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1:はじまりはじまり

色々怪しすぎるんだが?

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 ランベールに言われたことが気になったが、俺はとりあえず部屋に戻ることにした。
 近くにある部屋に控えていたカイトが快く案内役を引き受けてくれる。皇子たちほどの魅力はないものの、人のよさそうな大きな瞳がかわいらしい。
 
「とりあえず、部屋の配置をご案内いたしますね!」
「うん、ごめんな。よろしくお願いします」
「いえいえ! いつでもお申し付けください!」

 そうして、カイトに連れられて城の中をめぐっていく。立派なつくりの建物だ。皇子と俺の部屋のある方の棟は、そこまで複雑なつくりではないのだが、何せ同じような扉が並んでいる。
 
「部屋の扉に各皇子のもつマークが書かれています。あとイニシャルですね」
「なるほど」
 
 扉の前には見事な彫刻が刻まれている。
 これで区別をつければいいわけか。とは思うが、俺にとっては紋章も難解なものだった。
 こっちの魔法ペンなるものがうまくつかえず、メモに四苦八苦していると、カイトがあとで僕がお渡ししますよ!と微笑んでくれた。い、いいやつすぎるー!
 
 カイトはにこにことしたまま、廊下の奥の方まで案内してくれた。
 
「あと、僕の方でも気を付けますが、何か調子が悪い時、僕が不在の時はこちらを訪ねてくださいね」
「ここは?」
 
 俺の部屋の面している廊下の一番奥に、日の当たらなそうな陰鬱な扉があった。カイトはその扉をノックすると、ご紹介します、と中を開けてくれた。
 
「ここには魔法薬専門の魔術師がおりまして……アイリ様ー?」
「アイリは今出かけてるけどー?」
 
 扉の奥からは聞き覚えのある声がする。それにはっとしたカイトは慌てて頭を下げた。
 
「ゴーチエ様! こちらにいらしていたのですか!? 大変失礼いたしました!」
「んー、オレは別にかまわねーけど。何? アイリになんか用?」
「い、いえ! ルイ様をご案内がてら、ご紹介をしようと思いまして!」

 部屋にいたのはゴーチエだった。薄紫の髪が暗い部屋の中でもよく目立つ。相手は垂れ目をこちらに動かすこともなく、指先で何かをいじっている。ふぅん、と興味なさげにカイトに応えると、ちらっと手元の時計を見ていた。
 
「もうすぐ戻ってくるんじゃね? ルイを連れてきたってことは魔法薬の話?」
「は、はい! ルイ様はΩなので、その魔法薬の処方をお願いしなくては、と」
「あっそ。戻ってきたら言っとくよ」
 
 じゃあね、と部屋を追い出され、扉を閉められた。一瞬しか見えなかったが、部屋の中には様々な瓶とあやしげな草や植物、それにやばそうな色の液体やフラスコなどが見えた。
 カイトはハハハと乾いた笑いを漏らし、「ゴーチエ様も魔術や魔法薬学がお好きなので」と言いにくそうに告げた。
 
(どう考えてもヤバいヤツを作ってそうだ……)
 
 俺はゴーチエのバッドエンディングの噂を思い出し、すうっと背筋を寒くしたのだった。

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