いきなりですが魔王城で働くことになったので、魔族っ娘たちと一緒にスローライフを満喫します!

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第四章

【サキュバス】レイミー・カレスティナはご奉仕したい 4

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「……俺が何とかしますよ」

 しばしの沈黙を置いた末に、俺は口を開く。
 困った時はお互い様だ。
 それに、これも管理人の仕事のうちだろうし、何よりも俺には考えがあった。

「へー、できるの?」

「はい。ただ、その前にまずは貴女方の事を綺麗にしてあげたいです」

「わたしたちが綺麗になっても、ご奉仕できないんじゃどうしようもないわよ」

「……最低限清潔になってもらわないとご奉仕なんて無理ですよ。まずはスタートラインに立たないとですから」

「んー? よくわからないわね。わたしとしては真っ先にご奉仕したいんだけど?」

 その口振りからして、彼女はご奉仕ができなくなっている大元の原因を理解していないようだった。

「それは次の機会に持ち越しです」

 そもそも活力が無くなると、自己管理能力が最底辺レベルになるということは、今のように自分の身を綺麗に保つことさえできなくなるということだ。

 俺としてはそんな相手と真正面から会話をしたいとは思えない。
 だって、酷い臭いだし、声色も元気がないから話すだけでちょっと疲れてしまう。

 だから、ご奉仕によって活力を取り戻させてあげるよりも先に、まずはその身を綺麗にしてあげたいのだ。

「ふーん……じゃあ、早速お願いできる?」

 サキュバスの女性は頭から被っていた黒い布を脱ぎ去った。
 その容姿は……髪はボサボサで、肌は黒カビが生えているかのように汚れていて、服は布切れを身に纏っていた。
 山籠りを続ける仙人のような見た目だ。

 瞳に色はなく、どんよりとした空気を纏っている。

「お任せください。ただ、その前に貴女のお名前を聞いても?」

「レイミー・カレスティナよ。レイでいいわ」

「レイさんですね……本当は温かいお湯を浴びて石鹸できれいにしてほしいところでしたが、今回は生活魔法で代用しますね」

 俺は両の手のひらを空っぽの浴槽に向けると、何千、何万回と唱えてきた生活魔法を発動させた。

 その瞬間、レイさんの全身が微かな光を放ち始める。
 光は徐々に強くなり、体全体を包み込むように広がっていく。
 やがて、彼女は自身の体に及んだ奇妙な違和感に気づき始めると、のそのそと体を起こしていく。

「おー……六割程度しか汚れは落とせないはずだけど、元が凄いとこんなにはっきり効果がわかるんだなぁ」

 細かな顔つきまでは見て取れないが、髪はあっという間に艶やかになり、肌の汚れは魔力によって落とされていくのがわかる。

 生活魔法と言っても、服のしわを取ったり、髪の乾燥を防いだり、今回のように全身の汚れを綺麗にしたりと多種多様だが、あまりにも汚い対象に用いると効果は絶大だった。
 基本的には、俺基準で満足行く状態を十とするならば、生活魔法は六割程度の効果を発揮する。
 便利と言えばかなり便利だが、やはり六割程度しか効果が出ないのでもどかしさも残る。

 ただ、今回ばかりは、対象があまりにも不潔だったので、効果が如実に表れている。

「……うん、臭いも取れたし、これなら大丈夫ですね」

 俺は鼻を鳴らした。
 先ほどまでの汗や油特有の悪臭はかなり薄れていた。

「ちょっとだけ活力が出てきた気がするわね……気のせい?」

 レイさんは疑問を口にする。
 女性らしさを感じさせる声色に変容していた。
 十年以上前に行われた勇者侵攻のせいで魔族は魔王城を空け、戦闘ができないサキュバスはここに取り残されたのだろう。
 結果、ご奉仕ができないまま時が経ち、自然と自己管理能力を失ったわけだ。

 近いうちにそれも解消されることを願う。

「気のせいじゃなくて、体が綺麗になって気分が上がってるはずですよ。これならご奉仕できると思います」

「え、ほんと?」

「はい。ですが、その前に腹ごしらえをして身なりを整えましょう。二階の食堂に向かうのでついてきてください」

 俺は踵を返した。
   
「わかったわ……至れり尽くせりで困っちゃうわね。わたしたちはいつもご奉仕する側だったから、こうしてご奉仕されちゃうのは初めてかも。いい男ね」

「……」

 背後から鋭い視線を感じる。舌なめずりも聞こえてくる。
 ちょっと怖いけど我慢だ。きっとご奉仕できない期間がなさすぎて欲に飢えているのだろう。明日には復活できることを願う。

「ねぇねぇ、ソロモンくん」

 シャワールームを抜けて、隣にやってきたレイさんが尋ねてきた。

「なんですか?」

 明るい場所でよく見ると、やっぱり容姿が整っている。
 ピンク色の髪は伸びきっているものの艶感があるし、顔つきは目鼻立ちがはっきりしていて端正だ。
 ツリ目で気が強そうにも見えるが、話していて高圧気な感じはしないので問題ない。

「わたしたちをどこに連れて行く気?」

「食堂ですよ」

「えー、わたしたちって食事を必要としない種族なんだけど?」

「まあまあ、ついてきてください。皆で食事をすると楽しいですから」

 何やら疑わしい問いを投げかけられたが、俺は適当にはぐらかした。
 食事を必要とせずとも味覚や嗅覚はあるはずだ。目鼻はついているし、耳だってある。

 ご奉仕による活力補給だけでなく、食事を楽しむことを覚えてもらえれば、あんな状態にならずに済むと思う。

 手始めに食堂で食事を楽しむとしよう。
 



 


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