【R18】年上上司のオトシ方

二久アカミ

文字の大きさ
上 下
21 / 51
2:年上上司の甘え方

(2)

しおりを挟む
「あの、あのっ、これからも作ってきていいですか?」
「え? いや、オレは社にいねえこと多いし……」
「居そうな日の前日にきくんで……オレも毎日作るのは無理ですけど、たまになら気分転換にしたいなあって。オレの趣味に付き合ってくれません?」
「……」

 奥村が黙ってしまったので、濱口は笑顔の裏で固まってしまった。
 先走った? 引いた? やりすぎた!? と思うけれど、もう部署も違って、上司でもなくなって、無理矢理接点を持たないと、こっちだってやってられないのだ。
 だが、濱口の心配をよそに、奥村は言いにくそうに、お前がいいなら、と呟いた。

「また食いたい」
「ほんとに!?」

 うまかった、と笑う奥村に濱口は惚けてしまって、そして、その後、何が食べたいですか、何が嫌いですか、と一生懸命に質問してしまう。そんなのに奥村は思わず笑ってしまう。

「お前さ……かわいいよな」
「へっ!?」
「実家にいた犬みたいだ」

 くくく、と喉で笑う奥村は、濱口を見て楽しそうだった。犬扱いにはなんとも言えず複雑で、奥村室長は、ほんと狡いッスよね……と思わず声に出してしまう。

「ずるい?」
「なんでもないですー」

 なんだよ? と首を傾げる様すら可愛いと思う。普段なら、絶対に部下には見せない姿だって分かっているし、自分が他の会社の部下とは違うともなんとなく理解しているけれど。

(くっそ……キスしてぇ……!)

 反則だろ、こんなの、と何をされたわけでもないのに、濱口は奥村の頬に手を伸ばし、つい、キスしたいです、と許可を得るように呟いて目を閉じて唇を近づける。一応密室だし、いいよないけるよな! と思ったのだが、唇に触れたのは柔らかな彼のそれではなくて。

「……んぐ……」
「仕事中だ」
「休憩時間じゃないスか……」
「業務時間内」

 会社で何考えてるんだ、と睨まれる。怒るのはそこなんだ、とちょっとほっとして反省したけれど、拒まれたことは凹む。返事も貰えてないし、恐いのもある。けれど、そんなことを気にしている余裕もなければ、鈍感なフリをしてでも傍に居たかった。うまかったよ、ありがとうな、と奥村は礼を言う。洗って返す、というので、濱口は慌ててそれを回収した。

「いいって。悪いしよ……」
「いや! オレが持って帰ります!」

 いつ返してくれるかわからないし、と濱口は弁当箱を確保すると、奥村は少しだけ黙って、明後日、と言った。

「明後日なら、昼は会社にいる」
「へ?」
「あと、お前……その日の夜、暇?」
「! 暇ッス!!」

 濱口が思わず食いつくと、奥村は、声でけえよ、とそれに苦く笑い、じゃあ、夕飯もな? と下から覗き込むようにして目を細めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

控えめカワイイ後輩クンにイケメンの俺が本気になる話

ずー子
BL
大学生BL。先輩×後輩。イケメン先輩が控えめカワイイ後輩男子にメロメロになっちゃって、テニサーの夏合宿の夜にモノにしようとする話です。終始ラブラブ。 大学3年の先輩×大学1年生のラブラブ話です。受クン視点も近々載せますね♡ 私はこういう攻視点で受を「カワイイ」と悶えて本気でモノにするためになんでもしちゃう話がすきです。 お楽しみください!

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

処理中です...