腹黒狼侯爵は、兎のお嬢様を甘々と愛したい

水守真子

文字の大きさ
上 下
17 / 29
共同作業

しおりを挟む
「……お見苦しくて申し訳ありません。父にドレスを用意してもらうようにお願いします」

 解決策を口にしたのに、ハドリーの視線が胸の谷間から離れない。
 口の中がどんどん乾いてきた。
 早く彼から逃げなくてはと理性は訴えるけれど、本能は違うことを囁いてくる。

「パトリックは男です。男女間は発情だけが問題ではないと、わかっていますか」

 発情以外に問題があるのだろうか。イザベラは首を傾げた。

「男は、魅力的な女性を自分のものにしたい。これは最も原始的な本能だ」

 ハドリーはイザベラの胸元に指を差し入れると、そのまま下に下げた。
 胸元を覆う布もずり下がり、イザベラは固まる。

「アルファの忌々しいマーキングの匂いも混じっている。女性の趣味が良いのは褒めますが、それだけですね」
「……っ」

 視線を下にやると、左胸がむき出しになっていた。
 身を引こうとしたイザベラの腕が机越しに掴まれる。
 大きく真っ白な膨らみとその頂にある桃色の蕾がハドリーの眼前に晒されていた。
 腕を振りほどこうとするたびに、大きな膨らみが揺れる。
 ハドリーは眉ひとつ動かさず、恥ずかしさに真っ赤になっているイザベラを見上げる。

「布一枚で覆われているだけです。危ないとは思いませんか」
「こんなことを、パトリックがするわけがありませんから!」
「今はしないだけで、明日はするかもしれません」

 屁理屈にイザベラは目を丸くする。
 パトリックが夢中になっているのはお菓子作りで、こんな大きな膨らみじゃない。

「しません!」
「ああ、そうだ。私の事はハドリーと呼んでください」
「急に何を」
「義父の事をエックハルト様、と呼んでいるのを聞きましたので」

 名前を呼べば心の距離が近くなってしまう。
 なんとなく避けているのをバレていた気がした。
 掴まれていない方の腕で生地を押し上げようとすると、その手首も掴まれてしまう。

「もう私たちは二週間も一緒にいます。あなたの離れで寝食を共にしているではありませんか。名前くらい大した問題では無いでしょう」
「そもそも……」

 寝食を共にしているのがおかしい。
 ハドリーがイザベラの発情が心配だと、何かあったらコートナー商会に顔向けできないと、同じ部屋のソファで休むことを止めないだけだ。
 今、確信したことがある。一番危険なのは、このハドリーだ。

「私とイザベラの仲じゃないですか。ほら、呼んでください。ハドリーと」

 胸がふるふるとハドリーの目の前で揺れている。
 恥ずかしいやら情けないやらで、耳が垂れ下がってしまった。

「手を離してくれたら、呼びます」
「そうですか。なら、強硬手段に出ましょう」

 身を乗り出してきたハドリーがためらうことなく口を開き、桃色の蕾を口に含んだ。

「ん……っ」
「素晴らしい膨らみに、小さな実がなっている。とてもおいしいですよ」

 脚の間に快楽の奔流が流れ込み、イザベラの身体からふにゃりと力が抜ける。
 先端を舌で転がされ、吸われ、甘噛みされ、これを望んでいたと痛烈に感じたことに、イザベラは震えた。
 触れてもらえたオメガの自分が悦んでいる。

「ふぅっ……」
「ほら、力が抜けてしまうでしょう。男と一緒にいるのは危ないのです」

 イザベラが身体を離そうと形だけでも抵抗をするとハドリーは胸から唇を離し、椅子から立ち上がりこちら側に回ってきた。
 イザベラをかるがると抱き上げると椅子に戻り、自分に跨るように太ももに座らせる。

「あなたはいつでも軽いですね」

 むき出しの胸がハドリーの前にある。
 彼はその白い膨らみを愛おしむように眺めていた。
 その目が嬉しくてたまらない。

「あなたのこの姿を、誰にも見せないように、そばにおいているのですよ」

 それから、イザベラには甘美な地獄が始まった。
 ハーブの報告をしにきただけなのに、おかしい。
 ハドリーは胸の頂を今度は奥深くまで含み、音を立てて吸ったり、先端を激しく舌で攻め立ててきた。手ですく上げ揉み、その形を変えながら吸い続ける。
 こんなこと初めてで戸惑うのに、嬉しくて泣きそうなのだ。眦に零れない涙がずっとある。
 アルファが、自分を欲してくれている。
 本能が満たされ、イザベラを足の指先まで悦びで溢れ返させる。

「ふぁっ、ぁっ」
「美しいですよ、イザベラ。ほら、私に掴まって」

 イザベラは耐えきれず背を弓なりにしハドリーの肩を掴んだ。
 するともう片方の胸もぽろりとドレスから零れ落ちてしまう。

「危ないドレスですね……。早めに新しいものを用意させましょう」

 片方の手は手で揉みしだかれ、もう片方の胸は唇で攻め立てられる。
 鉄の棒のようなものが、イザベラのどくどく脈打つ脚の間に収まっていた。
 少し動くとこすれ熱くて暴かれたい部分がさらに燃え上がり、自然と腰が動いてしまう。

「良い動きですね。ほら、ハドリーと呼んでください」
「は、ハドリー様……ぁ」

 ハドリーが腰をズンっと突き上げた。
 豊満な乳房が、彼の眼前で動きに合わせて上下に揺れる。
 両脚の間に強い刺激が走り、目の前にチカチカと星が飛び跳ねた。
 彼の手がドレスの下、ドロワーズ越しに臀部を掴んでいる。
 もっと鋭敏な場所に触れさせようと、誘われているのがわかって、自ら腰を進めてしまう。

「ひぃ、あ、ぁっん」
「ほら、名前を呼んで」

 名前を呼ぶたびに、突き上げてくれる。
 その快楽に夢中になって、何度も名を口にした。

「ハドリー……っん、ハド……リーッああぁ、ハド、ハドォォッ」

 自分が発情しているのか、していないのかもわからない。
 快楽の渦にのみこまれ、引きずり落とされ、どこまでも持ち上げられる。
 胸の頂を歯で食まれ、身を焦がす程の悦楽に興奮を止められなくなった。
 豊か膨らみが持ち上げられ先端をチロリと舌で舐められた。
 次に強く吸われ、その度に歓びが身体に走り抜ける。

「はぁっ……あぁ……っ」
「イザベラ……。この素晴らしい胸を見せるのは、私だけの約束ですよ」
「はぃ……っ。ハドリィ様ぁ……ん」
「返事が足りないですね」

 熱を持った両脚の間が、突き上げられ擦られると、また体中に快楽が走り抜けた。
 先端を甘噛みされ、まだ誰にも許していない蜜洞がキュウッと締まった。

「ハドリー様以外に、お胸は見せません――っ」
「良い子です」

 激しく突き上げられる中、口の中に甘みが広がる。
 試作品のハーブ入りのチョコレートだ。
 いつの間にか瞑っていた目をゆっくりと開けた。
 官能の荒れ狂う高い波が、すぅっと引いていく。
 ハーブは遅効性のハーブを飲んでいたのに、発情していたらしい。
 即効性のハーブが効いたのが証拠だ。

「ぁ……」

 何もなかったように、劣情が静かな凪へと戻っていく。
 ハドリーがドレスの生地を持ち上げて胸を隠してくれた。
 胸の谷間に、優しいキスを落とす。

「アルファには気を付けるように」

 耳にも軽いキスを繰り返してくれるハドリーの肩に額を預けてイザベラは目を閉じる。
 あの快感の波に飲み込まれた先、ハドリーは番にしか与えないのかもしれない。
 だから、彼の中では浮気ではないのかも。
 去っていく波を口惜しそうに見つめる自分は、とても卑しく淫らな体だと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...