初恋は雷雨に誘われた

水守真子

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これは現実

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 ベッドの縁に、二人で腰かけた。
 じっと見つめあっていると、耕平が額をこつんと当ててくる。

「晶さん」

 耕平の罪深く整った容姿を間近で見ながら、しかも名前を呼ばれて胸が高鳴った。
 幼馴染で弟で。何度も思い込もうとしていた耕平から男性の匂いがする。
 嗅覚で魅かれることがあるのか考えているうちに、自然と唇が重なった。

「ん……」

 ベッドにゆっくり押し倒されながらされる、艶めかしいキス。じれったいくらいに長く口腔を探られ息は乱れた。
 借りて履いていたズボンはベッドに来る前にずり落ちていた。自然に上のスウェットも脱がされ、下着しか身につけていない。
 腕から逃れようという素振りをすれば、耕平に優しいが強い力で抑え込まれる。征服されているような感覚に身震いした。そんなことで喜ぶ趣味はないはずなのに、嬉しい。

「晶さん、胸が大きくなりましたよね」

 首筋に唇を這わせていた、耕平が器用にブラジャーのホックを外した。上にずらされて、気にして潰している大きな胸がこぼれる。晶は羞恥に頬を赤くした。

「……気にしているんだけど」
「俺も気にしてました」

 会話が成り立っていないと思っていると、耕平が薄桃の突起に唇で触れた。大事そうに舌先で突くように刺激してくる。

「んっ」
「晶さんのプラスアルファの魅力になるじゃないですか」

 乳首を咥え込み舌で捏ね転がされ、片方の胸は耕平の手で揉みしだかれた。
 手の平の中で乳房の形を変えながら、くちゅくちゅと執拗に乳首を嬲ってくる。
 ずっと遊びたかったおもちゃを、やっと手に入れた子供みたいだと思った。

「綺麗な色。かわいいですよね。晶さんはずっとかわいい、ずっとずっと」

 片方の手が下半身に下がって行きショーツに這い、その隙間から濡れたあわいに触れてくる。

「ぁ……っ」

 それだけで濡れているのを知られるのが恥ずかしく同時に驚いていた。濡れるのが遅くて別れる原因のひとつにもなったのに、自分でもわかるくらいに蕩けてしまっている。

「欲情してくれてますね。かわいいなぁ。あぁ、もう、かわいい」

 耕平は上体を起こし晶のショーツを脱がし、自分も下着を脱ぐ。
 そのまま晶の両脚を割り、じっとぬめるそこを見つめた。

「や、ちょっと、そんなに見ないで!」

 抵抗のために上半身を起こそうとしたが、ぐっと膝裏を持ち上げられてシーツの上に背中が落ちる。
 視線で辱められることが恥ずかしく、耕平の欲望を隠さない淫らな眼差しに疼きが増した。

「……どんどん濡れますね。…………そっかぁ」

 耕平の声色にひやりとしたものを感じた。
 目の中の欲望は渦巻いたまま、瞳の奥に中に何か危険な色が浮かぶ。

「最初の男は俺だった。なのに、ここを知っている他の奴がいる」

 後半はブツブツと小声になり、何を言っているが聞こえなかった。
 雷光が暗い部屋に差し込んだ。
 耕平は大きな屹立の尖端を秘裂に擦り付ける。

「こ、耕平……?」
「これからずっと悦ばせます。だから、今回はすみません」
「ま、待って……」

 誰と関係を持とうとも、避妊だけは気を付けていた。ひやりと肌に汗をかく。
 屹立が下肢の中心にぴたりと止まり、蜜洞を侵し始めた。

「耕平!」
「大丈夫です」

 久しぶりなので押し込まれていく窮屈感があった。
 秘裂はすっかり濡れているせいで、痛み無くするりと侵入してくる。

「ああ、きついですね」

 うっとりとした表情で耕平が笑む。悪びれもしない彼は、晶の脚をさらにぐっと開く。
 限界まで開脚させられ、あまりにもの無防備さに晶は瞬きを忘れて耕平を凝視した。

「こ、耕平……」
「奥まで、感じ、たい……」

 脇に手を付く耕平の腕を掴んでいた。筋肉の筋を手のひらに感じ、敵うわけがないと無力感になる。彼には嗜虐の気があるのだろうかと、耕平の表情を探ってしまった。
 組み敷かれて動きが取れない晶に、ひどく低くて掠れた声で耕平は言う。

「怖がってください、晶さん」
「耕平……?」

 持ち上げた晶の脛を舌で往復させる耕平は、恍惚とした表情を浮かべていた。

「あの日の朝、俺は晶さんを手に入れたつもりだった。でも、違ったんです」

 記憶を探るような耕平の目に、晶もあの時の心の痛みが蘇った。

「次の日、私に謝ったじゃない……」
「俺が初めてで、うまくできなかったから」

 自分との関係を謝ったかと思っていた。
 あまりにも違う解釈に言葉を失い、そうじゃないと言えなかった。

「晶さんを、気持ちよくできなかったと思った。でも、間違ってはいないですよね。良くなかったから無視されたんですよね、俺」

 あの日は初めてなのにあまりにも良かった。

「晶、晶さん」

 欲望の満ちた声で名を呼ばれるとぐっと蜜洞が収縮した。
 ぬるぬるとした感触を確かめるように、耕平は屹立をゆっくりと抜いて、切っ先だけ埋めたままにする。
 身体の奥底からせり上がってくる疼きが、ぎゅっと尖端を締め付けた。

「締め付けてますよ。晶さん。……怖いと人は従うから、俺を怖がって」

 耕平の指が、秘裂の上にある粒を嬲る。晶の腰が跳ねると、ずるっと屹立は抜けた。
 焦れた無意識が手でシーツを掻くと、耕平は笑んだ。

「欲しいんですね。いいんです。何も言わなくて。上げますよ、俺の全部を」

 愛おしそうに手の平で大きな胸の膨らみを撫でて、耕平は再び自分を埋めてきた。
 先程より滑らかに奥まで入った硬い肉棒は、襞を確かめるように忙しない律動を繰り返す。
 身を委ねるしかない激しさに、恥ずかしいくらいに喘いでしまう。

「あ、や、ああっ、激しっ」
「晶さん、かわいいですね」

 頬が上気しているのがわかった。雨の音は自分の喘ぐ声にかき消されている。
 ひどいと逃げ出せばいいのに、あの夜の気持ち良さ以上の悦楽に蝕まれていた。
 簡単に受け入れる自分を、耕平はどう思っているのだろうか。
 硬いままの肉棒が濡れた肉襞を侵しては、身体を揺さぶる。
 その動きに合わせてたわわな胸が上下し、眺める耕平が目を欲望に潤ます。

「晶さん、ああ、動画にしたい。動画、動画にして、編集はしません。晶さんは、編集するところ、無いので」
「やっ、それはやだぁ」

 ガクガクと震える晶の腰を持ち、ぬちぬちと音をさせながら耕平は抽送を繰り返す。

「嫌ですか。怖がる晶さんは見たくないです。でも怖がってください。もう俺だけにしましょう。ね、晶さん」

 襞が戦慄きながら蜜を溢し、その度に耕平は腰の動きをますます速くした。体力が違う。晶は息も絶え絶えになりながら「待って」と口にする。
 粘着質の水音がぴしゃ、ぶしゃ、とさらに大きくなる。卑猥な音に晶は顔を横に振る。
 眦に涙が浮かぶくらいに、子宮の入り口が刺激された。
 抉るような勢いに加え、乳首をぎゅっと掴まれて、晶の背中が大きく弓なりになる。
 愉悦の大きな波に呑み込まれて、あの夜が思い出された。
 気持ち良くて、もっと欲しくて、本能のままに耕平を受け入れたあの雨の日を。

「これ以上、待てません。中に出してからじゃないと、安心できないんだ、俺は」

 蠢く襞を押し開き一段と膨らんだ肉棒が打ち付けられる。
 晶は全てが弛緩する幸福感に震えた。
 飛沫が中に噴く。引き抜いた肉棒の栓が無くなり、臀部にドロッと白濁が伝う。
 中に出されたのだ。絶対にしてこなかったこと。子どもができるかもしれない。
 快楽の余韻と、考えてしまう現実。

「ああ、これで余裕ができました。今度は子供ができるといいなぁ」

 晶の心配をよそに、耕平は額の汗を拭って笑む。
 耕平はクールなはずなのだ。少なくとも、物心ついた頃からずっとそうだった。

「さぁ、後ろから晶さんを感じさせてください。次は上で。……雨は止みそうにないですね」

 唇を奪われながら、身体をうつ伏せにされる。
 ぐっと腰を持ち上げられて、蜜口が見えるほど秘裂を手で押し開かれた。

「愛し合って、感じて、気持ち良くなって、子供ができるなんて最高じゃないですか。俺が、最後の男です」

 耕平の劣情が、晶の心配を掃いて捨てた気がした。

「産んでくださいね、晶さん」
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