【R18】年上上司のオトシ方

二久アカミ

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2:年上上司の甘え方

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(オレ、何やってんだよ!)

 濱口はベッドの中で頭を抱えていた。先日の弁当作戦が効をそうしてか、弁当の時間も夕飯まで一緒にいれたのに。

(普通に飯食って終わり、って……!)

 あっさりと終わってしまって、特に進展もなく帰ってきてしまって後悔の波に飲み込まれていたのだった。
 相手にされてねえのかな、と悲しくなってしまうのは仕方がないことだろう。

(店、半個室だし! 仕事の話しかできなかったし!)

 大半、芳樹くんの話だしさあ……いいけど、と思いつつ、少し複雑なきもちは否定できない。

(やっぱりからかわれてんのかな。奥村さん、モテるらしいし、男にも口説かれ慣れてるか。あんなの、あしらうレベルで)

 室長とかいいって、って言ってくれたけど、と、さん付けにできることを少しうれしく思いながら思い出した。役職名など別にいいというのは、ちょっと特別なようでうれしい。

(今日も、まじでキレイだったなあ)

 いや、この感想はどうなんだ? 男に!? と一人でベッドの中でじたばたするけれど、それで何かになるわけではなくて。自分の中の思いが少し熱を帯びているものだと自覚するだけだ。

(キス、してえ)

 させてくんねえかな、と思ってしまう自分が悲しかった。もちろん前に少し迫ってみたけれど、なんてことなくかわされて。まあ、やっぱりなあと思うところもあったけれど、悲しかったのは事実だ。

(女の陰ねえって、彼氏……とか、いたらどうしよう)

 オレにもあんな感じだったし、そんな、いや、男もいけるとか? それなら、見込みありってこと? と複雑な思いが交錯する。

(だめだ、ぐるぐるする)

 はあ、と大きなため息がでる。自分の思いだけがどんどん大きくなっていく気がして。

(いや、別に、そういうことだけしてえわけじゃねえけど、もう……だって)

 前に見た、奥村に迫られる夢思い出してしまった。あれは、あれだけだったのに刺激的だったし、あれからも何度かああいう自分に都合のよい夢ばかりをみている気がする。

(細いし、さあ……すげえ色っぽい。あの細い腰とか超抱いてみてぇ……! いや、抱き寄せたいって意味でもそうだけどっ!)

 そこまで思って、ごめんなさい……とぼんやり思う。

(好きだなあ……もっと知りたい……)

 熱くなった体にため息をついて、あきらめるように手をのばす。
 想像すんな、たまってるだけだって、と思うが、少し後、ベッドの中で後悔してしまった。やっぱり最後には彼のことがでてきて自らの欲望を吐き出してしまったから。ため息ばかりが増えていく。

(オレ、やっぱり、そういう風にスキなんだよな……奥村さんのこと、そういう風に……)

 ……キスしてえよ、と思うけれど、うまく壁をつくられていて、どう進んでいいのかわからない。ああ、もうどうしたらいいんだよ、と誰か答えを教えてくれりゃーいいのにな、とベッドのシーツに頬を埋めて目を閉じた。





 少しの憂鬱を抱えたまま、濱口は仕事をしていたが、会社で珍しく芳樹と一緒にいる奥村に出会い、少しテンションがあがった。芳樹に向けて笑いかけながら声をかけつつ、奥村の様子を見る。

「芳樹くん!! ……って、あっ、だめだ、社長!」
「いいよー今更だよね」
「いや、示し、つかないっすよね。上司なわけだし」

 奥村さんの目が恐いし、とこっそり芳樹にきこえるようにだけいうと、彼も、あ、そっか……と小さく笑った。こういうところは昔とまったく変わらない。仕事場で会う頻度が増えて、前のような幼馴染でいることは少なくなった。けれど、それでも、かなりくだけた関係でいることを芳樹の方が望んでいるので、こそこそと親しく話をしていた。

「猛、今週末、暇?」
「え? ああ、うん。実家にちょっと用事有るから土曜日は無理だけど」
「ほんとに? 土曜日の夜とか無理かなあ。うちに久々に父さんが戻ってるんだよ。奥村さんも一緒に御飯に来るんだけど、猛も来ない?」
「え? まじで? 行きてー! ……っと」

 思わず声があがった濱口に対し、奥村がじろりと睨みをきかせた。二人の関係はわかっているが、それを会社であからさまにするのはよくないという考えなのだろう。濱口も、奥村にむかってすみません、と少し謝った。そんな二人のやりとりに芳樹はにこにこと間で笑顔を浮かべ、話を続けた。

「奥村さん、うちの家族の前だとすっごい気を遣ってくれるんだよね。肩こるだろうし、猛と仲いいってきいたから」
「えっ!?」

 芳樹の言葉に、奥村さんから? とドキドキしてしまうのは仕方がない。

「あ。イタリア支社のボス知ってる? クリスティーノさんって。彼からきいたんだ~」

 なんだ……と落胆するも、うん、行く行く、とにこやかな彼に濱口も笑いかけて返した。

「ちょっと遅れるかもしれないから、また時間とか連絡して」
「わかった。適当に始まると思うから適当に来てね」
「ああ」

 じゃあ、と笑いながら、手を振って二人と別れる。休日に奥村とあうことができる。それだけでテンションがあがってしまうのは仕方がないことだ。私服、どんなんかなあ……なんて。そんな幸せな思考の中で、濱口はゆっくりと二人の後ろ姿を見送っていた。
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