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第2章

双子 トーマス 2

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この手紙を受け取って、俺は急いで実家に帰った。

もうごちゃごちゃでわけがわからなかった。
どうやって実家まで帰ってきたのかも思い出せない。
実家について、急いでリヒトの部屋に向かった。
リヒトは眠っていた。
急いで呼吸を確認した。

まだ、生きてた……。

両親によればもって、あと1週間。
原因は全くわからないらしく、ほとんど寝たきりの状態であると聞いた。
起きている時間はほとんどなく、起きていてもぼーっとしているだけだと。

遅かった。全てが遅かった。
ここまでなるのになんで気づかなかったんだろう。
俺がそばにいれば。
隣国に留学なんていかなければ。
たらればしか出てこない。

悔しい。涙が止まらない。
なんで、なんで、兄がこんな思いしなくちゃいけない。
もともと身体が弱かった。双子なのに全く体格は違った、兄なのによく弟だと間違われていた。
でも、ここまで生きてこれてたのに。

ふと、リヒトの声が聞こえた気がした。
振り返ると、リヒトの目が開いて、こっちを見ていた。
急いでそばまで駆け寄った。
俺たちは触れていなければいけないが、双子だけのテレパシーみたいなのが使える。

だから、リヒトの言葉を聞き逃さないように慌てて手を握った。

『僕の机の引き出しの中、僕の日記みて。
全部書いてある。僕の最後のお願い。頼んだよ。大好きだよ。僕の可愛い弟。』

そのまま、またリヒトは眠ってしまった。

急いで机の引き出しを探った。
そして、年季の入った日記帳を見つけた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

信じてもらえないかもしれないけど、僕には前世の記憶があります。
この世界は乙女ゲームの中の世界でした。

僕は、この世界に生きる最推しセオドア様を助けるためにこの世界に転生してきました。

前世の僕も身体が弱くて、両親に疎まれていました。他の兄弟たちからも。何度も、命を諦めようとしました。そんな時に支えになったのがセオドア様でした。

何度裏切られても、辛く当たられても、自分がやられたら悲しいからとヒロインや攻略対象者たちに優しく接し、真摯に向き合うその姿に何度も救われました。

どのルートでも不幸になってしまうセオドア様の支えに、僕がなってあげたいと何度も思いました。

そして、その願いを神様は叶えてくれました。前世の天寿を全うしたとき、神様が現れて僕に言いました。

「君の願いを叶えたあげる。でも、多くの困難が待っているよ?それに、君とセオドア様の2人の未来なんてないかもしれない。不確かだ。それでもきみはあの世界に行きたいかい?」

僕は間髪いれず「はい」とこたえました。

神様は僕の助けるようにと
とこの日記帳を授けてくれました。

そこから僕は何度も時間を戻り、セオドア様を助けるために奮闘しました。

何度も何度も失敗して、改良してを繰り返して、ようやく今回、セオドア様が助かる一歩手前まできました。今回で最後だと思います。時間魔法の使いすぎで、僕の身体はもうもちそうにありません。

お兄ちゃんからの最後のお願いです。
この物語を終わらせてください。
彼のために。
そして、僕のために。

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