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第四計画
もともと嫌われていたので3
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林檎の木に囲まれた東屋はこじんまりとしていて可愛らしい。屋根は白いアーチを描いており、支柱には蔦が自由に這い白い花を咲かせていた。
王家の私的な庭園に散策に訪れる人もいない。
木漏れ日も眩しい東屋のソファに座るアレクの腿の上にジュリアは跨っていた。
「葡萄酒をとってくれないか」
ジュリアは体を捻ると、隘路に収まった肉棒はぴくりと動いた。スカートの中に隠されているとはいえ脚は露になっている。
ウズウズする心地よさを感じながら、葡萄酒の入っている杯を手に取りアレクに渡す。
「ありがとう」
アレクは杯をあおってジュリアの頤に指を置いた。唇を開いて、の合図だ。
「アレク……」
とがめる視線を送っても無駄で、重なった唇から葡萄酒が流し込まれる。ジュリアが酒に弱いと知ってから、アレクはこうやって飲ませてくるようになった。
唇の端から零れた葡萄酒が首筋を伝って、モスリンドレスの胸元に入っていく。
「拭こう」
肩からドレスが胸もとまで落とされた。白く形のよい乳房が姿を現す。白く滑らかな肌には、アレクがつけた幾つもの赤い痕がついていて、その中を葡萄酒が一筋流れていく。
アレクの舌がそれを美味しそうに拭うと、ジュリアの腰がびくっと動いた。
「動かない約束だろう」
「動かしていないわ」
強がって反論しても、酒で火照り始めた体はコントロールから遠ざかっていく。
「勘違いして悪かったね」
アレクの指がひとつずつ赤い痕をなぞり、外気に晒された乳首は硬さをまして立ち上がった。
「舐めて欲しいのかな」
「ちがうわ」
アレクは少し時間ができればジュリアを抱くようになった。執務室、寝室、東屋、ジュリアをそばから離さないアレクを咎める人物はいない。
時間も所もかまわずに抱かれたジュリアの体は、快楽に敏感になっていた。
「そんなわけないわ。もう謁見の時間です」
午後の謁見が始まる。ジュリアは時間を確認してもらいたくて、アレクの懐中時計に触れようとした。
そっとその手を止められる。
「ここでのんびりしていたいな」
「だめ」
「厳しいね」
「政務は大事です」
王の名代として、午前も午後もアレクが謁見をしていた。彼はふぅと息を吐きジュリアの胸を捏ねるようにして揉みしだき始める。
「なら、動いてくれるかい」
暗に吐精しないと戻らないと言われて、ジュリアは息を呑んでアレクの悪戯っぽい目を見つめ返した。
ここ一週間で彼の側近はジュリアにまで政務の時間を伝えてくるようになった。アレクが政の場に来ないかもしれないと側近にわざと思わせているのだ。
ジュリアは観念して、腰を浮かして落とした。柔襞に包まれ一体化していた杭の傘が隘路を刺激すると、静まっていた快楽が目を覚ます。
「あっ」
「いい声だね」
アレクは一方の乳房を口に含み、もう片方は手で捏ね始める。痛いほどの熱が蠢きだして、ジュリアは彼の肩を掴むと腰を動かしはじめた。
「淫らにふける貴方も美しいね」
「はやく、達して……」
この体勢は体力が必要で、すぐに限界がくるジュリアはアレクにお願いする。すると彼は乳首に歯を立てた。
「ひ……っ、あっ……っ」
「貴女はここが弱い」
アレクは指で弾力ある蕾を押しつぶしながら、ジュリアの唇を塞いだ。ねっとりと口腔の中を舐られて、体の中で行き場を探す熱がビクビクと肉茎を締め上げる。
「苛めているわけじゃないんだ」
アレクは強すぎる悦楽に動きを止めたジュリアの腰を掴んで、下から容赦なく突き上げ始めた。
「貴女が、私の、ものだと」
切っ先で奥を擦られると、螺旋階段を登るように快楽が爪先にまで熱を運ぶ。ジュリアはアレクの頬を包み込んで口づけを受け入れる。
「認めるまでは、体に先に覚えて貰わなくては」
「いや、あっ……っ……あっん、あ」
一段と突き上げられて真っ白に弾けたジュリアは体を弛緩させる。
アレクの熱を覚えてしまった肌は、彼に触れて貰えるだけで喜んでしまう。
体が繋がっていない時でも、時間の許す限りそばにいてくれて、詳しく王宮のことを教えてくれた。その説明の丁寧さと優しさに、心はどんどん彼に惹かれていった。
アレクに嫌われているかもしれない。そんな思いは、ジュリアの中でかなり小さくなっていた。
ジュリアがアレクと謁見室へ一緒に行くのを拒んだのは、一人の時間が欲しかったからだ。
アレクは渋ったが、乱れたドレスを見て、この林檎園なら良いと言ってくれた。
ジュリアはなんとか整えたドレスでさほど広くない林檎園の中を歩く。小さくついている白い花が全て赤い林檎になるのだ。その美しさを想像すると、マルヴァーン・ホールが急に恋しくなった。
遠くまで連なる丘や、季節によって表情を変える木々、沈む太陽が緋色に染める空と草原。整えられた美しさとは違う風景。
潤んできた目にジュリアは顔を顰める。感傷に浸るなんて自分らしくない。
王都にきてたった十日ほど。目まぐるしく変わってしまった環境に疲れが出てきているのだと、自分に言い聞かせる。
「お嬢さん、大丈夫かい」
ジュリアが振り向くと麦わら帽子に白いシャツ、茶色いズボンといういで立ちの、白髪の男性が立っていた。
目元に刻まれた笑い皺の深さのせいか、警戒すべき人物という印象はまったく受けない。
「ごめんなさい。人がいらっしゃるとは思わなくて」
「気にしないでくれ。私はしがない庭師だよ」
ジュリアは長身の男性を見上げる。雇われている庭師というには上品な物腰と言葉遣いだ。
ここが王家の私的な空間なだけに、万が一にも、高貴な血筋かもしれないとジュリアは膝を折った。
「お嬢さん、いいんだよ」
にこりと笑った笑顔に、知っている面影が重なる。
「もしや、私のジャムをおいしいと言ってくれたお嬢さんかな」
「あ……」
毎朝、出される林檎ジャムは庭師が作っているとアレクが言っていた。
「では、あなたが……。毎朝、とてもおいしくいただいております」
「そうか。なかなかおいしいと言ってもらえなくてね。嬉しい限りだよ」
庭師は満面の笑みを浮かべて顎を撫でた。その子供のような無邪気な笑顔にジュリアも釣られて微笑む。
「おや、少し顔色が悪いね。あの王子に連れまわされているそうじゃないか」
ジュリアは頬を赤く染めた。初対面の人にまでそんなことが知られているとは恥ずかしい。
「あれもこれまで随分と頑張ったから、今は多少目を瞑られている。貴女にとっては災難だったかもしれないが。想い人の為だったといわれれば何もいえないからね」
想い人という言葉にジュリアは顔を上げる。過去、王子であるアレクに愛人がいたのは知っていた。だが誰かの口から聞くのはショックだった。
表情をこわばらせたジュリアに彼は笑う。
「ああ、懐中時計の蓋に肖像を描かせる程にご執心だよ。もう何年かな、6年、いや、7年? まぁとにかく長い期間だったことは違いない」
もしかして自分が彼の想い人かも、という甘い期待を束の間でも抱いてしまったせいで、心臓にナイフが刺さったような痛みが起きる。
ジュリアがアレクに初めて会ったのは5年前だ。2年も違う。
「7年……?」
縋るように呟いた頬が引きつった。
王家にはお抱えがいるだろうが、懐中時計の蓋に肖像を描かせるには職人の技が必要だ。それほどまでに、想っている人がアレクにはいる。
ジュリアの耳の奥で羽虫が飛ぶような音がしだした。
「毎年、変えていたからね。事情を知っている人は呆れていたよ」
意志の力で浮かべている笑顔がぎこちなくなる。東屋で情を交わしながら懐中時計を触ろうとしてアレクに止められた。
そこには、彼が7年も想う女性がいたのだ。
そんな時計を身に付けながら、アレクはジュリアを抱いた。
「――今も、描かせているのですか」
「ああ。呆れるだろう?」
茶目っ気たっぷりに片目を瞑ってきた庭師に、ジュリアは「本当に」と微笑んだ。
女主人として館を切り盛りしていたお陰で、ショックを受けても逃げ出さない気力は培われていた。
けれど、これ以上は無理だ。ジュリアは泣きそうな顔を隠すために優雅にお辞儀をする。
「日に当たりすぎたせいか、頭が痛いので失礼させていただいても良いでしょうか」
「顔色が悪いと思っていたよ。すぐに人を呼ぼう」
「いえ、歩けますわ。ありがとうございます」
ジュリアは庭師に背を向けた。彼の制止する声を振り払うようにドレスの裾をつまみ上げて走る。
アレクに心を許しかけていた馬鹿な自分に吐き気がした。
王家の私的な庭園に散策に訪れる人もいない。
木漏れ日も眩しい東屋のソファに座るアレクの腿の上にジュリアは跨っていた。
「葡萄酒をとってくれないか」
ジュリアは体を捻ると、隘路に収まった肉棒はぴくりと動いた。スカートの中に隠されているとはいえ脚は露になっている。
ウズウズする心地よさを感じながら、葡萄酒の入っている杯を手に取りアレクに渡す。
「ありがとう」
アレクは杯をあおってジュリアの頤に指を置いた。唇を開いて、の合図だ。
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とがめる視線を送っても無駄で、重なった唇から葡萄酒が流し込まれる。ジュリアが酒に弱いと知ってから、アレクはこうやって飲ませてくるようになった。
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アレクの舌がそれを美味しそうに拭うと、ジュリアの腰がびくっと動いた。
「動かない約束だろう」
「動かしていないわ」
強がって反論しても、酒で火照り始めた体はコントロールから遠ざかっていく。
「勘違いして悪かったね」
アレクの指がひとつずつ赤い痕をなぞり、外気に晒された乳首は硬さをまして立ち上がった。
「舐めて欲しいのかな」
「ちがうわ」
アレクは少し時間ができればジュリアを抱くようになった。執務室、寝室、東屋、ジュリアをそばから離さないアレクを咎める人物はいない。
時間も所もかまわずに抱かれたジュリアの体は、快楽に敏感になっていた。
「そんなわけないわ。もう謁見の時間です」
午後の謁見が始まる。ジュリアは時間を確認してもらいたくて、アレクの懐中時計に触れようとした。
そっとその手を止められる。
「ここでのんびりしていたいな」
「だめ」
「厳しいね」
「政務は大事です」
王の名代として、午前も午後もアレクが謁見をしていた。彼はふぅと息を吐きジュリアの胸を捏ねるようにして揉みしだき始める。
「なら、動いてくれるかい」
暗に吐精しないと戻らないと言われて、ジュリアは息を呑んでアレクの悪戯っぽい目を見つめ返した。
ここ一週間で彼の側近はジュリアにまで政務の時間を伝えてくるようになった。アレクが政の場に来ないかもしれないと側近にわざと思わせているのだ。
ジュリアは観念して、腰を浮かして落とした。柔襞に包まれ一体化していた杭の傘が隘路を刺激すると、静まっていた快楽が目を覚ます。
「あっ」
「いい声だね」
アレクは一方の乳房を口に含み、もう片方は手で捏ね始める。痛いほどの熱が蠢きだして、ジュリアは彼の肩を掴むと腰を動かしはじめた。
「淫らにふける貴方も美しいね」
「はやく、達して……」
この体勢は体力が必要で、すぐに限界がくるジュリアはアレクにお願いする。すると彼は乳首に歯を立てた。
「ひ……っ、あっ……っ」
「貴女はここが弱い」
アレクは指で弾力ある蕾を押しつぶしながら、ジュリアの唇を塞いだ。ねっとりと口腔の中を舐られて、体の中で行き場を探す熱がビクビクと肉茎を締め上げる。
「苛めているわけじゃないんだ」
アレクは強すぎる悦楽に動きを止めたジュリアの腰を掴んで、下から容赦なく突き上げ始めた。
「貴女が、私の、ものだと」
切っ先で奥を擦られると、螺旋階段を登るように快楽が爪先にまで熱を運ぶ。ジュリアはアレクの頬を包み込んで口づけを受け入れる。
「認めるまでは、体に先に覚えて貰わなくては」
「いや、あっ……っ……あっん、あ」
一段と突き上げられて真っ白に弾けたジュリアは体を弛緩させる。
アレクの熱を覚えてしまった肌は、彼に触れて貰えるだけで喜んでしまう。
体が繋がっていない時でも、時間の許す限りそばにいてくれて、詳しく王宮のことを教えてくれた。その説明の丁寧さと優しさに、心はどんどん彼に惹かれていった。
アレクに嫌われているかもしれない。そんな思いは、ジュリアの中でかなり小さくなっていた。
ジュリアがアレクと謁見室へ一緒に行くのを拒んだのは、一人の時間が欲しかったからだ。
アレクは渋ったが、乱れたドレスを見て、この林檎園なら良いと言ってくれた。
ジュリアはなんとか整えたドレスでさほど広くない林檎園の中を歩く。小さくついている白い花が全て赤い林檎になるのだ。その美しさを想像すると、マルヴァーン・ホールが急に恋しくなった。
遠くまで連なる丘や、季節によって表情を変える木々、沈む太陽が緋色に染める空と草原。整えられた美しさとは違う風景。
潤んできた目にジュリアは顔を顰める。感傷に浸るなんて自分らしくない。
王都にきてたった十日ほど。目まぐるしく変わってしまった環境に疲れが出てきているのだと、自分に言い聞かせる。
「お嬢さん、大丈夫かい」
ジュリアが振り向くと麦わら帽子に白いシャツ、茶色いズボンといういで立ちの、白髪の男性が立っていた。
目元に刻まれた笑い皺の深さのせいか、警戒すべき人物という印象はまったく受けない。
「ごめんなさい。人がいらっしゃるとは思わなくて」
「気にしないでくれ。私はしがない庭師だよ」
ジュリアは長身の男性を見上げる。雇われている庭師というには上品な物腰と言葉遣いだ。
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「お嬢さん、いいんだよ」
にこりと笑った笑顔に、知っている面影が重なる。
「もしや、私のジャムをおいしいと言ってくれたお嬢さんかな」
「あ……」
毎朝、出される林檎ジャムは庭師が作っているとアレクが言っていた。
「では、あなたが……。毎朝、とてもおいしくいただいております」
「そうか。なかなかおいしいと言ってもらえなくてね。嬉しい限りだよ」
庭師は満面の笑みを浮かべて顎を撫でた。その子供のような無邪気な笑顔にジュリアも釣られて微笑む。
「おや、少し顔色が悪いね。あの王子に連れまわされているそうじゃないか」
ジュリアは頬を赤く染めた。初対面の人にまでそんなことが知られているとは恥ずかしい。
「あれもこれまで随分と頑張ったから、今は多少目を瞑られている。貴女にとっては災難だったかもしれないが。想い人の為だったといわれれば何もいえないからね」
想い人という言葉にジュリアは顔を上げる。過去、王子であるアレクに愛人がいたのは知っていた。だが誰かの口から聞くのはショックだった。
表情をこわばらせたジュリアに彼は笑う。
「ああ、懐中時計の蓋に肖像を描かせる程にご執心だよ。もう何年かな、6年、いや、7年? まぁとにかく長い期間だったことは違いない」
もしかして自分が彼の想い人かも、という甘い期待を束の間でも抱いてしまったせいで、心臓にナイフが刺さったような痛みが起きる。
ジュリアがアレクに初めて会ったのは5年前だ。2年も違う。
「7年……?」
縋るように呟いた頬が引きつった。
王家にはお抱えがいるだろうが、懐中時計の蓋に肖像を描かせるには職人の技が必要だ。それほどまでに、想っている人がアレクにはいる。
ジュリアの耳の奥で羽虫が飛ぶような音がしだした。
「毎年、変えていたからね。事情を知っている人は呆れていたよ」
意志の力で浮かべている笑顔がぎこちなくなる。東屋で情を交わしながら懐中時計を触ろうとしてアレクに止められた。
そこには、彼が7年も想う女性がいたのだ。
そんな時計を身に付けながら、アレクはジュリアを抱いた。
「――今も、描かせているのですか」
「ああ。呆れるだろう?」
茶目っ気たっぷりに片目を瞑ってきた庭師に、ジュリアは「本当に」と微笑んだ。
女主人として館を切り盛りしていたお陰で、ショックを受けても逃げ出さない気力は培われていた。
けれど、これ以上は無理だ。ジュリアは泣きそうな顔を隠すために優雅にお辞儀をする。
「日に当たりすぎたせいか、頭が痛いので失礼させていただいても良いでしょうか」
「顔色が悪いと思っていたよ。すぐに人を呼ぼう」
「いえ、歩けますわ。ありがとうございます」
ジュリアは庭師に背を向けた。彼の制止する声を振り払うようにドレスの裾をつまみ上げて走る。
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