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第二計画
カーテンドレスで会いましょう 2
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紳士方の思い通りにはならない。
ジュリアは大きく深呼吸をした後、応接室の扉を叩いた。深緑色の生地のごわごわしたドレスは体の、眼鏡は心の鎧でもある。
結婚がもたらすのは、夫への服従と子を産むという義務。しかも相手は王位継承権第二位の人物だ。それ以上の忍耐が求められるだろう。
いつも通り、可愛くない態度をとればきっと問題はない。相手は何かが違うと感じるだろう。
この美しい長閑な田舎で自然を楽しむのと対極の毎日なんて望まない。ジュリアは自分が人生で臨むものを数え上げながら中からの返事を待った。だが、しんと静まったままだ。
小首を傾げながら、扉をそっと押し開くと、扉が中から開かれた。
「あ……ッ」
扉の取っ手を握ったままだったせいで体勢が前のめりになった。転びそうになった身体を逞しい腕に支えられ、そのまま倒れ込んでしまう。
「失礼。ノックの音が小さかったもので。お怪我は?」
「王子、殿下」
こともあろうにアレクに倒れ込んでしまった。部屋の中にハリーの姿を探すがない。
慌てて自分の足で立ち、振り返った扉はアレクによって閉められた。
「アレクと呼んでくれ。ジュリアと呼んでもいいかな?」
まだアレクの腕を掴んだままだったジュリアは慌てて手を背中の後ろに回した。まだ、指先が微かに震えるのが抑えられない。
ハリーと挨拶のキスをする程度には、男性と接するのには慣れているはずなのに、まったく落ち着かない。ジュリアはなんとか気持ちを奮い立たせる。
「問題ありませんわ、殿下。大変失礼いたしました」
「アレクだ。ジュリア」
とびきりの笑顔を向けられれば、頷くしかない。早くもペースを乱され始めている。
内心は焦りながらも、ジュリアは澄ました顔でテーブルの上にあるカップをみた。
「アレク……熱い紅茶のお代わりはいかがですか」
彼は顔を横に振って、じっとジュリアの顔を見つめてくる。眼鏡があって良かったと思っていると、彼の手が伸びてきてすっと外してしまった。
「何をなさるの!」
取り返そうとすると、アレクは胸のポケットにそれをしまう。とても手で触れる事のできる場所ではない。
「貴女が隠しているものを、暴きたくなって」
アレクは悪びれもせず微笑んでいる。
ジュリアはまばたきをしながら、自分を落ち着かせるように大丈夫だと言い聞かせる。
「何も、隠してはいませんわ、殿下」
鎧をまとっているだけ。ジュリアはぎゅっと両手を握りしめて微笑する。アレクは唇の端を持ちあげると、両手をジュリアの背後の扉についた。
「……っ!」
腕の檻の中に閉じ込められた上に扉を押さえられてしまい、ジュリアの動揺が最高潮になる。
「アレクだ」
琥珀色の目から顔を逸らすと負ける気がした。ジュリアは怒りで気持ちをかき集めて、アレクを睨みつける。
「まるで脅しのようだわ」
「綺麗なアイスブルーの目だ。隠すのはもったいない。……私の貴女への興味をさらに高めようとしてくれているのなら大歓迎だ。そういうのは嫌いじゃない」
ジュリアの牽制など意に介さずじっと覗き込んできた。琥珀色の目はきらきらと悪戯っぽく光っていて、見惚れてしまう程に素敵だ。
「何を仰りたいのか、まったくわかりません」
「他の男をそうやって遠ざけてくれていたのなら、また幸せに思う」
このドレスの意味を気づかれている、とジュリアは焦った。
領地の話をした上にさえない恰好をしているのに、アレクは気にする様子がないことにジュリアはようやく気づいた。
「これは私の趣味ですわ。殿下好みの洗練された美しい女性なら、都会に多くいらっしゃるはず」
「それは、貴方好みの男性は、田舎にいるということかな」
唖然としてしまう。まるでジュリアが男漁りをしているようにも聞こえなくもない。
「どういう、意味ですの」
「そういう意味だよ」
そんな暇なんてどこにもなかった。思わずジュリアが振り上げた手をアレクは掴んで引き寄せた。
「叩かれて喜ぶ趣味は無くてね」
そう言ったアレクに唇をいきなり塞がれてジュリアの手から力が抜ける。見開いた目がアレクの称賛のまなざしを捉えた。ぶるっと体が震える。
「甘くて柔らかい、うぶな唇だ」
アレクの言葉にジュリアは耳まで赤くなる。ちょうど良いことに後ろは扉だ。
はしたないけれど足で蹴れば誰かが駆けつけてくれる。
実行に移す前にアレクの肉厚の舌が唇を割って押し込まれてきた。わけのわからないまま受け入れると、その艶めかしさに下腹部にジンとした痺れが走る。
「……や……ぁっ」
熱い舌が蠢く淫らな感触はショックで、逃げようとする舌は絡み取られ、口腔がさらに深く侵される。
口づけから逃れようと夢中になっていると、後ろ髪のシニョンを止めているピンが抜かれ始めた。
「綺麗な髪だ」
髪を解かれてしまえば、さすがに何かがあったと勘繰られてしまう。ジュリアは力を振り絞ってアレクを押し返そうとするが、ビクともしない。
角度を変え口づけしながらも、彼の指は器用にピンを抜き床に落としていく。その慣れた扱いに胸がツンと痛くなる。
「髪は下した方がずっといい」
肩口にはらはらと髪が落ちていく。蜂蜜色の柔らかな髪の感触を楽しむように、彼は中に手を入れて広げた。
背筋を登って来た感覚に、ジュリアは身を捩る。
「ア、アレク、お、ねがい。止めて……」
「そんな声でお願いされると、聞いてしまいそうになるね」
ジュリアの甘く蕩けた声に、アレクはゆっくりと笑みを広げた。
濡れた唇を甘噛みされると体中に甘い痛みが広がり、頭がくらくらした。ジュリアは崩れ落ちそうな体を支えるために、無意識にまた彼の腕を掴んでいた。
「蜂蜜色の髪も素晴らしい」
アレクはジュリアの後頭部を手で支え口づけをまた濃くする。唾液を流し込まれながら彼に舌を絡み取られると、息苦しさに眦に涙が浮かんだ。
「その独創的なドレスの下には、どんな美しい花が隠れているのか」
ジュリアがさすがに体を強張らせると、アレクは体をゆっくりと離した。
間近で見た彼の唇が濡れていて、ややあって、自分の唇も濡れていることに気づく。彼と口づけをしていた証拠だ。カッと頬が赤くなる。
「さて、結婚してもらえますか、ジュリア嬢」
アレクの低く官能的な声を振り払うように、ジュリアは声を荒げる。
「あ、貴方、頭がおかしいの? こんなことをされて、承諾する人が」
第一、ハリーから正式に求婚を受けると連絡したから、アレクはここに来たはずなのだ。
ジュリアが非難を続けようとすると今度は息が詰まるほどに強く抱きしめられた。
「頭ならおかしいのかもしれない。やっとだからね。それなのに……」
抱擁されながら紡がれるアレクの言葉の切なさにジュリアはまばたきを忘れる。まるで、ずっと恋い焦がれていたような響きだ。
『野暮な……、……彼女を遠ざけてくれ。――目障りだ』
初めて会った時、廊下で聞いた彼の言葉を思い出し、その温度差に違和感を覚えた。
……王子は野暮ったい令嬢が嫌いなのではないの?
ジュリアの恰好はお世辞にも洗練されていない。しかしアレクはそれを一貫して気にしている様子はないのだ。
「結婚してくれるかい?」
ジュリアは注意深く言葉を選ぶ。
「兄の命の恩人でもある殿下ですもの。こんな私で良ければお受けいたします」
結婚せずにすむ計画を止めるつもりはないのに、嘘を付いている事に胸が痛んだ。
亡くなった父親の悲しむ顔が見える。マルヴァーンの家名にも傷をつけてしまう。
ここにきて気持ちが揺らいできたジュリアは彼の腕の中から窓の外に見える青い空を見た。この空を見続けたいのは、幼いわがままなのだという事実が身に迫ってくる。
弱々しくアレクを見上げると、彼の顔に苦悩が浮かんでいた。
「まず、ハリーと私たちの結婚は関係がない」
きっぱりとアレクは言って、力強く言い添えた。
「それに、こんな私、ではない。知性と教養を兼ね備えた強い女性だ。我が妃にふさわしい」
口づけの高揚がスッと引いた。
アレクが結婚相手に必要としているのはベッドを共にする美しい容姿を持つ愛人ではない。王子の妃としてふさわしい血筋と感覚を持つ、申し分のない貴族令嬢なのだ。
彼の熱いまなざしに甘い期待を抱きはじめていたことに気づいて、恥ずかしくなった。
領地管理の話や、慈善活動の話をしたのは良くなかった。アレクに妃として役割を果たせる娘だと印象付けてしまったはずだ。
方法を、間違ってしまった。
「ありがとう、ございます……」
今の素敵な口づけも、アレクにとっては数あるもののひとつ。
ややこしい感情に巻き込まれていることにジュリアは硬く目を瞑った。
……こういうのが、嫌なの。
抱き締めたまま離してくれないアレクの腕の中で、ジュリアはなぜかこみあげてきた涙をこらえた。
ジュリアは大きく深呼吸をした後、応接室の扉を叩いた。深緑色の生地のごわごわしたドレスは体の、眼鏡は心の鎧でもある。
結婚がもたらすのは、夫への服従と子を産むという義務。しかも相手は王位継承権第二位の人物だ。それ以上の忍耐が求められるだろう。
いつも通り、可愛くない態度をとればきっと問題はない。相手は何かが違うと感じるだろう。
この美しい長閑な田舎で自然を楽しむのと対極の毎日なんて望まない。ジュリアは自分が人生で臨むものを数え上げながら中からの返事を待った。だが、しんと静まったままだ。
小首を傾げながら、扉をそっと押し開くと、扉が中から開かれた。
「あ……ッ」
扉の取っ手を握ったままだったせいで体勢が前のめりになった。転びそうになった身体を逞しい腕に支えられ、そのまま倒れ込んでしまう。
「失礼。ノックの音が小さかったもので。お怪我は?」
「王子、殿下」
こともあろうにアレクに倒れ込んでしまった。部屋の中にハリーの姿を探すがない。
慌てて自分の足で立ち、振り返った扉はアレクによって閉められた。
「アレクと呼んでくれ。ジュリアと呼んでもいいかな?」
まだアレクの腕を掴んだままだったジュリアは慌てて手を背中の後ろに回した。まだ、指先が微かに震えるのが抑えられない。
ハリーと挨拶のキスをする程度には、男性と接するのには慣れているはずなのに、まったく落ち着かない。ジュリアはなんとか気持ちを奮い立たせる。
「問題ありませんわ、殿下。大変失礼いたしました」
「アレクだ。ジュリア」
とびきりの笑顔を向けられれば、頷くしかない。早くもペースを乱され始めている。
内心は焦りながらも、ジュリアは澄ました顔でテーブルの上にあるカップをみた。
「アレク……熱い紅茶のお代わりはいかがですか」
彼は顔を横に振って、じっとジュリアの顔を見つめてくる。眼鏡があって良かったと思っていると、彼の手が伸びてきてすっと外してしまった。
「何をなさるの!」
取り返そうとすると、アレクは胸のポケットにそれをしまう。とても手で触れる事のできる場所ではない。
「貴女が隠しているものを、暴きたくなって」
アレクは悪びれもせず微笑んでいる。
ジュリアはまばたきをしながら、自分を落ち着かせるように大丈夫だと言い聞かせる。
「何も、隠してはいませんわ、殿下」
鎧をまとっているだけ。ジュリアはぎゅっと両手を握りしめて微笑する。アレクは唇の端を持ちあげると、両手をジュリアの背後の扉についた。
「……っ!」
腕の檻の中に閉じ込められた上に扉を押さえられてしまい、ジュリアの動揺が最高潮になる。
「アレクだ」
琥珀色の目から顔を逸らすと負ける気がした。ジュリアは怒りで気持ちをかき集めて、アレクを睨みつける。
「まるで脅しのようだわ」
「綺麗なアイスブルーの目だ。隠すのはもったいない。……私の貴女への興味をさらに高めようとしてくれているのなら大歓迎だ。そういうのは嫌いじゃない」
ジュリアの牽制など意に介さずじっと覗き込んできた。琥珀色の目はきらきらと悪戯っぽく光っていて、見惚れてしまう程に素敵だ。
「何を仰りたいのか、まったくわかりません」
「他の男をそうやって遠ざけてくれていたのなら、また幸せに思う」
このドレスの意味を気づかれている、とジュリアは焦った。
領地の話をした上にさえない恰好をしているのに、アレクは気にする様子がないことにジュリアはようやく気づいた。
「これは私の趣味ですわ。殿下好みの洗練された美しい女性なら、都会に多くいらっしゃるはず」
「それは、貴方好みの男性は、田舎にいるということかな」
唖然としてしまう。まるでジュリアが男漁りをしているようにも聞こえなくもない。
「どういう、意味ですの」
「そういう意味だよ」
そんな暇なんてどこにもなかった。思わずジュリアが振り上げた手をアレクは掴んで引き寄せた。
「叩かれて喜ぶ趣味は無くてね」
そう言ったアレクに唇をいきなり塞がれてジュリアの手から力が抜ける。見開いた目がアレクの称賛のまなざしを捉えた。ぶるっと体が震える。
「甘くて柔らかい、うぶな唇だ」
アレクの言葉にジュリアは耳まで赤くなる。ちょうど良いことに後ろは扉だ。
はしたないけれど足で蹴れば誰かが駆けつけてくれる。
実行に移す前にアレクの肉厚の舌が唇を割って押し込まれてきた。わけのわからないまま受け入れると、その艶めかしさに下腹部にジンとした痺れが走る。
「……や……ぁっ」
熱い舌が蠢く淫らな感触はショックで、逃げようとする舌は絡み取られ、口腔がさらに深く侵される。
口づけから逃れようと夢中になっていると、後ろ髪のシニョンを止めているピンが抜かれ始めた。
「綺麗な髪だ」
髪を解かれてしまえば、さすがに何かがあったと勘繰られてしまう。ジュリアは力を振り絞ってアレクを押し返そうとするが、ビクともしない。
角度を変え口づけしながらも、彼の指は器用にピンを抜き床に落としていく。その慣れた扱いに胸がツンと痛くなる。
「髪は下した方がずっといい」
肩口にはらはらと髪が落ちていく。蜂蜜色の柔らかな髪の感触を楽しむように、彼は中に手を入れて広げた。
背筋を登って来た感覚に、ジュリアは身を捩る。
「ア、アレク、お、ねがい。止めて……」
「そんな声でお願いされると、聞いてしまいそうになるね」
ジュリアの甘く蕩けた声に、アレクはゆっくりと笑みを広げた。
濡れた唇を甘噛みされると体中に甘い痛みが広がり、頭がくらくらした。ジュリアは崩れ落ちそうな体を支えるために、無意識にまた彼の腕を掴んでいた。
「蜂蜜色の髪も素晴らしい」
アレクはジュリアの後頭部を手で支え口づけをまた濃くする。唾液を流し込まれながら彼に舌を絡み取られると、息苦しさに眦に涙が浮かんだ。
「その独創的なドレスの下には、どんな美しい花が隠れているのか」
ジュリアがさすがに体を強張らせると、アレクは体をゆっくりと離した。
間近で見た彼の唇が濡れていて、ややあって、自分の唇も濡れていることに気づく。彼と口づけをしていた証拠だ。カッと頬が赤くなる。
「さて、結婚してもらえますか、ジュリア嬢」
アレクの低く官能的な声を振り払うように、ジュリアは声を荒げる。
「あ、貴方、頭がおかしいの? こんなことをされて、承諾する人が」
第一、ハリーから正式に求婚を受けると連絡したから、アレクはここに来たはずなのだ。
ジュリアが非難を続けようとすると今度は息が詰まるほどに強く抱きしめられた。
「頭ならおかしいのかもしれない。やっとだからね。それなのに……」
抱擁されながら紡がれるアレクの言葉の切なさにジュリアはまばたきを忘れる。まるで、ずっと恋い焦がれていたような響きだ。
『野暮な……、……彼女を遠ざけてくれ。――目障りだ』
初めて会った時、廊下で聞いた彼の言葉を思い出し、その温度差に違和感を覚えた。
……王子は野暮ったい令嬢が嫌いなのではないの?
ジュリアの恰好はお世辞にも洗練されていない。しかしアレクはそれを一貫して気にしている様子はないのだ。
「結婚してくれるかい?」
ジュリアは注意深く言葉を選ぶ。
「兄の命の恩人でもある殿下ですもの。こんな私で良ければお受けいたします」
結婚せずにすむ計画を止めるつもりはないのに、嘘を付いている事に胸が痛んだ。
亡くなった父親の悲しむ顔が見える。マルヴァーンの家名にも傷をつけてしまう。
ここにきて気持ちが揺らいできたジュリアは彼の腕の中から窓の外に見える青い空を見た。この空を見続けたいのは、幼いわがままなのだという事実が身に迫ってくる。
弱々しくアレクを見上げると、彼の顔に苦悩が浮かんでいた。
「まず、ハリーと私たちの結婚は関係がない」
きっぱりとアレクは言って、力強く言い添えた。
「それに、こんな私、ではない。知性と教養を兼ね備えた強い女性だ。我が妃にふさわしい」
口づけの高揚がスッと引いた。
アレクが結婚相手に必要としているのはベッドを共にする美しい容姿を持つ愛人ではない。王子の妃としてふさわしい血筋と感覚を持つ、申し分のない貴族令嬢なのだ。
彼の熱いまなざしに甘い期待を抱きはじめていたことに気づいて、恥ずかしくなった。
領地管理の話や、慈善活動の話をしたのは良くなかった。アレクに妃として役割を果たせる娘だと印象付けてしまったはずだ。
方法を、間違ってしまった。
「ありがとう、ございます……」
今の素敵な口づけも、アレクにとっては数あるもののひとつ。
ややこしい感情に巻き込まれていることにジュリアは硬く目を瞑った。
……こういうのが、嫌なの。
抱き締めたまま離してくれないアレクの腕の中で、ジュリアはなぜかこみあげてきた涙をこらえた。
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