崖っぷち貴族家の第三子息は、願わくば不労所得でウハウハしたい! 訳あり奴隷もチート回復魔法で治せば最高の働き手です

チドリ正明@不労所得発売中!!

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1巻

1-2

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「よし。分かった」
「何がよ」
「君には今日からこの屋敷のメイドになってもらう」
「……本気で言ってるの?」
「もちろん」

 俺は間髪かんはつれずに返答した。

「何も出来ずに床を這いつくばる滑稽こっけいな姿を見て笑おうってわけ? はぁ……本当に最低ね。床でも舐めれば満足?」

 表情と声色で分かる。彼女が俺の事を心の底から軽蔑している事が。

「這いつくばったら仕事にならないだろ? それと、床を舐めるのは汚いからやめてくれ。衛生的えいせいてきによろしくないからな」
「……」

 無言でうつむく少女は、下を向いたまま鼻をすすっている。
 このまま話してもずっと同じ問答が続きそうなので、そろそろ治療に取りかかるか。
 俺はソファから立ち上がり、少女の前に向かった。

「包帯を外すぞ」

 念のため言葉にはしたが、俺は少女の許可が下りる前に両腕の包帯をゆっくりと外した。

「っ! や、やめて……うぅぅ……何するのよ! じっくりいたぶるつもりね!」

 少女は疲弊ひへいした体を動かそうと試みるが、勢いは全くない。

「違うから……落ち着け。分かったか? よし、いい子だ」
「……くっ……」

 少し強い口調で言葉をかけると、必死に体を動かして抵抗していた少女は、歯を食いしばりながら俯いた。
 俺は手際良く外した包帯を床に放り投げると、両腕の断面をじっくりと観察した。

「さて、傷口は……っと、こりゃ酷い」

 そして驚愕きょうがくした。
 治療した痕跡がほとんど見当たらないのだ。

「モンスターにでも食いちぎられたのか? 断面がズタボロだ。俺なら泣き叫んでるぞ」

 何もせずとも痛みにもだえる様子からして、痛み止めの薬なんて投与してないだろうし、傷口はまともに縫合ほうごうすらされていないので、普通に過ごしているだけで相当な痛みがあるはずだ。
 断面には血が固まった黒い粒のようなものが散見される。
 これは酷い。

「どうして肘から先を失ったんだ?」
「……事故よ。そのせいで手がなくなって、両足の自由は利かなくなったわ。おかげで働き口がなくて、奴隷として売られる事になって、変態へんたい貴族に買われて、数多あまたの屈辱を味わわされてきたわ。そうやって色んな貴族のところを転々としてきたけど、もうあんな思いはしたくない。あんな好奇の目に晒されるなんてもう嫌よ!」

 少女は酷くゆがんだ顔でそう叫んだ。
 あまりにも残酷な現実に、俺は驚きを隠せない。
 なるほど。両足は事故の影響で完全に麻痺まひしているのか。どうりで力が入っていないように見えたわけだ。
 変態貴族に買われてからの日々は、可哀想としか言いようがない。なんの罪もない、いたいけな少女の悲惨な姿を見て、何が楽しいんだろうな。
 貴族達の考えが俺には理解出来ない。

「……教えてくれてありがとう。手足が元通りになったらここで働いてくれるか?」

 俺は少女に問いかけた。

「……そんなのはどうせ無理だろうけど、元通りになるなら従うわよ。私は奴隷だし、逆らうすべはないから」

 長い無言の後に、少女は投げやりにそう言った。
 口約束も契約の一つである。
 とりあえず、これで双方合意したという事になるので、治療に入ろうか。

「了解だ。じゃあ……治すぞ」

 ズタボロの両腕と完全に麻痺している両足を改めて見た俺は、回復魔法を発動させるために魔力を練り上げた。
 濃密に凝縮された魔力は、やがて濃い緑色になり、ほわほわと宙に浮いて少女の全身を優しく包み込んだ。
 久しぶりの治療だったが、セバスチャン達が不在にしていた間、しっかりと練習した甲斐かいがあったな。
 問題なく発動する事が出来た。

「え?」

 魔力に包み込まれた少女が、頓狂とんきょうな声を上げると同時に、失っていたはずの両腕の断面の部分から、ゆっくりと新しい腕が生えてきた。
 ちょっとだけ気持ち悪い光景だが、再生とはそういうものなのだ。
 それから数分経過した頃には、少女の両腕は完全に再生しており、全身を覆っていた魔力も消えていた。
 俺の回復魔法は特別だ。
 昔、貴族に仕えるという著名ちょめいな魔法使いの回復魔法を何度か目にした事があるが、どれもかすり傷の治療や、良くて骨折を治す程度。大怪我や失った四肢の治療などは到底期待出来ないレベルだった。
 しかし、なぜか俺の回復魔法は老衰以外の全てに効果があり、それに加えて、体力の回復までする事が出来る。
 そのうえ、生まれつき魔力が無尽蔵で、いくらでも回復魔法を使える。
 この回復魔法を使って、裕福な人達を客とする治療院などを開けば、我が家の懐もかなり温かくなりそうではある。だが、その場合は、俺が国中、いや、世界中から注目されてしまうかもしれない。
 そういうのは絶対に避けたいので、治療院を開く気はない。
 それくらい特別な回復魔法なので、今こうして目の前にいる赤髪の少女が驚くのも無理はない。

「……夢……じゃない、わよね……?」

 少女はの感覚を確かめるように、失ったはずの両腕と麻痺していたはずの両足を恐る恐る動かしている。
 目には涙が溜まり、まだ動揺が消えないようだ。


「よし。じゃあメアリーのところに行って、明日から働かせてもらいますって自分の口で伝えてこい!」

 赤黒く変色した血の付いた包帯を床から拾い上げた俺は、未だ困惑する少女に向かって微笑みかけた。
 俺の回復魔法の凄さはセバスチャンやメアリーのみならず、他の召使達の間でも周知の事だったので、よく召使達の怪我や病気を治していた。
 だから、こうして誰かを治療するのは別に苦じゃないわけだ。

「……なに、これ……」

 少女は自分の手足を動かしながら、気味悪く思うような、嬉しいような……そんな曖昧な表情を浮かべていた。

「……夢よね。そうよね、これは夢よ! こんな事ありえるはずがないもの! まさか腕が再生するだなんて……あるはず……ない、もの……」

 少女は静かに泣いていた。
 自身の手足をしきりに動かして感触を確かめ、時折、俺の表情を確かめながら笑みを浮かべており、形容し難い感情なのだと分かった。
 やがて五分ほど経つと、ようやく現実を受け入れて落ち着いたのか、少女はどこか覚束おぼつかない足取りで立ち上がる。
 そしてこちらには目もくれず、部屋から走り去ってしまった。
 まさかまさかの、予想だにしない展開に俺は呆然ぼうぜんと立ち尽くす。
 何も言わずに少女がいなくなった事で、俺は部屋に一人取り残される。

「……逃げられた」

 俺がポツリと呟いた時、部屋にセバスチャンが入ってきた。

「フローラル様。ドタバタと音が聞こえたので参上いたしましたが、一体どうされたのですか彼女、泣いておりましたが?」

 セバスチャンは、いぶかしげな視線を俺に向けてくる。

「ただ体を治しただけなんだが、びっくりされて逃げられた。あっ、別に追わなくていいぞ。本当はメアリーのところで働いて欲しかったけど、あの娘の意思を第一に優先するから」

 奴隷として買ったとはいえ、一人の人間だ。
 逃げる判断をしたならそれで構わない。
 一人の命を救えたのだとプラスに捉えよう。
 まあ、時間と経費を考えればマイナスなのだが……

「かしこまりました。それで、残りの二人についてなのですが……」
「ん? ああ、残りの二人とも話したいから連れてきてくれ。早く治してあげた方がいいだろ?」
「そうなんですが、二人とも警戒しており、全く話を聞いてくれないのです。なので、しばらく時間を置いた方が良いかと思います。治療のためとはいえ、私が少女を無理やり連れてきたせいかと」
「そうか。そういう事なら仕方ないな……ところで、俺の顔って怖いかな?」

 逃げられたのはこの顔のせいか? それとも雰囲気?
 治療をして逃げられた事なんてないので疑問である。

「前領主様とよく似た銀髪は美しいですし、スタイルも良く顔つきも柔和にゅうわですよ。十五歳を迎えて男性らしくもなってきましたね。無愛想に見える事もありますが、怖い部類には入らないかと」
「ならいい。じゃあ、俺は疲れたし、昼寝する」
「ゆっくりお休みくださいませ」

 こうしてセバスチャンがいなくなったので、俺はベッドに飛び込んだ。
 パンツ一丁で布団にくるまり目を閉じる。
 クソ貧乏な貴族とはいえ、ある程度の資産はある。
 俺のポケットマネーは辞めていった召使達に分配したのでほとんど残っていないが、父が所有していた宝石や家具、観賞用のモンスターのドロップアイテムなどを売れば、生活費の足しにはなる。
 先ほどの少女が逃亡したのは少し残念であるが、残りの二人には、今後のダーヴィッツ家のためにしっかりと働いてもらわないとな。
 そのためにも、近いうちに接触せっしょくして好感度アップを図る必要がある。
 数日したら顔を見に行くとしよう。


 名も聞けなかった少女を治してから三日が経過したが、案の定と言うべきか少女は帰ってこなかった。
 三日も帰ってこないとなれば、もうこれまでだろうと判断した俺は、いくらかでも稼ぐために、亡くなった父の書斎しょさいの整理をしていた。
 整理といっても散らかっている部屋を片付けるわけではなく、特に高価そうな物品を選別し、近いうちに売ろうと考えての事だ。
 父は、ただでさえ貧乏なダーヴィッツ家が、クソ貧乏な貴族に成り下がった原因である。
 宝石や希少な鉱石などに目がない人で、それらに金をかけていた。
 所謂いわゆるコレクターというやつである。
 我がダーヴィッツ家に余裕がなくなった後も、己の欲を優先してそれらを収集し、召使達への給与を何ヶ月も払わずにいた。
 そんな父が亡くなり、二人の兄は婿養子になり出ていってしまって、俺がダーヴィッツ家の最後の当主になるのではないかとすら思えてくる。

「おっ、これは売れそうだな」

 そんな事をダラダラと考えながら書斎にこもり、宝石類の入った箱の中をあさっていると、高そうな宝石を発見した。
 白くキラキラきらめいており、透き通るような美しさは、そんじょそこらの石ころとは違って見える。

綺麗きれいだ」

 窓から差し込む太陽に透かして見ると、その美しさがより際立つ。これは高い。間違いなく高い。俺の勘がそう言っている。
 売っぱらって金にしよう。
 そう思い、悪い笑みを浮かべていると、背後から人の気配を感じた。

「……それは贋作がんさく。ありふれた偽物」

 振り向くと、そこにいたのは両目を覆い隠す黒い布をつけた少女だった。
 彼女は扉に隠れるようにしてこちらの様子をうかがっている。
 改めて見ると、先日走り去った赤毛の少女よりも年が下なのは間違いない。
 十歳かそこらだろうか。雰囲気は大人びているが、背丈せたけが低く、幼さが隠しきれていない。
 ダボダボのチャコール色のローブを着ているのも、幼く見える要因の一つだろう。背伸びをしている子供そのものだ。

「これが贋作だと分かるのか?」

 俺の問いに首肯しゅこうする少女。
 空色の髪の毛が僅かに揺れる。

「見えていないのにどうして分かる?」
「教えない」
「……君の名前は?」

 赤毛の少女とは違い、表情はかなりとぼしい。

「リリをどこにやったの? もう殺したの?」

 俺の質問に答える事なく、逆に質問をぶつけてきた。殺したとか物騒ぶっそうな事言うな。

「リリって誰だ?」
「リリはリリ。赤毛のリリ。名前すら覚えていないなんて酷い」
「あー、リリっていうのか。彼女ならもういないぞ」

 赤毛と聞いて、リリというのがあの逃げた少女の名前だと分かったが、メアリーにも今度会った時に伝えておかないとな。
 苦労かけたのに申し訳ない、と。

「……やっぱり、貴方あなたも非道。清くて白く
「俺は悪くない。十分歩み寄ったつもりだし、こうなったのは彼女自身の判断だ」

 箱を漁るのを再開して答える。
 話も聞いたし治療もした。こちらに打算があり、上手く利用する事を考えていたのは確かだが、それでも逃げられてしまったのならそれまでだ。

「そう……」
「おっ、これはどうだ?」

 一言返事をした少女に、俺は新たに見つけた直径十センチくらいの水晶を見せた。
 神秘的な青色をしており、うっすらと魔力を感じる。
 これは期待出来そうだ。

「それは……!」
「もしかして、凄いやつか?」

 ハッとした声で驚いていたので、俺の鼓動もねた。

「ううん、それはドラゴンの体内で作られる小さい水晶。排泄物はいせつぶつと一緒に出されるけど、内部に魔力が閉じ込められている。観賞用としては大人気。でも、そのサイズはそんなに高値で取引されてない」
「そうか……残念だな。綺麗なんだけどなぁ」

 観賞用として人気があるのがよく分かるほど、見ているだけで心が洗われる。
 深い青色が印象的で、他にはない色と言える。
 排泄物と一緒に出されるという点が気になるが、変な臭いもしないし見た目も美しいので問題はないだろう。

「……ジーーーーーーー」

 水晶を眺めていると、ジーーーーッと強い気配を感じた……というか声が聞こえてきた。
 少女は目が見えていないはずなのに、顔をこちらに向け何かを訴えかけてきた。

「なんだ、欲しいのか?」
「……別に」

 少女はぷいっと視線を逸らすと、ぶっきらぼうに答えた。
 嘘をついているのが丸分かりである。手をモジモジ動かしているし、話し方は子供らしくなくても、やはり素直さは年相応だ。

「やるよ」
「いいの? 代価は? 体? 十歳だけど大丈夫? それとも殺す? 虐める? それならいらない」
「体なんて求めてないし、殺さないし、虐めないから受け取ってくれ。欲しいんだろ?」

 あらぬ誤解をしてくれているようだが、俺にはそんな嗜虐的しぎゃくてき趣味はないので、早いうちに否定しておく。

「……うん」

 こくりと小さく頷いた少女は、警戒した猫のようにゆっくりと近づいてくるが、足元の分厚い本に足を取られると、そのまま前方に倒れる。

「キャッ!」
「――っと……大丈夫か?」

 間一髪のところで反応した俺は、両手で少女の体を受け止めた。
 危なかった。この痩せて骨ばった体で倒れたりすれば、簡単に怪我をしてしまう。
 というか、水晶の色とか大きさは分かるのに、足元は見えてなかったのか?

「はぁ……へ、平気」

 体勢を直した少女は、胸に手を当てて息を落ち着かせてから返事をすると、俺の右手から水晶を受け取った。
 そしてすぐさま両手で大切そうに握りしめると、それはもう嬉しそうな笑みをこぼした。
 最初に見た時とは大違いだ。あれから四日経っているので、環境の変化に少しは慣れてきたのかもしれない。
 怯えている様子は抜けきっていないが、これは良い兆候ちょうこうだと言える。

「……俺は作業に戻る」

 彼女の感情の起伏きふくに面白さを感じながらも、俺は再び選別作業に取りかかった。

「いつまでそこにいるんだ?」

 再び手を動かし始めても、少女はその場にとどまり続けていた。

「いちゃダメ?」
「ダメじゃないが、俺の事が怖いんじゃないのか?」
「大丈夫。多分、貴方は悪い人じゃないから」
「単純だな。じゃあ俺が漁るから君が価値あるものを選定してくれ。こういうのを見定めるのは得意なんだろ?」
「分かった。それと、じゃなくて、レレーナ」
「何が?」
「私の名前」
「……! 俺はフローラルだ。よろしくな、レレーナ」
「うん」

 俺は挨拶あいさつをして手を差し出したが、レレーナは両手に抱える水晶を眺めるだけで手を握り返す事はしなかった。
 その態度で、彼女は目が全く見えていないという事実を改めて認識する。

「……その目、治してやろうか?」
「大丈夫。まだ、いい」
「そうか。治して欲しくなったらいつでも言ってくれ」
「うん」

 レレーナはなんの気なしに返答していたが、やはり目が見えないのは不便極まりないだろう。
 無理強いはしないが、今すぐにでも治してやりたいのが本音である。

「作業、手伝ってもらえるか?」
「分かった」

 レレーナと俺はそれから数時間、選別作業を続けた。
 それにしても、どうして目が見えていないのに、物の価値を鑑定出来るのだろうか?
 選別において嘘をついてるようには思えなかったし、レレーナの知識の豊富さは一流の鑑定士をもしのぐほどだろう。
 そんな彼女とは、その口で過去を教えてくれるまで、仲良くいられるとありがたい。
 あまり感情を表に出さない性格ではあったが、リリの時と比べるとかなり好感触だと思うしな。
 今後のダーヴィッツ家の力になってくれる重要な存在である事は間違いないだろう。


 レレーナと共に選別作業をしていると、空が赤く染まり始めた。

「ふぃーーーーーー……終わったーーー!!」

 一日をついやして書斎の整理という名の選別にいそしんだ俺は、床の上に力なく大の字に倒れた。
 父がコレクターなのは知っていたが、これほどの量を収集しているとは思わなかった。驚いたし、単純に凄い。
 給料が支払われていなかった召使達にバレていたら恨みを買ってしまいそうだが、故人相手に今更責めたりはしないだろう。多分。

「疲れた」
「レレーナ、手伝ってくれてありがとう。これでダーヴィッツ家の懐は温かくなりそうだ」

 彼女は一切表情を変えずに呟いていたが、きっと表情に出ていないだけなので、ねぎらいの言葉をかけておく。

「いい。私も楽しかったから。それに昔を思い出した」
「昔?」
「リリを殺したフローラルには教えてあげない」
「殺してねぇよ」
「……本当?」

 レレーナは疑いを孕んだ声色で聞いてきた。

「本当だ。嘘はつかない」

 何度言っても信じてもらえそうにない。

「ふーん。じゃあリリはどこ?」
「分からないが、今頃スモーラータウンのどこかで働いてるんじゃないか? 料理が得意って言ってたし、食堂とか行けば会えるかもな。ああ、散歩も好きって言ってたから、もう別の領地に行っちゃったかもな」

 きっとどこかで幸せに暮らしている事だろう。
 再生した両腕と力を取り戻した両足を使って元気に生きてくれ。

「え、料理に散歩ってどういう事? リリは手はないし、足も使えないはずなのに」

 レレーナが当然の疑問にたどり着く。

「さっきレレーナにも目を治すか聞いただろ? 俺ならそういう傷すらも治せるんだよ」
「へぇ……? ところで、スモーラータウンって何?」
「ダーヴィッツ家の領地で、小さな街なんだが、中々いいところだぞ。小さいわりに栄えてるから幸福度は高いはずだ。それに、他の国や領地と違って、奴隷制度もスラムもないから誰でも大歓迎だ」

 この屋敷から一キロほど北西に進むとスモーラータウンがある。
 自分で言うのもなんだが、住みやすいところだと思う。

「スラム、ないんだ。不思議」
「ああ。うちは変な階級とか身分制度は設けてなくて、平等がモットーだ。だからダーヴィッツ家も貴族であり、領主だが、あくまでそういう役職として存在しているだけだ」

 男爵やら公爵やら伯爵やら……全てが面倒だと思ったうちの先祖が、自分達に対してフランクに接しても問題ないと領民に明言したらしい。
 文献によれば、階級は男爵に当たるらしいので、兄達は一つ上の階級となる子爵家に婿入りしたわけだ。
 つまり、対外的にはダーヴィッツ男爵となるので、内外で振る舞いを変えなくてはいけない面倒くさい階級制度である。


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