腹黒狼侯爵は、兎のお嬢様を甘々と愛したい

水守真子

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共同作業

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「……お見苦しくて申し訳ありません。父にドレスを用意してもらうようにお願いします」

 解決策を口にしたのに、ハドリーの視線が胸の谷間から離れない。
 口の中がどんどん乾いてきた。
 早く彼から逃げなくてはと理性は訴えるけれど、本能は違うことを囁いてくる。

「パトリックは男です。男女間は発情だけが問題ではないと、わかっていますか」

 発情以外に問題があるのだろうか。イザベラは首を傾げた。

「男は、魅力的な女性を自分のものにしたい。これは最も原始的な本能だ」

 ハドリーはイザベラの胸元に指を差し入れると、そのまま下に下げた。
 胸元を覆う布もずり下がり、イザベラは固まる。

「アルファの忌々しいマーキングの匂いも混じっている。女性の趣味が良いのは褒めますが、それだけですね」
「……っ」

 視線を下にやると、左胸がむき出しになっていた。
 身を引こうとしたイザベラの腕が机越しに掴まれる。
 大きく真っ白な膨らみとその頂にある桃色の蕾がハドリーの眼前に晒されていた。
 腕を振りほどこうとするたびに、大きな膨らみが揺れる。
 ハドリーは眉ひとつ動かさず、恥ずかしさに真っ赤になっているイザベラを見上げる。

「布一枚で覆われているだけです。危ないとは思いませんか」
「こんなことを、パトリックがするわけがありませんから!」
「今はしないだけで、明日はするかもしれません」

 屁理屈にイザベラは目を丸くする。
 パトリックが夢中になっているのはお菓子作りで、こんな大きな膨らみじゃない。

「しません!」
「ああ、そうだ。私の事はハドリーと呼んでください」
「急に何を」
「義父の事をエックハルト様、と呼んでいるのを聞きましたので」

 名前を呼べば心の距離が近くなってしまう。
 なんとなく避けているのをバレていた気がした。
 掴まれていない方の腕で生地を押し上げようとすると、その手首も掴まれてしまう。

「もう私たちは二週間も一緒にいます。あなたの離れで寝食を共にしているではありませんか。名前くらい大した問題では無いでしょう」
「そもそも……」

 寝食を共にしているのがおかしい。
 ハドリーがイザベラの発情が心配だと、何かあったらコートナー商会に顔向けできないと、同じ部屋のソファで休むことを止めないだけだ。
 今、確信したことがある。一番危険なのは、このハドリーだ。

「私とイザベラの仲じゃないですか。ほら、呼んでください。ハドリーと」

 胸がふるふるとハドリーの目の前で揺れている。
 恥ずかしいやら情けないやらで、耳が垂れ下がってしまった。

「手を離してくれたら、呼びます」
「そうですか。なら、強硬手段に出ましょう」

 身を乗り出してきたハドリーがためらうことなく口を開き、桃色の蕾を口に含んだ。

「ん……っ」
「素晴らしい膨らみに、小さな実がなっている。とてもおいしいですよ」

 脚の間に快楽の奔流が流れ込み、イザベラの身体からふにゃりと力が抜ける。
 先端を舌で転がされ、吸われ、甘噛みされ、これを望んでいたと痛烈に感じたことに、イザベラは震えた。
 触れてもらえたオメガの自分が悦んでいる。

「ふぅっ……」
「ほら、力が抜けてしまうでしょう。男と一緒にいるのは危ないのです」

 イザベラが身体を離そうと形だけでも抵抗をするとハドリーは胸から唇を離し、椅子から立ち上がりこちら側に回ってきた。
 イザベラをかるがると抱き上げると椅子に戻り、自分に跨るように太ももに座らせる。

「あなたはいつでも軽いですね」

 むき出しの胸がハドリーの前にある。
 彼はその白い膨らみを愛おしむように眺めていた。
 その目が嬉しくてたまらない。

「あなたのこの姿を、誰にも見せないように、そばにおいているのですよ」

 それから、イザベラには甘美な地獄が始まった。
 ハーブの報告をしにきただけなのに、おかしい。
 ハドリーは胸の頂を今度は奥深くまで含み、音を立てて吸ったり、先端を激しく舌で攻め立ててきた。手ですく上げ揉み、その形を変えながら吸い続ける。
 こんなこと初めてで戸惑うのに、嬉しくて泣きそうなのだ。眦に零れない涙がずっとある。
 アルファが、自分を欲してくれている。
 本能が満たされ、イザベラを足の指先まで悦びで溢れ返させる。

「ふぁっ、ぁっ」
「美しいですよ、イザベラ。ほら、私に掴まって」

 イザベラは耐えきれず背を弓なりにしハドリーの肩を掴んだ。
 するともう片方の胸もぽろりとドレスから零れ落ちてしまう。

「危ないドレスですね……。早めに新しいものを用意させましょう」

 片方の手は手で揉みしだかれ、もう片方の胸は唇で攻め立てられる。
 鉄の棒のようなものが、イザベラのどくどく脈打つ脚の間に収まっていた。
 少し動くとこすれ熱くて暴かれたい部分がさらに燃え上がり、自然と腰が動いてしまう。

「良い動きですね。ほら、ハドリーと呼んでください」
「は、ハドリー様……ぁ」

 ハドリーが腰をズンっと突き上げた。
 豊満な乳房が、彼の眼前で動きに合わせて上下に揺れる。
 両脚の間に強い刺激が走り、目の前にチカチカと星が飛び跳ねた。
 彼の手がドレスの下、ドロワーズ越しに臀部を掴んでいる。
 もっと鋭敏な場所に触れさせようと、誘われているのがわかって、自ら腰を進めてしまう。

「ひぃ、あ、ぁっん」
「ほら、名前を呼んで」

 名前を呼ぶたびに、突き上げてくれる。
 その快楽に夢中になって、何度も名を口にした。

「ハドリー……っん、ハド……リーッああぁ、ハド、ハドォォッ」

 自分が発情しているのか、していないのかもわからない。
 快楽の渦にのみこまれ、引きずり落とされ、どこまでも持ち上げられる。
 胸の頂を歯で食まれ、身を焦がす程の悦楽に興奮を止められなくなった。
 豊か膨らみが持ち上げられ先端をチロリと舌で舐められた。
 次に強く吸われ、その度に歓びが身体に走り抜ける。

「はぁっ……あぁ……っ」
「イザベラ……。この素晴らしい胸を見せるのは、私だけの約束ですよ」
「はぃ……っ。ハドリィ様ぁ……ん」
「返事が足りないですね」

 熱を持った両脚の間が、突き上げられ擦られると、また体中に快楽が走り抜けた。
 先端を甘噛みされ、まだ誰にも許していない蜜洞がキュウッと締まった。

「ハドリー様以外に、お胸は見せません――っ」
「良い子です」

 激しく突き上げられる中、口の中に甘みが広がる。
 試作品のハーブ入りのチョコレートだ。
 いつの間にか瞑っていた目をゆっくりと開けた。
 官能の荒れ狂う高い波が、すぅっと引いていく。
 ハーブは遅効性のハーブを飲んでいたのに、発情していたらしい。
 即効性のハーブが効いたのが証拠だ。

「ぁ……」

 何もなかったように、劣情が静かな凪へと戻っていく。
 ハドリーがドレスの生地を持ち上げて胸を隠してくれた。
 胸の谷間に、優しいキスを落とす。

「アルファには気を付けるように」

 耳にも軽いキスを繰り返してくれるハドリーの肩に額を預けてイザベラは目を閉じる。
 あの快感の波に飲み込まれた先、ハドリーは番にしか与えないのかもしれない。
 だから、彼の中では浮気ではないのかも。
 去っていく波を口惜しそうに見つめる自分は、とても卑しく淫らな体だと思った。
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