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1:はじまりはじまり
キャラの様子がおかしいんだが?
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(とりあえずうろつこうと思ってはみたものの、この城の構造ってどうなってるんだっけ?)
ゲームではテキストで行きたい場所を選べたから、いざ城内を歩いて探索するとなると骨が折れる。
(こういう時ソシャゲって便利だよなぁー。「クロヴィスの部屋」選択でそこに行けるんだから)
しばらくうろつこうとしたものの、あまりに長い廊下に諦めた。カイトに案内をお願いしに戻ろうと振り返ると、
「おや、ルイ様」
「うわっ!」
「失礼、驚かせてしまいましたね。何かお困りごとでも?」
そこにはランベールがいた。
宰相ランベール。ゲームではガイド役だったはずだ。攻略対象ではないし、ゲームでの印象も薄い。
確かに最初に部屋で説明してくれたのもランベールだったし、皇子たちに引き合わせてくれたのもランベール。
(宰相ってことは政治的な権力はかなり強いはずだよな。神子の管理も任されてるって設定だったような)
ランベールは美しい銀髪を一つに束ね、にこりと俺に微笑んだ。
宰相というおかたい職業らしくつけた丸眼鏡がよく似合っている。耳が尖っているのはキャラクター設定上何かあっただろうか? エルフか何かか?
(うーん、あんまりちゃんとキャラクター説明読んでないからな……クロヴィスのことはストーリー見てたからそこそこ知ってるけど)
考えても何も思い出せない。俺はとりあえずコミュニケーションをとることにした。
今までの会話からして、ゲーム内の会話以外も自由にやりとりできるようだし。
「いえ、城の中を散策してみようと思ったんですが、あまりの広さに迷いそうで」
「そうでしたか! 最初はカイトに案内させましょう。私でもたまに迷いますので」
彼はにこっと人の好さそうな顔で微笑んでくれる。
今更だが、二次元のキャラクターがそのまま実写化したという感じなので、とんでもなく美形だ。皇子たちのキラキラ具合にも目がつぶれそうだったが、宰相まで見目麗しいとはどうなってんだ、この国。
そんなことはどうでもいいが、ランベールは簡単に城の中を説明してくれた。
俺の部屋は皇子たちの部屋と同じ棟に用意されていた。行き来しやすいように、ということらしい。
従者であるカイトは俺の部屋のすぐ隣に小さな控室があるが、他の使用人たちは基本的には別棟や城内の使用人宿舎にいるから、カイト経由で色々手配することになる。
(皇子たちの見極め……か)
早速自分の知っているゲームとは違う展開になっているので、状況を把握しなくてはいけない。
俺はランベールにそれとなく問いかけた。
「あの、守護者の見極めとは……俺からほいほい皇子たちに接触していいものなんですか?」
ランベールはそれに一瞬目を見開いてから、にこっと笑いかけてくれた。
「守護者と神子は惹かれあうと言いますからね。自然とお選びになるものかと」
見事なまでにあっさりとしたガイド回答だ。
そりゃそうか。神子のことなんて神子しか分からないんだもんな。しかし、このゲーム、よく考えれば、神官っていないのか。世話役が宰相っていうのも微妙に気になる。
「あの、ランベール様は」
「ランベールとお呼びください」
「あっ、ランベールは神殿の管理も兼ねているんですか?」
俺の質問にランベールはまたもにこりと笑って、「ええ、神官が全員死んだので」と答えた。
おいおい、笑って答えることじゃないんだが!? そんな設定ゲームにあったか?
「全員死んだ……」
「はい。すみません、明日ちゃんとしたご説明をするつもりで……」
「いえっ! 俺が先走ってしまって。今お聞きしてもいいですか?」
勿論です、とランベールは笑って話をつづけた。
「一年ほど前でしょうか。神官たちは大神官様を連れての地方巡業をしていたのです。しかし、道中で魔獣の群れに襲われて……瀕死で運ばれてきた大神官様もお亡くなりに……。今際の際、「一年以内に黒髪の神子が下りてくる。その神子が選ぶ守護者はこの国を治め、幸せと富み、永遠の繁栄をもたらすだろう」と伝えて息絶えられました」
「……それが俺だと」
「ええ。数百年前にも一度あったそうです。国が危うい時に現れる神子。その時の神子も黒髪黒目、そして、首の周りには翼の文様。それは皇室関係者しか知らない秘匿事実です」
ですから、貴方様に間違いありません。
我々はルイ様をお待ちしていたのです。
そう言ったランベールの瞳は、やけに熱っぽく俺を見つめていた。
ゲームではテキストで行きたい場所を選べたから、いざ城内を歩いて探索するとなると骨が折れる。
(こういう時ソシャゲって便利だよなぁー。「クロヴィスの部屋」選択でそこに行けるんだから)
しばらくうろつこうとしたものの、あまりに長い廊下に諦めた。カイトに案内をお願いしに戻ろうと振り返ると、
「おや、ルイ様」
「うわっ!」
「失礼、驚かせてしまいましたね。何かお困りごとでも?」
そこにはランベールがいた。
宰相ランベール。ゲームではガイド役だったはずだ。攻略対象ではないし、ゲームでの印象も薄い。
確かに最初に部屋で説明してくれたのもランベールだったし、皇子たちに引き合わせてくれたのもランベール。
(宰相ってことは政治的な権力はかなり強いはずだよな。神子の管理も任されてるって設定だったような)
ランベールは美しい銀髪を一つに束ね、にこりと俺に微笑んだ。
宰相というおかたい職業らしくつけた丸眼鏡がよく似合っている。耳が尖っているのはキャラクター設定上何かあっただろうか? エルフか何かか?
(うーん、あんまりちゃんとキャラクター説明読んでないからな……クロヴィスのことはストーリー見てたからそこそこ知ってるけど)
考えても何も思い出せない。俺はとりあえずコミュニケーションをとることにした。
今までの会話からして、ゲーム内の会話以外も自由にやりとりできるようだし。
「いえ、城の中を散策してみようと思ったんですが、あまりの広さに迷いそうで」
「そうでしたか! 最初はカイトに案内させましょう。私でもたまに迷いますので」
彼はにこっと人の好さそうな顔で微笑んでくれる。
今更だが、二次元のキャラクターがそのまま実写化したという感じなので、とんでもなく美形だ。皇子たちのキラキラ具合にも目がつぶれそうだったが、宰相まで見目麗しいとはどうなってんだ、この国。
そんなことはどうでもいいが、ランベールは簡単に城の中を説明してくれた。
俺の部屋は皇子たちの部屋と同じ棟に用意されていた。行き来しやすいように、ということらしい。
従者であるカイトは俺の部屋のすぐ隣に小さな控室があるが、他の使用人たちは基本的には別棟や城内の使用人宿舎にいるから、カイト経由で色々手配することになる。
(皇子たちの見極め……か)
早速自分の知っているゲームとは違う展開になっているので、状況を把握しなくてはいけない。
俺はランベールにそれとなく問いかけた。
「あの、守護者の見極めとは……俺からほいほい皇子たちに接触していいものなんですか?」
ランベールはそれに一瞬目を見開いてから、にこっと笑いかけてくれた。
「守護者と神子は惹かれあうと言いますからね。自然とお選びになるものかと」
見事なまでにあっさりとしたガイド回答だ。
そりゃそうか。神子のことなんて神子しか分からないんだもんな。しかし、このゲーム、よく考えれば、神官っていないのか。世話役が宰相っていうのも微妙に気になる。
「あの、ランベール様は」
「ランベールとお呼びください」
「あっ、ランベールは神殿の管理も兼ねているんですか?」
俺の質問にランベールはまたもにこりと笑って、「ええ、神官が全員死んだので」と答えた。
おいおい、笑って答えることじゃないんだが!? そんな設定ゲームにあったか?
「全員死んだ……」
「はい。すみません、明日ちゃんとしたご説明をするつもりで……」
「いえっ! 俺が先走ってしまって。今お聞きしてもいいですか?」
勿論です、とランベールは笑って話をつづけた。
「一年ほど前でしょうか。神官たちは大神官様を連れての地方巡業をしていたのです。しかし、道中で魔獣の群れに襲われて……瀕死で運ばれてきた大神官様もお亡くなりに……。今際の際、「一年以内に黒髪の神子が下りてくる。その神子が選ぶ守護者はこの国を治め、幸せと富み、永遠の繁栄をもたらすだろう」と伝えて息絶えられました」
「……それが俺だと」
「ええ。数百年前にも一度あったそうです。国が危うい時に現れる神子。その時の神子も黒髪黒目、そして、首の周りには翼の文様。それは皇室関係者しか知らない秘匿事実です」
ですから、貴方様に間違いありません。
我々はルイ様をお待ちしていたのです。
そう言ったランベールの瞳は、やけに熱っぽく俺を見つめていた。
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