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1:はじまりはじまり
不穏なことばかり言われるんだが?
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ランベールからの熱い視線に戸惑い、思わず顔をそむける。
無駄に美形なので、妙にドキドキするが、ランベールは攻略対象じゃないはずだ。
「そ、そうですか……それは真剣に見極めなくてはいけませんね」
「ええ。よろしくお願いいたします。守護者となる皇子は、実質この国の皇帝と並ぶわけですから」
そこで俺はあることに気づき、疑問に思っていたことを尋ねる。
「あの、この国のトップは皇帝ですよね。皇子たちの御父上は今……」
「ええ。エルデンシャイア皇は現在病に臥せっておられます」
そうだ。確かゲームでも「跡継ぎを決める時期がきていて」「神託の神子が決めた守護者をもとに次の後継者を決める」と皇帝が言っていたはず。だから、攻略対象は皇子たち……。
しかし、その裏で神官たちがいない状態にまでなっていただなんて。
そうか。だから、クロヴィスのエンディングは守護者と皇帝の兼任だったんだな。
(思っていたより、この国の実情はぼろぼろなのか……?)
エルデンシャイアは帝政で、他国とのトラブルイベントなんかはあまりなかった気がする。
けれど、この世界にこの国だけなわけではないし、魔獣もいるということは絶対的平和ではないわけだ。
(ええーー……ただの恋愛ゲームじゃないと思うと、俺の選択ってかなり重いのでは!?)
二次元で見ていた時とは違う。俺はもうこの世界に入り込んでいるわけだ。まだ実感はわかないが、民たちもいるわけだし……?
(最初に推しと恋愛できる! って浮かれた俺が馬鹿みたいだな……)
しかし、かといって、ゲームと同じような嫉妬システムがあれば自分の命にかかわりかねない。
これは緊張感のある生活になってきた……!
(けど、どうやって皇子たちと接触していけばいいんだろ。ゲームではカレンダーごとにイベントがあったけど、その辺もこっちの世界でいきてるのかな?)
俺の疑問にこたえるように、ランベールが「明日、今後の予定をまたご説明しますね」と言った。どうやら、行事的なものは色々あるらしい。とりあえずはそれに乗っかれば、なんらか接触をはかれたり、皇子たちの人柄なども分かったりするだろう。とりあえず部屋に戻るかと来た方向を見ると、ランベールが優しく尋ねてくれる。
「ご自分の部屋の場所はおわかりになりますか? お送りしましょうか?」
「あ。はい! それは大丈夫です!」
「あまり夜遅くまでは出歩かれませんように」
ランベールはにこりと笑ってそう言った。
「城や神殿には結界が張ってありますが、魔獣が出るやもしれませんよ」
「まさか……」
冗談めいた言い方に、ははは、と俺が笑うと、ランベールは丸眼鏡の奥の瞳を光らせた。
「それに……」
「今は皇子たち同士の関係があまりよくないですから」
「え……?」
俺がそれに反応すると、ランベールはまたにこりと目を細める。
「争いに巻き込まれないよう、お気を付けください。ルイ様はただ「選べばいい」のです」
「……はい」
そう言い残してランベールはその場を去った。
俺の中には妙な違和感だけが残り、なんだか、胸の奥がじくじくと痛む気がした。
無駄に美形なので、妙にドキドキするが、ランベールは攻略対象じゃないはずだ。
「そ、そうですか……それは真剣に見極めなくてはいけませんね」
「ええ。よろしくお願いいたします。守護者となる皇子は、実質この国の皇帝と並ぶわけですから」
そこで俺はあることに気づき、疑問に思っていたことを尋ねる。
「あの、この国のトップは皇帝ですよね。皇子たちの御父上は今……」
「ええ。エルデンシャイア皇は現在病に臥せっておられます」
そうだ。確かゲームでも「跡継ぎを決める時期がきていて」「神託の神子が決めた守護者をもとに次の後継者を決める」と皇帝が言っていたはず。だから、攻略対象は皇子たち……。
しかし、その裏で神官たちがいない状態にまでなっていただなんて。
そうか。だから、クロヴィスのエンディングは守護者と皇帝の兼任だったんだな。
(思っていたより、この国の実情はぼろぼろなのか……?)
エルデンシャイアは帝政で、他国とのトラブルイベントなんかはあまりなかった気がする。
けれど、この世界にこの国だけなわけではないし、魔獣もいるということは絶対的平和ではないわけだ。
(ええーー……ただの恋愛ゲームじゃないと思うと、俺の選択ってかなり重いのでは!?)
二次元で見ていた時とは違う。俺はもうこの世界に入り込んでいるわけだ。まだ実感はわかないが、民たちもいるわけだし……?
(最初に推しと恋愛できる! って浮かれた俺が馬鹿みたいだな……)
しかし、かといって、ゲームと同じような嫉妬システムがあれば自分の命にかかわりかねない。
これは緊張感のある生活になってきた……!
(けど、どうやって皇子たちと接触していけばいいんだろ。ゲームではカレンダーごとにイベントがあったけど、その辺もこっちの世界でいきてるのかな?)
俺の疑問にこたえるように、ランベールが「明日、今後の予定をまたご説明しますね」と言った。どうやら、行事的なものは色々あるらしい。とりあえずはそれに乗っかれば、なんらか接触をはかれたり、皇子たちの人柄なども分かったりするだろう。とりあえず部屋に戻るかと来た方向を見ると、ランベールが優しく尋ねてくれる。
「ご自分の部屋の場所はおわかりになりますか? お送りしましょうか?」
「あ。はい! それは大丈夫です!」
「あまり夜遅くまでは出歩かれませんように」
ランベールはにこりと笑ってそう言った。
「城や神殿には結界が張ってありますが、魔獣が出るやもしれませんよ」
「まさか……」
冗談めいた言い方に、ははは、と俺が笑うと、ランベールは丸眼鏡の奥の瞳を光らせた。
「それに……」
「今は皇子たち同士の関係があまりよくないですから」
「え……?」
俺がそれに反応すると、ランベールはまたにこりと目を細める。
「争いに巻き込まれないよう、お気を付けください。ルイ様はただ「選べばいい」のです」
「……はい」
そう言い残してランベールはその場を去った。
俺の中には妙な違和感だけが残り、なんだか、胸の奥がじくじくと痛む気がした。
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