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帰還
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「——ニール! 待たんかっ! 儀式を済ませなければニホンへの帰還は認めんぞ!」
ふてぶてしい顔をした丸々と太った国王が無数の兵士を背に、俺のことを追いかけてくる。
「うっせぇ! あんたらに無理矢理召喚されたせいで、俺は何度も死にかけてんだ! 最後くらい足掻かせてもらうぜ!」
俺は首につけられていた服従の首輪を外し、国王のこと挑発した。
異世界に召喚されて早五年。遂に魔王を討伐した俺は、やっとこのクソみたいな現実におさらばできるのだ。
日本へと続く異空間までもうすぐだ。もう俺のことを止められるものは、この世界には誰もいない。
「くっ! 追え! やつを逃すな! ニールよ! 貴様はニホンに戻ったところで居場所などないぞ! 今なら許してやる! 儀式を受けろ!」
「あんな儀式受けてたまるかよ! どうせ俺は用済みになったんだ! 儀式だかなんか知らねぇけど、俺の【力】を奪った後に、殺すんだろ! 見え見えなんだよ!」
魔王を討伐した俺がすぐに帰還しようとすると、国王は必死になってそれを止め始めたので、俺がイライラしながらも話を聞くと、国王は『異世界で培った【力】の全てを置いていくなら帰還しても良い』という条件を出してきたのだ。
俺は即断り、王宮を飛び出して、国の郊外にある洞穴に向かった。
そして走ること数分。ようやく、俺は異空間らしき闇を纏う穴に到着した。
「はぁはぁ……ま、待て! ワシらへの恩を忘れたか! この恩知らずが……っ!」
洞穴の最奥にある異空間の前で俺が立ち止まると、無数の兵士を率いた国王は息を荒げながら怒号をあげた。
「恩なんて最初からねぇよ……というか、ここには俺しか通れないみたいだし、あんたらともここでお別れだなぁ。いやー、残念だ!」
俺はそれを難なく受け流し、全く相手にはしない。
今俺が見えているのは目の前の異空間だけだ。
日本へと帰還する唯一の方法であり救いだ。
「いけ! 貴様ら! やつをひっ捕らえろ! 金はいくらでも出す! いいから捕まえろッ!」
国王はやけくそになったのか、背後で武器を構える無数の兵士に、荒く、雑な指示を飛ばした。
だが、残念だったな、国王よ。俺はもう、お前の命令に従う義理はないんだ。
俺はゆっくりと異空間に入っていった。
「またな。クソみたいな五年間をありがとよ——」
「——ぐぅっ! きさ——」
俺がわかりやすい皮肉を孕んだ言葉を言うと、国王は悔しそうに顔を歪めていた。
最後に何か言いたそうにしていたが、それを聞く義理は俺にはない。
俺はすぐに異空間の奥に飛び込んだ。
その瞬間にフッと世界が闇に覆われ、俺は眠るように意識を奪われたのだった。
ふてぶてしい顔をした丸々と太った国王が無数の兵士を背に、俺のことを追いかけてくる。
「うっせぇ! あんたらに無理矢理召喚されたせいで、俺は何度も死にかけてんだ! 最後くらい足掻かせてもらうぜ!」
俺は首につけられていた服従の首輪を外し、国王のこと挑発した。
異世界に召喚されて早五年。遂に魔王を討伐した俺は、やっとこのクソみたいな現実におさらばできるのだ。
日本へと続く異空間までもうすぐだ。もう俺のことを止められるものは、この世界には誰もいない。
「くっ! 追え! やつを逃すな! ニールよ! 貴様はニホンに戻ったところで居場所などないぞ! 今なら許してやる! 儀式を受けろ!」
「あんな儀式受けてたまるかよ! どうせ俺は用済みになったんだ! 儀式だかなんか知らねぇけど、俺の【力】を奪った後に、殺すんだろ! 見え見えなんだよ!」
魔王を討伐した俺がすぐに帰還しようとすると、国王は必死になってそれを止め始めたので、俺がイライラしながらも話を聞くと、国王は『異世界で培った【力】の全てを置いていくなら帰還しても良い』という条件を出してきたのだ。
俺は即断り、王宮を飛び出して、国の郊外にある洞穴に向かった。
そして走ること数分。ようやく、俺は異空間らしき闇を纏う穴に到着した。
「はぁはぁ……ま、待て! ワシらへの恩を忘れたか! この恩知らずが……っ!」
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「恩なんて最初からねぇよ……というか、ここには俺しか通れないみたいだし、あんたらともここでお別れだなぁ。いやー、残念だ!」
俺はそれを難なく受け流し、全く相手にはしない。
今俺が見えているのは目の前の異空間だけだ。
日本へと帰還する唯一の方法であり救いだ。
「いけ! 貴様ら! やつをひっ捕らえろ! 金はいくらでも出す! いいから捕まえろッ!」
国王はやけくそになったのか、背後で武器を構える無数の兵士に、荒く、雑な指示を飛ばした。
だが、残念だったな、国王よ。俺はもう、お前の命令に従う義理はないんだ。
俺はゆっくりと異空間に入っていった。
「またな。クソみたいな五年間をありがとよ——」
「——ぐぅっ! きさ——」
俺がわかりやすい皮肉を孕んだ言葉を言うと、国王は悔しそうに顔を歪めていた。
最後に何か言いたそうにしていたが、それを聞く義理は俺にはない。
俺はすぐに異空間の奥に飛び込んだ。
その瞬間にフッと世界が闇に覆われ、俺は眠るように意識を奪われたのだった。
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