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5:年下カレシの躾け方(※)
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濱口は処理の終わった契約書をファイルにとじると、ばたんっと机に突っ伏した。月末にはそこかしこで見られる現象なので、同僚達も気にしていない。いや、気にしている暇などないのだ。
(あーもう限界! 礼人さんに全然会えないしさあ……顔も見てない……)
抱き締めたいキスしたいセックスしたい抱き合いたい、もう右手が恋人なんて嫌……! と、たまりまくってる欲望に忠実な自分を少し自己嫌悪をして泣きそうなのを抑えた。今朝もひどい夢を見た。この前、職場で迫ったのを怒られてできなかった未遂が実現するような。応接室のソファーの上どころか、デスクの上で彼をぐちゃぐちゃにしてしまうような……ひどく現実とはかけ離れた妄想だった。
(夢の中でぐちゃぐちゃにしちゃった……ごめんなさい、奥村室長……っ)
うわああ、と顔を覆いそうになるひどい妄想だが、濱口の前にはあともう一つ仕事が残されていた。気合をいれて、今日は家でゆっくり寝るぞ! と書類に向かい合い、いつもよりも速いスピードでそれを処理していく。まあ、それも早く帰宅してせめて妄想で楽しもうということからきている気合だとは本人も気付いていないのだが。
二時間ほど残業した後、濱口はようやく月末処理が終わって、あーもう帰ろう! と、大きな伸びをしていた。すると、目の前の先輩が、あ!! と背筋を伸ばす。足音がしてフロアの入り口を見てみると、つかつかつか、と奥村が歩いてくる。久しぶりにこのフロアで見る奥村の姿に、部署の皆がざわついた。
「わ、奥村室長、お久しぶりですっ!!」
「ああ、うん。月末処理は進んでいるか?」
「ええ、まあ……」
「だるい返事してんじゃねえぞ。〆時間までに内務にちゃんと回せよ。迷惑だろうが」
「……頑張ります」
そんな会話をしている奥村。濱口が久しぶりに……二週間ぶりに見れた彼に見蕩れていると、その彼が目の前にきて焦って立ち上がった。奥村は少し黙ると、驚きからか何故か真っ赤になっている濱口を見て、腕をがしっと掴む。
「悪い、濱口をちょっと借りて行く」
「へっ?」
「ああ、はい。濱口、今月分全部提出終わった?」
「あ、それ、あがってます!」
「わかった。じゃあ、大丈夫です。どうぞ」
「え、ええ!?」
濱口は状況もわからないまま奥村に引っ張られて行く。エレベーターに乗り込んだが、それからも会話はない。あの、と話しかけても奥村はこたえてくれなかった。上昇して行く階に、どこに行くんだろうと思う。奥村が押したのは会議室の集まっている階だったのだが……
エレベーターを降り、奥村は濱口がついてきているかも気にせずにフロアの奥の会議室をあけた。十五人用くらいの広さのそこに通されると、奥村がドアをしめた濱口の体を退け、かちゃり、と鍵をしめる。
「奥村、しつ……っ」
ちょう、という文字は唇に飲み込まれた。濱口は奥村にキスされたことに気付き、呆然としたまま体を硬直させた。奥村はぎゅうっと濱口に抱きついてその首から胸に顔をうずめてじっとしている。濱口は、はっと強ばりを解き、そっと奥村の背中に手をまわして優しく抱き締め返した。
ゆっくりと鼓動が大きくなるのを感じていると、しばらくして、奥村が大きな溜息をついた。
「はあ……」
「……っ」
「悪い」
限界だった、そう言って赤い顔で濱口を見上げ、恥ずかしそうに笑う彼を見て、濱口は、うわあああ! と叫びそうになるのをおさえ、真っ赤になってしまう。ぎゅうっと抱き締め返すと、奥村もぎゅうっと濱口を確かめるように力をいれる。
視線があって、またゆっくりと唇をあわせる。夢じゃないよな、朝見た夢の続きを仕事場でみてたらどうしよう、なんてずれたことを思いながら、濱口は奥村の細い腰に手をまわしていく。奥村の掌も濱口の腰のあたりを撫で。背中をさすってくる手にびくりと感じた。
久しぶりに味わう、煙草の味のついた舌を舐め、あんまり音がたたないように、こっそりとキスを繰り返す。やばい、まじでやばい、なんて頭の中で理性が少しの警鐘をならすけれど、奥村が最後に、ちゅっと小さな音を立てて唇を離し、にっこりと笑う。それにも煽られて、濱口は奥村の体を抱きしめると、ミーティングテーブルに彼を座らせてぎゅうっと抱き締め、あやとさん……っとしぼりだすような声で名前を呼び、体を弄った。何度かのキスをまた二人でして、濱口をおさえようと奥村が笑いながら、もうだめ、と言って体を離す。
「こら、仕事戻……あ……」
「……あ……」
座っていた太腿に濱口の股間が触れ、反応しているそれに二人同時に気付いて閉口した。
「す、みませ……」
「バカ……どーすんだ」
「おさまるのちょっとまって、トイレで……」
顔が熱い。こんな……キスだけでかたくしてしまうなんて子供みたいだ、と濱口は真っ赤になって俯いた。
はあ……と溜息をついた奥村だったが、少し意地悪い顔で、いいよ、と独り言のように呟いて笑う。
「……っしょーがねーなー……もう……」
「えっ……」
「……十五分しかねえから集中しろ」
「ええっ!?」
短くねえ!? と言いたい文句を我慢して、何を、と思っていると、奥村が立ち上がり、逆に濱口をテーブルの上に座らせた。抵抗する間もなく、かちゃかちゃとベルトを外され、ずるんっとスーツのパンツをおろされる。すぐに下着までむかれて、ひんやりとした空気でぞくりとした。
「ちょっと濡れてるし」
「いや、だって、あ、あや、奥村さんがあんなこと言うから……! 一気に興奮して……っ」
「オレの、触るなよ?」
「ええっ!?」
「オレ、まだみなきゃいけない仕事があんだよ。マルコにメールで送ってやりなおしさせなきゃなんねーし。他にも色々」
「うう、うううううーーっ、生殺しですか!?」
「だな」
絶対さわるな、と言った奥村は何かを思いついたように、ああ、そうだ……! と意地悪い顔で笑い、濱口のネクタイをしゅるりとほどいた。
「えっ……?」
「言うこときかなさそうだから」
「えーっ! そりゃないっすよ!礼人さん……オレも礼人さん触りたい!」
「うるさい」
かたくしてるくせにつっこまれたら困る、と奥村は身も蓋もないことを言うと、濱口の手首をネクタイできつく縛り、そして、彼の性器を弄り始めた。くちゅくちゅ……っという音が小さくきこえるのだが、本当に近くにきこえてないかな……と不安になる。この時間の会議室なんてさすがにあいてるだろうけれど……ときっちりと区切られ、一応防音もしっかりしている会議室の設備をきょろきょろ見てしまう。
濱口は処理の終わった契約書をファイルにとじると、ばたんっと机に突っ伏した。月末にはそこかしこで見られる現象なので、同僚達も気にしていない。いや、気にしている暇などないのだ。
(あーもう限界! 礼人さんに全然会えないしさあ……顔も見てない……)
抱き締めたいキスしたいセックスしたい抱き合いたい、もう右手が恋人なんて嫌……! と、たまりまくってる欲望に忠実な自分を少し自己嫌悪をして泣きそうなのを抑えた。今朝もひどい夢を見た。この前、職場で迫ったのを怒られてできなかった未遂が実現するような。応接室のソファーの上どころか、デスクの上で彼をぐちゃぐちゃにしてしまうような……ひどく現実とはかけ離れた妄想だった。
(夢の中でぐちゃぐちゃにしちゃった……ごめんなさい、奥村室長……っ)
うわああ、と顔を覆いそうになるひどい妄想だが、濱口の前にはあともう一つ仕事が残されていた。気合をいれて、今日は家でゆっくり寝るぞ! と書類に向かい合い、いつもよりも速いスピードでそれを処理していく。まあ、それも早く帰宅してせめて妄想で楽しもうということからきている気合だとは本人も気付いていないのだが。
二時間ほど残業した後、濱口はようやく月末処理が終わって、あーもう帰ろう! と、大きな伸びをしていた。すると、目の前の先輩が、あ!! と背筋を伸ばす。足音がしてフロアの入り口を見てみると、つかつかつか、と奥村が歩いてくる。久しぶりにこのフロアで見る奥村の姿に、部署の皆がざわついた。
「わ、奥村室長、お久しぶりですっ!!」
「ああ、うん。月末処理は進んでいるか?」
「ええ、まあ……」
「だるい返事してんじゃねえぞ。〆時間までに内務にちゃんと回せよ。迷惑だろうが」
「……頑張ります」
そんな会話をしている奥村。濱口が久しぶりに……二週間ぶりに見れた彼に見蕩れていると、その彼が目の前にきて焦って立ち上がった。奥村は少し黙ると、驚きからか何故か真っ赤になっている濱口を見て、腕をがしっと掴む。
「悪い、濱口をちょっと借りて行く」
「へっ?」
「ああ、はい。濱口、今月分全部提出終わった?」
「あ、それ、あがってます!」
「わかった。じゃあ、大丈夫です。どうぞ」
「え、ええ!?」
濱口は状況もわからないまま奥村に引っ張られて行く。エレベーターに乗り込んだが、それからも会話はない。あの、と話しかけても奥村はこたえてくれなかった。上昇して行く階に、どこに行くんだろうと思う。奥村が押したのは会議室の集まっている階だったのだが……
エレベーターを降り、奥村は濱口がついてきているかも気にせずにフロアの奥の会議室をあけた。十五人用くらいの広さのそこに通されると、奥村がドアをしめた濱口の体を退け、かちゃり、と鍵をしめる。
「奥村、しつ……っ」
ちょう、という文字は唇に飲み込まれた。濱口は奥村にキスされたことに気付き、呆然としたまま体を硬直させた。奥村はぎゅうっと濱口に抱きついてその首から胸に顔をうずめてじっとしている。濱口は、はっと強ばりを解き、そっと奥村の背中に手をまわして優しく抱き締め返した。
ゆっくりと鼓動が大きくなるのを感じていると、しばらくして、奥村が大きな溜息をついた。
「はあ……」
「……っ」
「悪い」
限界だった、そう言って赤い顔で濱口を見上げ、恥ずかしそうに笑う彼を見て、濱口は、うわあああ! と叫びそうになるのをおさえ、真っ赤になってしまう。ぎゅうっと抱き締め返すと、奥村もぎゅうっと濱口を確かめるように力をいれる。
視線があって、またゆっくりと唇をあわせる。夢じゃないよな、朝見た夢の続きを仕事場でみてたらどうしよう、なんてずれたことを思いながら、濱口は奥村の細い腰に手をまわしていく。奥村の掌も濱口の腰のあたりを撫で。背中をさすってくる手にびくりと感じた。
久しぶりに味わう、煙草の味のついた舌を舐め、あんまり音がたたないように、こっそりとキスを繰り返す。やばい、まじでやばい、なんて頭の中で理性が少しの警鐘をならすけれど、奥村が最後に、ちゅっと小さな音を立てて唇を離し、にっこりと笑う。それにも煽られて、濱口は奥村の体を抱きしめると、ミーティングテーブルに彼を座らせてぎゅうっと抱き締め、あやとさん……っとしぼりだすような声で名前を呼び、体を弄った。何度かのキスをまた二人でして、濱口をおさえようと奥村が笑いながら、もうだめ、と言って体を離す。
「こら、仕事戻……あ……」
「……あ……」
座っていた太腿に濱口の股間が触れ、反応しているそれに二人同時に気付いて閉口した。
「す、みませ……」
「バカ……どーすんだ」
「おさまるのちょっとまって、トイレで……」
顔が熱い。こんな……キスだけでかたくしてしまうなんて子供みたいだ、と濱口は真っ赤になって俯いた。
はあ……と溜息をついた奥村だったが、少し意地悪い顔で、いいよ、と独り言のように呟いて笑う。
「……っしょーがねーなー……もう……」
「えっ……」
「……十五分しかねえから集中しろ」
「ええっ!?」
短くねえ!? と言いたい文句を我慢して、何を、と思っていると、奥村が立ち上がり、逆に濱口をテーブルの上に座らせた。抵抗する間もなく、かちゃかちゃとベルトを外され、ずるんっとスーツのパンツをおろされる。すぐに下着までむかれて、ひんやりとした空気でぞくりとした。
「ちょっと濡れてるし」
「いや、だって、あ、あや、奥村さんがあんなこと言うから……! 一気に興奮して……っ」
「オレの、触るなよ?」
「ええっ!?」
「オレ、まだみなきゃいけない仕事があんだよ。マルコにメールで送ってやりなおしさせなきゃなんねーし。他にも色々」
「うう、うううううーーっ、生殺しですか!?」
「だな」
絶対さわるな、と言った奥村は何かを思いついたように、ああ、そうだ……! と意地悪い顔で笑い、濱口のネクタイをしゅるりとほどいた。
「えっ……?」
「言うこときかなさそうだから」
「えーっ! そりゃないっすよ!礼人さん……オレも礼人さん触りたい!」
「うるさい」
かたくしてるくせにつっこまれたら困る、と奥村は身も蓋もないことを言うと、濱口の手首をネクタイできつく縛り、そして、彼の性器を弄り始めた。くちゅくちゅ……っという音が小さくきこえるのだが、本当に近くにきこえてないかな……と不安になる。この時間の会議室なんてさすがにあいてるだろうけれど……ときっちりと区切られ、一応防音もしっかりしている会議室の設備をきょろきょろ見てしまう。
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