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1章、王国在住編

21、神との出会い、そして

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 ~アゲハ~

 パーティーの終盤で勇馬くんと北村くんがいないことにみんな、気がついた。

 パーティーは一時中止になっちゃって、みんなで2人を探した。特に私や園田くん、蓮ちゃんは一心不乱になってそこらじゅうを探した。

 ・・・勇馬くん、大丈夫かな。

 胸騒ぎがする。なんだか嫌な感じがする。

 玄関から大声がした。

「みんなすまねぇ、心配かけた」

 どうやら北村くんが会場に帰って来たようだ。

 でも、私はそれどころじゃなかった。

「ねぇ、勇馬くんの居場所知らない?」
「っ!・・・」

 亮平くんの表情が一瞬だけだけど険しくなった。

 その後の表情はなんとも哀しそうな顔だった。

 やめて、そんな顔。まるで、勇馬くんが・・・

 こんなの勝手な想像だった。

 でも神は非情だ。

「あいつは死んじまったよ。俺の目の前で・・・」



 ・・・え?

 勇馬くんが・・・死んだ?

「そんなわけ、ねぇだろうが!!!」

 後ろから大声がした。園田くんだった。

「あいつは死ぬことなんざ無えんだよ!それこそしつこいぐらいに生きやがる!」
「で、でも。これを見てくれよ。あいつの剣だ」
「そんなものそこら辺で拾って来たのでは?偽装なんていくらでもできるはずです」

 蓮ちゃんも抗議に加わった。

「そんなことする意味ないだろ!!少しは冷静になれよ!」

 その通りだった。でも・・・嘘だと思いたい。

 私はその場で泣き崩れた。園田くんと蓮ちゃんも泣いていた。

 王都にその泣き声が響いていた。

......................................................................

 えーと、ここどこ?

 俺?黒輝勇馬ですが何か?

 死んだんじゃないのって?はい、死にました。

 死ぬ直前に『HPが0になりました。情報体を分解いたします。』なんていうセリフが聞こえたし、間違いないと思う。・・・むしろ夢のようにも思えるな。

 いやー、この世界本当にRPGだなぁ~。天の声が本当に聞こえてくるなんてさぁー(笑)

 ・・・ここがあの世っていうのかー。なんだか予想してたのと違うなぁ。周りの色、白だったら異世界の教会みたいな感じなのに黒だし。

 しかもそこらにはガイコツが動き回っており、カラカラわらってる。うむ、やはりここは地獄だな。

 というか情報体ってなんのこと?

「そりゃあ、魂のことだぜ、黒輝勇馬ぁ」

 あっ、そうすか。ご親切にどうも。






 ・・・ん?

 いやいや、あんた誰!?さっきまで俺以外にいなかったでしょ!?ここに!?んで、なんで俺の名前知ってんの!?

「俺か?俺はなぁ、この世の神様だぜぇ!!拝め拝めぇぇぇぇ!!!!」

・・・こんなんが神?無いわー。

 だって考えて見てほしい。髪の毛は黒色の長髪でボサボサ、無精髭を生やしまくっており服は黒色の着物もどきを羽織っている。しかも着崩れてるし。

 本気で無いわー。

「無いわーってなんだてめぇ!!神は神なんだよ!!」

 ・・・なんでこんなハイテンションなのか?

「今までまともな役目で出てこれなかったんだよぉ!!!今まで散々ナレーションみたいな感じな登場してたからうんざりなんだよ!!なんだよ【~???~】って!!」

 よく分かんないことをおっしゃるなこの神(笑)

 てかこの神ってあれか?地獄の王様的な奴か?どうか俺を天国に連れてって。そしたら(笑)取るから。

「あながち間違ってねーがよ、俺魔神ロキだし」

 うわ、マジモンじゃん。邪神じゃん。人生最後の会話が邪神とって運が良いんだか悪いんだか。

 さりげなく名前言ってるし。

「・・・お前、生き帰りたく無いの?」

 帰りたいけど?でもお前邪神じゃん。どーせ、「お前の寿命を引き換えになぁ」とか言うじゃん。

「言わねーよ。なんの代償もいらねーよ。人間ごときがくれるもんなんかまずいらん」

 ?思ってた魔神と違う。御門違いか?

「てめぇの辞書に失礼ってないのか?」

 心読まれるんだからしゃーないじゃん。

「まあ良いや、おれがお前を生かす理由はなぁ」

 なあ?

「お前が面白いからだ!!」

 ・・・はい?

「俺はなぁ、面白いもんが大好物なのさ。異世界人って言うのすらおもしれぇのに、異世界人の中で一番おもしれぇ。見た目も相まって」

 ・・・見た目に関しては何も言うな。

「だからお前がこのまま生きていったらどうなるか楽しみなのさ。さぁ、お前の人生を俺に見せやがれ!!!」

 狂ってんな。

「ああ自覚してるよ、それは。でもそれも相まっての邪神だ。分かれよ」

 わかるか!

「とりあえずゴチャゴチャ言わず生き返れや!早く観たいんだよ!!!」

 俺の人生観戦を「テレビ早く観たいんだよ」みたいな感じで言わないでくれ!!!

「まあ、お前ら大好きな【転生特典】やるから。それで行ってくれ」

 ふむ、悪くない。だが、断る!!!

「はよ行けやー」

 子供か。つーか、あの世界には戻らせていただきますよ。アゲハ達のことも不安だし。

「えっ?そなの?」

 なに「ちょー意外なんですけどー」みたいな顔してくれてんだ。俺が断ったのはあくまで【転生特典】を受け取ること。戻らん!!とは言ってねーよ。

「ああ~、そういえばそうだなぁ。・・・でも【転生特典】あったらあっちで好き放題出来んぞ」

 どーせだしな。

 お前が俺を生き返らすのは面白そうだからだろ。だったら見せてやるよ。

 最底辺の実力しか持たない俺がのし上がるのを。そーゆーわけで早よ戻せ。

「あいよ・・・ふふふ、やっぱお前おもしれぇな。ちなみに戻って数分は攻撃されねぇように細工しといてやったぜ」

 そりゃあ、ありがてぇ。ちなみに元のスキルはあるよな。

「ああ、あるぜ。封印もな」

 封印はいらん。まあしゃあないか。

 体(魂)が黒く発光する。それと同時にどこかへと移動している感覚がした。

「あばよ。おもしれぇ人生、期待してんぜ」

 ああ、1つだけ言うの忘れてたぜ。

 いつか、てめぇもぶっ倒してやるよ。

「・・・はははは、やれるもんならやってみな!!俺は逃げも隠れもしねぇよ!!!」

 邪神はご機嫌そうに大爆笑する。

 こうして俺の二度目の異世界での人生が始まる。
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