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3章、初めての街的な所編
52、下世話は文化だ
しおりを挟む昨日、作り出した技を試したくて今日も俺とキリアで仕事を行うことになった。
ちなみにまだ買取は済んでいないようで、正直金欠気味である。急いでください。お願いします。
「・・・もう胃がえげつないくらい痛いぃ」
キリアが俺が仕留めてきた魔獣の山を見てそう呟いた。それを俺の聴覚は逃しはしない。
・・・どんだけ胃弱なんだよ、キリア?
「そんなんで一国の皇子がつとまんのか?」
「余計なお世話だ・・・よ?」
・・・あ、言ってしまった。多分この話タブーだよね?
「いや、なんでユーマ知ってるの?言ったけ?」
俺は少し迷ったから首を横に振る。正直に話すとするか。
「【鑑定】で見たんだよ。それでお前の正体は知ってるんだ。悪気は無かったよ。すまねぇな」
とりあえず謝ろう。そうじゃないと話が進まないし。
「・・・はぁ~、また胃痛のネタが増えたよ」
・・・マジですんません。
「いや、神具で【鑑定】を妨害しきれてると油断した僕も悪かったからね。・・・それにしても、妨害レベルがまあまあ高い神具を使ったんだけど・・・もしかして【鑑定】の経験値も凄かったりする?」
「いや、そんなことはないと・・・思う?」
「なんで疑問形なのさ?」
だって、「【鑑定】を低レベルにした」って言ったのは他ならぬあの爆裂賢者様だからな。前も魔獣のランクを低く見てたし、間違いがあってもおかしくはない。
「それにしてもなんで皇子様がこんなところで暮らしてんの?」
「それに関しては王家の義務の1つでね・・・もう君にはバレてるから言うけど、他の人には言わないでね」
「そんなことやってもリーラから飯を受け取れなくなるだけだしやらねーよ」
あいつの飯は美味いし、それを食えなくなるのは正直きつい。
・・・なので言わねぇええ!!
「そうか、・・・分かったよ。言わせて貰うよ」
「その前に、俺のことは勇馬って呼んでくれよ。その方がなんだかしっくりくるし」
「そうかい?それじゃあ、そう呼ばさせてもらうことにするよ、ユーマ?」
「おう、よろしく皇子」
「・・・皇子って絶対他の人がいるところで呼ばないでね、ユーマ」
「りょーかーい」
ふむ、胃弱なところはあるが本当にいいやつだな。
今、キリアはお腹をキリキリと音を立てながら「胃が痛いぃ~」とか言っているが気にしないことにしよう。・・・というかあいつ本当に皇子として大丈夫か?
その後キリアの話を聞いているとどうやらクロード家の者は必ず一定以上の年になると、王都から追い出され【聖人】の称号を獲得するまで国に戻ってはいけないという決まりがあるようだ。
ちなみにその中でもイミスは最短でその試練をクリアした天才だそうだ。・・・キリアよりも肥えてる癖に。
それで、ただ今キリアは【聖人】の称号こそ取れたものの国に帰ろうか悩んでいるそうな。
「やっぱり、皇子としては帰らないといけないんだと思うんだけど・・・」
「リーラが気になんのか?」
「そうそう・・・【鑑定】ってそこまで分かるものなの?」
・・・コイツ、そういうのが分かりやすいという自覚はないのか・・・。
「いやモロバレだぞ、お前。一目で分かったぐらい」
「そんなにか、・・・胃が痛い」
顔真っ青だけど大丈夫か、コイツ。というか胃弱ってここまでなるもんだっけ?
「なんで自覚してんのに告白しないわけ?」
本気でこれは俺が気になっていることだ。園田に関しても言えていることなのだが・・・なんでだろ?恋愛経験=年齢の俺には分からん。
「・・・もし告白して今まで通りの関係が崩れたら、とか思っちゃうんだよね。やっぱり、覚悟が足りないのかな?」
ふむ、・・・俺には全く分からん感情だな。俺はやはり爆裂賢者様が言うように枯れているのだろうか。青春とかそんなものが。
血だらけの青春なら知っているわけだが・・・あれは俺の家が特殊なだけだし。
「まっ、お前の調子に合わせて言ったらいいんじゃね?その代わりその時が来たらビビらず言えよな」
「・・・ユーマって本当に変わってるような気がするよ。僕が王族って分かっても敬語にすらならないし」
「その方がいいなら考えてやる」
「いや、今の方が友達ぽくていいかな」
む、コイツ。俺のことを友達と思ってないわけか?
まっ、たしかに俺もつい最近に同じようなセリフを吐いた覚えはあるけどな。
「だったら、本当に友達になるか?」
「えっ!?」
この言葉にキリアの顔に驚愕の色が現れた。いかにも信じられないといった顔だった。
あの頃の俺もこの言葉にだいぶ救われたんだよな。
『だったら友達になろうぜ!勇馬!今日から俺たちは親友だ!』
あの言葉に・・・。
「嫌か?」
「いや!そんなわけないよ!!」
俺の言葉にキリアは慌てて否定の言葉を口に出した。
そして、
「・・・よろしく、ユーマ」
すこし照れくさそうにしながら右手をこちらに差し出した。
「おう!よろしく」
そして、その手を俺は握り締める。
空はすでに茜色に染まり、勇馬達の手を赤く染め上げていた。
「で、ところでキリアさんはリーラのどんなところが好きになったんだ?」
俺は手を強く握りながらニヤニヤして質問をする。
まさしく帰らせへんでー、といった模様だ。
「って、ええぇ!?今聞く!?」
キリアの顔がさっきとはまた別の意味で驚愕に染まる。
それでも、森の遥か向こうに見える太陽は彼らの新たな友情を祝福するように赤く光り、照らし続けていた。
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