れた」
部屋に戻った俺は吸い込まれるようにソファに身を委ねると、だらしない体勢で天を仰いだ。
先ほどレレーナと選定を終えた物品を部屋まで運んだ事で、体力はもうゼロに近い。
運んだと言うか、あまりに重すぎたので、非力な俺はここまで時間をかけて引きずったのだが。
疲れたので食事をしようと思ったが、蓄積した疲労が食欲を押しやり、そんな気分ではなかった。
誰かの手料理なら喜んで食べるのだが、セバスチャンもメアリーも忙しいので無理な注文はしたくない。
そんな事を考えながらも、ソファに深く腰かけてボーーッと天井を見ていると、扉をノックされた。
セバスチャンかメアリーだろう。
というか、二人しかありえない。
「入っていいぞ」
許可を出すと扉が開かれたが、疲れているので、そちらに顔を向ける気力もなかった。
たちまち部屋の中に広がるのは、香ばしいチキンと焼きたてのパンの香り。
料理を持ってきたという事はメアリーだろう。
彼女が振る舞ってくれる料理はお気に入りだ。
鼻腔をくすぐる香りを堪能しながらも、俺はため息交じりに言葉をかける。
「別に俺の食事なんて作らなくていいんだぞ? 彼女達の栄養状態を第一に考えてやってくれ。今日、レレーナっていう盲目の少女と話したんだが、やっぱりかなり痩せてるし、もっと食べさせてあげた方が良さそうだったからな。俺なんて後回しでいい」
俺は体勢を変えずに言った。
静かに目を閉じて腹の虫が鳴くのを我慢する。
レレーナは今まで食事と睡眠を満足に取れていなかったのか、健康状態は良くないようだった。
ここで何日か過ごした事で、多少は改善されたようだが、健康体というには程遠い感じがする。
「……」
しかし、そんな俺の言葉に反して、テーブルの上にはトレーが置かれた。
メアリーは俺の側に立っているのか、少しばかり妙な視線を向けてくる。
返答すらしてくれないとは、きっと俺の健康状態も考えてくれているのだろう。
さすがはメアリー。良い召使を持ったものだ。
「分かった分かった。食べるから」
面倒臭い感じを出して言ったが、体は正直だった。
その証拠に、グゥッと腹が鳴る。
俺は体を起こして目を開くと、目の前の食事に視線を移す。
疲労からか視界がぼやけているが、嗅覚は正常だった。
美味そうだ。こんがり焼きたてで、ふっくらしたパンに、野菜入りのスープ、そして輝く大きなチキン。
こんな食事は久しぶりだな。もう我慢出来ない。
「……美味い! 美味いぞ!」
フォークを動かす手が止まらない。
貴族の行儀作法など忘れて、ガツガツむしゃむしゃ、ひたすらに食べ進めていく。
だが、少しだけいつもと違う気がする。
うちの召使が作る料理は、父の意向もあって、もっと濃くてコッテリとした味わいだった気がする。
対して、これは以前に比べて味が薄く、体に優しい味付けに感じる。
まるで噂に聞く一般の民の家庭料理のような味だ。食べた事はないが、普段の味付けとは明らかに違う。
「調味料とか変えたのか?」
パンを齧りながら問う。
「いえ」
「ふーん。そうなのか」
となると、味が薄めなのは弱っているレレーナ達の健康状態を思っての事に違いない。
シェフが変われば味も変わると思ったが、今この屋敷で料理が出来るのはセバスチャンとメアリーくらいなので、それはありえない。
俺としても、濃い味は胃もたれして今の体にはあまり好ましくないので、これくらいがちょうどいい。
今後はこの味で作ってもらおう。
「そういえば、メアリー。彼女達の件なんだが……もう聞いてるよな?」
「……」
メアリーは特に返事をしない。リリが逃げ出したことを聞き、逃げ出されるような対応をしてしまった俺に怒っているのか、はたまた呆れているのか。
どこかいつもと雰囲気が違うため、彼女はすぐ斜め後ろにいるというのに、顔色を窺う事すら憚られる。
「赤毛の子、いただろ? リリっていうらしいんだけど、治した途端に逃げ出しちゃってな。本当は追いかけるべきなんだろうけど、泣いてたからさ。ここに縛り付けておくのも酷かなって思って、何もしなかったんだ。わざわざ買いに行ってもらったのに悪かったな」
もう会う事もないであろう赤毛の少女の姿を思い浮かべながら、俺はメアリーに話す。
今頃、どこかで元気にしているだろうか。料理や散歩が好きと言っていたので、治療した手足で趣味を楽しんでくれてるといいんだが。
それでも、やはり申し訳なさはある。
メアリーとセバスチャン、双方の期待を裏切る結果になってしまった。
「全て俺のせいだ。悪かった」
話しながら、食事を終えた俺は、フォークを置いてからその場で立ち上がった。
すると、鼻を啜り、静かに泣く声が聞こえてきた。
「メアリー、どうした……」
あのメアリーが人前で涙を見せるなんて、何事かと思い、俺はついに振り向いた。
「え? 君は……リリ?」
しかし、そこにいたのはメアリーではなく、赤毛の少女だった。
艶やかな赤髪は綺麗に整えられており、雰囲気もどことなく違うので、パッと見ただけでは理解が追いつかなかった。
「……うぅ、ごべんなざい……」
「は? そ、その格好……いや、そもそもなんでここにいるんだ?」
リリは顔を歪ませて大粒の涙を流していた。
黒と白を基調にしたひらひらのメイド服を着ており、ふんわりとしている袖の部分で涙を拭っていたのか、くしゃっと皺が出来ている。
「……ご主人様は、善意で助けてくれたのに、逃げ出しちゃうなんて、私は最低です……! あの後、すぐに戻ってメアリーさんのところに駆け込みました。それで事情を説明したら、お礼がまだなら恩返しをしなければいけませんって言われて。それで、料理を作ってみたんです……」
涙をこらえながら、ぽつぽつと俺の知らない出来事を口にするリリの表情からは、申し訳なさが溢れていた。
瞳を潤ませながら、上目遣いで俺の事を見上げてくる。
「そういう事か。じゃあ、今はメアリーのところでメイドの修業中って感じか?」
「は、はい……」
もじもじと気恥ずかしそうに返事をするリリ。
その姿を見た俺は、気が抜けてソファにへたり込む。
思わず笑みがこぼれてしまう。同時に、一気に全身の疲れが吹き飛ぶような感じがした。
「良かった。本当に良かった……」
思いが言葉となって溢れ出てきた。
「あ、あの……本当にごめんなさい。罰なら受けますから、どうかこのお屋敷にいさせてください……」
リリは怯えるような口振りで言った。
どうやら、俺が怒っていると勘違いしているらしい。
今まで数多の貴族から受けた仕打ちがトラウマとなり、罰を受けるのが当然とでも思っているようだ。
だが、俺はそんな事はしない。
「……逆だよ。戻ってきてくれてありがとう」
「っ……! 私! 料理も洗濯もまだまだですが、ご主人様のために一生懸命頑張ります!」
顔を上げた俺が軽く笑いかけると、リリは今にも泣きそうな表情で元気に宣言した。
そして、俺の手を両手で包み込んできた。
治療を施す前のやつれた姿とは大違いだ。やはり綺麗な笑顔を見せてくれると、こちらも嬉しくなってしまう。
「これからよろしく頼む。仕事は楽しいか?」
「やっぱり、自分の体を使って仕事が出来るのは楽しいです! 洗濯も料理も、なんだって出来ますからね!」
リリは満面の笑みを浮かべながら、胸の前で拳を握って、ぶんぶんと首を縦に振っている。
キャラ違いすぎない? もっと凶暴性があってツンツンしてたような気がするんだけど……
「そうか……」
「お疲れでしたら、肩でも揉みましょうか?」
本来は献身的な性格なのだろう。俺が息を吐いただけで、すぐさま背後に回って肩に手を添えてきた。
「いや、いい。というより、もっとフランクな態度で接してくれ。今後もメイドとして働くのなら、ラフな方が落ち着くんだよ。真面目なのはセバスチャンとメアリーだけで十分だ」
「……いいの?」
「気を遣う必要はない」
亡くなった父や二人の兄はどうだったか知らないが、俺は堅苦しい主従関係は苦手だ。
セバスチャンとメアリーは、長年染みついた敬語なので仕方ないが、他の者にはフランクな態度で接して欲しい。
本来のダーヴィッツ家はそうあるべきだしな。
「分かった! ご主人様は……本当に優しいのね」
「当たり前だ」
「ふふっ……悪い人じゃなくて良かった」
俺が即答するとリリは小さく笑った。
貯め続けていたポケットマネーをはたいて、辞めていった召使達に給与を支払ったし、残りの金で欠損奴隷を購入し、さらには打算ありきとはいえ治療までした。
これだけ見れば優しい事この上ないが、まだ何も成し遂げてはいないし、優しさだけを誇らしげに自慢は出来ない。
まあ、俺が悪人ではない事は確かである。
「ふぅ……俺はもう寝る。リリも休んでもらって構わない。慣れない環境で働き続けて疲れてるだろ?」
俺は改めてソファに腰を下ろした。満腹だし疲れたし眠くなってきた。
「いいの?」
「当たり前だ。メイドの仕事は大変だろうしな」
「うん……まさか、メイドになるなんて思ってもいなかったから。それにしても、随分と寝るのが早いけど明日は大切な用事でもあるの?」
「まあな。父上の部屋で見つけたお宝を売りに行くんだ。商人に足元を見られたくないから、誰かついてきてくれると助かるんだがな」
セバスチャンもメアリーも、長く貴族家に仕えているとはいえごく普通の一般の民なので、物品の売買に関しては期待出来そうにない。
俺よりは目利き出来るだろうが、高値で売り捌くとなると限界がある。
「レレーナは?」
「連れていく事も考えたんだが、いきなり同行させるのも悪いと思ってな」
今日は成り行きで手を貸してもらったが、やはり頼りすぎてしまうのも良くないと思っていた。
まだ新しい環境に慣れていないように見えたし、一気に距離を詰めるのはどうなのだろうか。
「レレーナは、生まれてすぐに目が見えなくなったらしいんだけど、なぜか価値のある物は鮮明に見えるみたい。例えばお宝とか。それにとても優しいから、きっと手伝ってくれるよ」
リリは顎に手を当てて記憶を探るように言った。奴隷だった者同士、互いの内情は少し理解しているようだ。
「……それなら、明日誘ってみるか。そういえば、レレーナともう一人の娘には、メイドとして働いている事は教えてないのか?」
「まだ言えてないわね。というか、言えないわよ。私だけご主人様に救ってもらったなんて、二人への裏切りみたいじゃない。だから、二人の事も助けてあげて欲しいの。お願い」
リリは悲しそうな表情を浮かべながら懇願してきた。
「そういうもんか? 本人が望むなら、俺はいくらでも手を貸すつもりだが」
レレーナには目の治療を提案したが拒否されている。
本人の意思に反して回復魔法は使用するべきではないのだ。
「そう。お願いね? それじゃあ、おやすみなさい、ご主人様」
「ああ、また明日」
リリはぎこちなく頭を下げると、空になった食器を手にして静かに部屋を後にした。
明日の朝一にでもレレーナに会いに行って話を持ちかけてみよう。
本当はもう一人の獣人の女性にも一度会っておきたいが、それはまた今度だな。
とりあえず、明日に備えて眠るとしよう。
第二章 レレーナのお宝販売会
リリとの再会を果たした次の日。
俺はメアリーの案内のもと、屋敷の地下へと通じる階段を下りていた。
目的はもちろん、レレーナに会うためである。
元々地下は物置として使っていたのだが、どうやら今は、レレーナと獣人の女性の部屋になっているようだ。
ちなみに、リリは働き始めたので、召使用の私室を与えられているらしい。
「眠いなぁ」
「フローラル様、しっかりなさってください。領主がそれでは領民に示しがつきません」
ボーッとしながら歩いていると、前方を歩くメアリーがため息交じりに注意してきた。
「はいはい」
「はいは一回です」
「はぁーい。それにしてもメアリーも人が悪いよな。リリが逃げてなかったんなら、もっと早めに教えてくれれば良かったのに」
「リリに教えないでと言われていたのです。決心がついたら自分の口から謝りたかったみたいですよ? まあ、無事に話が済んだようで何よりです」
そういう事か。だからわざわざ俺の部屋に夕食を運んできたのか。
「ふーん。ところで、セバスチャンはどこにいるんだ? 最近、見かけないけど……」
「彼はお屋敷の裏手にある農地を耕しています。なんでも、昔からのんびりとした生活が夢だったみたいで、他の執事の教育に充てていた時間が使えるようになったので、まとまった時間が出来たと言って喜んでましたよ。全く、ただでさえ人手が足りなくて忙しいというのに……はぁぁぁ……」
メアリーはこめかみを押さえながら、深いため息を吐いた。
だが、セバスチャンとは旧知の間柄という事もあってか、咎める事はしないようだ。
「農地って、あの荒れ地だろ? セバスチャンが一人で耕すなんて無理があるんじゃないか?」
屋敷の裏手にある土地は、農地とは呼べないほど荒れている。
自然が好きだった曾祖父が、好んで作物を育てていたという話を聞いた事があるが、気がつけば誰も手入れする事なく時が過ぎていた。
ごくたまに深夜になると、セバスチャンが足を運んでいるのを見た事があったが、てっきり簡単な手入れをしている程度かと思っていた。
外観上の変化は何もないしな。
そんなところを一人で耕し始めるなんて、セバスチャンは中々の物好きというか、チャレンジャーである。
「ええ。ですから、リリ達の暮らしが落ち着いたら、彼の様子を少し確認してみてください」
「だな。まあ、しばらくは父上のコレクションを売るのに手一杯だし、何か手を打つとしても先になりそうだけどな。メアリーはもっとメイドを増やしたいか?」
「いえ、今のところ二人で十分です。もっと屋敷に住まう人間が増えるようであれば、別ですがね」
「そうか。じゃあ何か困った事があれば言ってくれ」
「ええ」
そんな話をしているうちに地下へと到着した。
広い廊下を歩き続けると、その先には古臭い扉がある。
元々、冒険者を志していた父が“ダンジョンらしさ”をテーマに、あえて陰湿で暗い雰囲気を醸し出すように作ったそうだ。
確かに雰囲気はそれっぽい。
「……」
俺は扉をノックした。
すると、中から静かな足音が聞こえてくる。
そして、扉がゆっくりと開かれる。
「誰?」
レレーナはひょこっと顔を覗かせて尋ねた。
「フローラルだ。レレーナ、朝早くに申し訳ない。今日は時間あるか?」
彼女は目が見えていないので、俺は声で自身の存在を知らせると、まずはレレーナの予定を確認する。
「……うん。どこかに行くの? 私の事を幼女趣味の変態貴族に売りつけに行くとか?」
「馬鹿言うな」
「冗談」
くすくすと小さく笑うレレーナ。
笑えない冗談はやめて欲しい。胸がキュッとしたぞ。
「はぁぁぁ……昨日選別した宝石とか、色々とあるだろ? それを売りに行くから、もし暇なら手伝って欲しいんだ。レレーナの力を貸してもらえるか?」
「うん、いいよ、準備するから待ってて」
「悪いな」
ぱたりと扉が閉められた。
昨日の感じからして、断られるとは思っていなかったが、予想以上にサクサクと話が進んでくれて助かる。
俺は少しばかり距離を詰める事に遠慮していたが、そんな必要はなかったようだ。
「彼女とはどこかで?」
「へそくりまみれの父の書斎で少しな」
「あー……何度かワタシとセバスチャンで注意はしていたのですが、やはりあのお方は変わりませんでしたか」
「あれが他の召使に見つかっていたら、間違いなく後ろから刺されていただろうな」
やれやれと呆れるメアリーに向かって、俺は笑いながら答えた。
あの書斎の中を知っているのは、俺と二人の兄、メアリー、そしてセバスチャンのみだった。
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