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2章、ハードな森編

33、MGP、お前は弱かった

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『第1の試練、クリア~!』

 海蛇を倒した俺の脳内にクリアを証明するアナウンスが聞こえる。

 勇馬は呑気でムカつく声をスルーして、海蛇の解体を始める。

 ・・・食いごたえありそう。こりゃあ携帯食料いらんかったな。

『おいおーい、君ぃー。無視は良くないぞー』

 ・・・テメェ、これ録音じゃなかったのか?

『残念ながら録音ではないよー』

 ? でも死んでるんだろ?

『うん、死んではいるよ。身体はね。でもこの迷宮に意識を写しているのさ。別にボクは録音したなんて言った覚えはないけれど?』

 ・・・そういえばそうだな。

『ふん、納得してもらえたようで何よりさ。ところで君は何をやってるのさ?・・・もしかして魔獣を食おうとでもしてるのかい?』
「ああ、勿論だ」

 ・・・何を言ってるんだコイツは?

『いやいやいやいや、可笑しいのは君だからね。一応聴いとくけど魔石は食ってないよねー?』
「食うに決まってんだろ」
『だよねー。食べないに決まってる・・・なんて言った?』

 うるせえ。黙れねえのかテメェは?

『嘘、なんかこの子塩胡椒みたいな感じで魔石、ふりかけてんだけど・・・。正しく野生児じゃん』

 だれが野生児だ!

『ほんと可笑しいね、君。もしかしてだったりするの?』
「な!?」

 なんでお前が知っている!?そう聞こうとすると

『やっぱりかぁー。確かにイレギュラーだとは思ってたけどここまでとは思ってなかったなぁー。・・・外ってどんな環境になっちゃってんだよ?』

 とかぼやいていた。人の話を聞け!!

『うん?ああ、ボクが君のことを地球から来たって思った理由かな?』

 おう、キリキリ話せや。

『その理由は2つあるよ。1つ目は【上位世界人】の称号を持ってないと魔石食べたら死んじなうんだよねー。スキル吸収とかそんな問題じゃないよ。もっとも称号持ってたとしても何日か悶える上にスキルや称号は獲得できないんだけど。それ考えると君、相当のイレギュラーだよ』

 ほう。で、2つ目の理由は?

『うむ、その理由はね。この世界の上位世界なんて地球以外にないんだよ。地球出身者の最強賢者様が言うんだから間違いないよ!』

 !? お前、地球出身だったのか!?でも名前は・・・なんだっけ?

『アリス・ワークハイムね。まあ、説明はこれで一旦切り上げ。読者も飽きてると思うし。アバヨ!』

 そう言って、脳内アナウンスが終わった。

 なんか、重要そうな話が途中で終わったんだが・・・。

 とりあえず、コイツを食うか。

 俺は後ろの海蛇に目を向けた。



 ・・・なんだと!

 これは・・・可笑しすぎるね!

 俺はとりあえずそこら中を飛び跳ねる。

 こちらを見てほしい。

 MGP・・・980

 ・・・素晴らしい!

 どんだけだよ!

 しかも海蛇から手に入れたスキルもなかなかのもの。【遊泳】、【鱗装】の2つとなっている。

 この2つのスキルについてはまあまあ予想できる。

 【遊泳】は水中活動を前以上に楽に行えるスキルだろう。これで俺の弱点は減った。

 【鱗装】はあの海蛇の異常なほどの防御力を再現できるスキルのはずだ。これで弱点だったMGP問題が些細なものとなった。でもまあ、外に出たら速攻でやられるだろうが・・・。慎重に行こうな。

 ・・・さてと喜びまくるのはいいが、そろそろ次に行くか・・・。

 いつの間にやらできていた鉄の扉を押し開け、進み出す。

 そしたら・・・『第2の試練はそいつ、アズラがお相手するよー。ガンバー』と聞こえた。

 だがな。今回の敵に関してはまあまあ突っ込みたい。

 今回の敵はガタイの良い成人男性の顔の横に1つずつ顔をつけており、腕はカブト虫みたいに六本、足はふつうに2つだけ。・・・むしろ蜘蛛と言った方がいいですか?

 つまり、単純に言えば、阿修羅だ。

 ・・・名前、にすぎだろ。
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