【R18】年上上司のオトシ方

二久アカミ

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1:年上上司の口説き方

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「部長、近くに着きました。マンション名か番地言ってもらえます?」
「ん……」
 
 ぼそっと言ったマンション名をタクシーの運転手に伝えると、ナビに入れてもらって場所を確認する。目立つタワーマンションだったので、そこのロータリーまで車を走らせてもらい、まだ寝ぼけたままの上司を車から降ろした。完全に眠いモードの奥村はぼんやりしていて心もとない。どうしますか、待ちます?と言うタクシーにはもう行ってもらって、奥村のコートと鞄をあさって鍵を出してもらう。

「もうすぐですから」
「うー……ねっみぃ……」
「ちょ、ここでは寝ない!」

 まじかよ……と濱口は眠気に負けて座り込もうとしている奥村を支えるように抱えあげると、やっとのことでエレベーターまで辿り着き、上層階の番号を押した。

「奥村部長ー……ほんとに吐かないですか?」
「……うん」

 眠いだけ……と言って、濱口の腕をとってぼうっと体を寄せてくる彼は本当に立ったまま眠ってしまった。これ、誰かエレベーターに乗ってきたら、まじでちょっと……誤解されるなあ、という心配を胸に、濱口はエレベーターの階数表示があがっていくのを見つめていた。
 部屋について鍵を開けると、独り暮らしらしい冷えた空気がなく、まあ、このマンションすげえいいしな……と濱口は自分の暮らしているところとの差を思いながら、玄関の灯りをつけた。

「おじゃましまーす……」

 ほぼ寝たままの奥村を抱えて引き摺るような形で、リビングに連れて行く。シンプルな家具しかないその部屋の、大きなソファーに上司をやっと置くと、鞄やコートをかけた。

「部長、お水とかいります?」

 冷蔵庫開けてもいいですか、と訊くと、ぼんやりとしたままの彼は、コーヒー飲みたい……と言い出した。

「え? まじ? 吐かないですか?」
「そこ……インスタントある……」
「ああ、豆もあるんスね。待てるならちゃんと挽きますけど」
「欲しい……」

 素直な上司に思わず笑って、近くを探すとカウンターキッチンにちょこんっと家庭用ミルとサーバーがあった。こぽこぽとお湯を沸かす。コーヒー好きだもんなあ……とオフィスでもカフェイン摂取量の多い上司を思いながら電動ミルを動かした。

 いい匂いだなーと、コーヒーをフィルタの上で蒸らしていると、上司はソファーで長い脚を投げ出して寝ている。煙草を取り出してたんだろう、右手に彼の好きな煙草が握られたまま、静かな寝息を立てていた。
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