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序章、異世界で召喚された王国編

3、故に我々はコンプレックスである

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 ~とある兵士~

 王城の食堂はいつも賑わいを持っている。
 それはたとえ疲れている兵士や文官であろうと関係がない。
 酒を飲んで笑ってマンガ肉にかぶりつき走って…
 そんな感じでアホな賑わいを持っている。

 召喚者、またの名を【上位世界人】達が来てからその風潮はさらに増長している。
 うわっほーい! とジュースがぶ飲み、肉を空中に放って食べたりする。
 リア充な盛り上がりを見せている。

 ちなみに【上位世界人】とは召喚された者たちが必ず持っていた称号のことを言う。
 彼らが元々住んでいた世界はこちらよりも次元が違う。
 それ故にこのような称号が彼らには与えられるのだ。

 話を戻すが私はそんな浮ついた風潮に嫌気がさしている。
 私はいつも厳粛な雰囲気が好きなのだ。
 決してこのような雰囲気を望んで、就職しているわけでは無い。

 騎士として歴が長く、まともに仕事をしている私としてはどうか静まってほしいものだ。
 そう思っていた。

 だが今日に限っては存外静かであった。

 むしろ食事すらもしていない。

 その理由は火を見ても明らかだ。
 食堂の隅に集まる四人。
 この方々の美貌が原因と言えよう。

 この方々もまた【上位世界人】の方々だ。
【上位世界人】の中には並外れな容姿を持つ者が非常に多い。
 それは明らかな事実であり、すでに求婚を彼らに申し込んでいる人間も少なくない。

 騎士団長ですらも彼らのメンバーの一人に求婚していた。
 確か『アイザカ』と呼ばれる【賢者】であったはずだ。
 彼女は年齢に合わないような色香を持ち得ており、騎士団長は熱心にアピールしている。
 私は団長の近衛故応援している。
 頑張ってください。
 …もっとも最近なんだか変な感じになっていましたが。

 それはともかく隅の四人も容貌があまりにも綺麗なのだ。

 一人は高身長な黒髪の美丈夫だ。
 筋肉質ではなくすらっとしたスタイルであり、すでにファンも多い。
 名前は確か『レン・ササキ』だったはずだ。

 その横に座るのは小さな男の子だ。
 しかし可愛らしい出で立ちは男ですらも母性を生やすほど。
 私もこの前飴ちゃんをあげてしまいました。
 名前は『ランポ・ソノダ』

 ササキの前に座るのは天真爛漫な女の子だ。
 物腰柔らかい印象を持てる相手であり、かつ太陽のように周囲に元気を分け与える。
 そんなお方だ。
 名前は『アゲハ・ナナミ』

 そしてその横に座るお方。
 この方が一番凄いお方だ。

 凄い、では稚拙な表現かもしれないが仕方がない。
 言葉では物言いできないようなお方なのだ。
 名前は『ユーマ・クロキ』。
 後世伝説になるであろうお方だ。

 曰く、法律を一から十まですぐに見直し改善した。と。
 曰く、宰相でも判断に悩むような案件を即決し、それが見事に当たった。と。
 曰く、真の【上位世界人】の中心である。と。
 曰く、武術は技術だけならば騎士団長も唸らせるレベルである。と。
 曰く、城の老若男女を問わず告白千人斬りした。と。
 曰く、風の如く速く動ける。と。

 どこまで誇張された話なのかは分からないが、それでも全てが真実であるようにも思える。
 彼にはそれだけの素質がある。

 しかし見た目が女だ。
 一応男だ。
 しかし女だ。
 見た目が。

 しかも超絶美女だ。
 逆になぜこちらの性別に生まれてしまったのかがわからない。

 というか四人の中でナナミ以外全員が何かしら相手を勘違いさせるような容姿なのだ。
 ソノダは成人しているのに子供のようだし、ササキは女の子なのに男に見えるし、クロキなど以ての外。

 ともかくあそこは普通の見た目の人物が一人しかいないという異常な区分だ。
 しかし誰もが見惚れている。
 性別の壁や年齢の壁を軽く超えさせてしまうような容姿なので仕方がないとも言えるのだが。

 まあ、私も『クロキファンクラブ』に入っているので人のことは言えない。
 …うむ。今日もあのお方は綺麗だ。

 私はそう頷いた。

 ..................................................

 ぶるるっ!

 俺の背筋に寒気が走る!
 なんかさらに俺の名誉が汚されたような気がする!

「どーせまた年取った男に惚れられたんだろ。気の毒な」

「だよね。勇馬君は同性に好かれて可哀想だよ」

 物騒なことを言うな!

 …と言いたいところだが、大体事実な上にそのことを付き合いの長い園田、蓮はよく知っていると分かっている。
 だから俺は開きかけた口を必死に御して閉じる。

 だが瞬時、再度俺は口を開けた。

「いや。お前らも人のことは言えねぇだろ」

「「(バッ!!)」」

 二人合わせて俺からのジト目から逃れる!

 この二人は俺と同様、酷いコンプレックス持ちだ。

 園田は17というこの中で最年長の男なのだが見た目は一番幼い。
 小学生でも十分に通じるレベルで、ファミレスでも店員さんからお子様限定メニューを勧めてくるレベル。
 その度に園田はキレる。
 ちなみにその度に俺は心の中でほくそ笑む。

 一方蓮だが見た目が高身長、スラリとしたイケメンなのだが中身が完全な乙女。
 女子が好意MAXで詰め寄ってくる度にワタワタする辺り、素晴らしく乙女だ。
 趣味はぬいぐるみ集めとファンシーグッズ集め、そして小道具集め。
 化粧をすることもかなり好きだ。

 そんな二人なわけで俺と初めて会った時に一気統合。
 初対面ならば必ず互いに間違い会うところを、涙ぐみながら「「「同士よ!!」」」と抱き合ったことを忘れない。

 そんな中唯一のイレギュラー、アゲハはなぜこの中に混ざれたのか。
 その答えはただ一つ。
 そんなことを全く気にしない人間だったからだ。
 一目会ったときに俺たちの全てを理解した人間だったからだ。

 そんなわけで極端に容姿がバラバラになりながらも美男美女ばかりが集まったわけだ。
 全国的に見てもこの集まりはかなりのもの可笑しさだと理解している。

 俺はその出会いに感謝しても仕切れないだろう。
 見た目に惑わされず、家を見ても深追いはしない。

「さてと! みんな明日どうしたい?」

 アゲハが多少話しづらくなった空気を断つ。
 にこやかな雰囲気をして彼女は言う。

「俺はぬいぐるみ屋」

「それには私も賛成するよ」

「勇馬くん本当に好きだよね。ぬいぐるみ」

「つーか、もふもふなものがすきだよな。お前ら」

「「…似合わないとでも?」」

「「いいえー。ニアウニアウー」」

 たしかに蓮は男みたいな見た目だが、酷いじゃないか!

「たしかに勇馬君は男だけど、それとこれじゃ違うよ!」

「おい待て、蓮! 俺のことを気違いみたいに言うな! お前のこと言ってんだろ。こいつら!」

「え? 勇馬君のことに決まってるでしょ? 性別男で気持ちワルって感じでしょ?」

「いやいや。高身長なイケメンが巨大ミッ◯ー抱いてみろ。…どうだ? 気持ち悪いだろ?」

「…よし、勇馬君。表に出て、ね」

「…ああ。蓮。その喧嘩買おうじゃないか」

「「止まれぇええーーー!!!」」

 この後、めちゃくちゃ後日のショッピングについて語り合った。
 残念ながら詳細は詳しくは決まらなかった。
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