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4、その頃平太は!
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険しい道を終始無言で歩く。
断崖絶壁やなぞのつり橋、洞窟をぬける。いずれもこの山にこんな場所絶対ないよね? 地理的にここはいったい日本のどこ? と言いたくなるような世界遺産じみた絶景ばかりだった。
いくつもの難所を越えると、突如目の前がひらけた。そして急に普通の街角があらわれ、マンションっぽい建物の前にたどり着く。
「えっ……ここはいったい」
「私たち、ポメラニアンの隠れ里です」
隠れ里というと、鄙びた集落を想像してしまうが、何のへんてつもない平凡な街並みとコンクリートの建物だった。エレベーターに乗って、マンションの一室に案内された。
室内は子どものおもちゃが散乱している。モカは消臭スプレーを玄関と玄関前にかけ、そのまま通路やエレベータにもかけにいった。
「私たちは嗅覚がするどいのです。来る時は誰とも会わずにラッキーでしたが……念のためこれも」
平太自身にもハーブのようなフレグランスをスプレーされる。マロンや自分にもシュッシュとかけ、「マロンをご近所さんに預けてくるんで、とりあえずここで待っていてくれますか」と言い残し、平太と遊びたがっているマロンを強制抱っこして部屋を出て行った。
しばらくし、一人で戻ってきたモカは、二人分のお茶をいれて正座していた平太と向き合った。
「先ほどお伝えしたとおり、ここはポメの隠れ里です。人間が侵入するなど、ご法度。あまり時間はありません」
深刻な空気に顔を引き締めたつもりが、つい、ふにゃ、とゆるんでしまった。
「……どうして笑うんですか」
「マロンくんを預けるような親しいお友だちがいるんだ、って思いましてつい。いや、一人で子育ては大変かと思い心配してたんです。マロンくんを頼めるほどご近所さんと仲いいっていいですね!」
「……平太さん」
モカは眉間に深い皺をつくり、深くため息をつくと顔を左右に振った。
「あっ、余計なことを言ってしまいました……気に障ったならすみません。話の続きを」
「好き」
深々と眉間にしわを作りながら、モカは苦しそうに言った。
「え」
「好き、です」
「え、え、」
モカは、勢いよく平太に抱きついた。
平太は驚いた顔のまま床に押し倒され頭を強く床にぶつけた。
モカは倒れこんだ平太に何度も何度も角度をかえ、何度も、キスをしてくる。その様子は、テンションがあがりきって、嬉しさや愛情をどう表現していいかわからない、無垢な仔犬のようだ。
額、目、頬、鼻、顎、口に、ちゅ、ちゅ、と一方的にキスをされる。されるがままパニックになるやらぶつけてばかりの頭が痛いやらぼおっとするやらで、平太は、うわ、うわ、とわけのわからないことを言う。
「あの、モカさ、わ、わ、あの、ええと」
モカは自分で自分を止められない様子で、キスとキスの間にとぎれとぎれに言う。
「平太さんの、ん……、む、優しいとこっ、んぅ、……思いやりのあるとこ、ぅ……ん、すごく好き、だいすき、」
口づけは繰り返し繰り返し、平太に降り注がれる。モカの勢いは増すばかりで、キスに飽き足らず、ついには温かく濡れた舌が平太の右頬を、耳を往復する。
なにごとも思いつめ内に秘めがちで、真面目で、おくゆかしいタイプに思われる人が、何がどうなったのか、完全にタガがはずれ、めろめろに溶けてしまっている様子を目の前にし、平太は圧倒され、どうしていいのかわからない。
そんな平太の身体をモカはまさぐり続け、執拗にキスをし、匂いをかぎ、舐めまわしてくる。
「モカさ、待っ」
「待てない……、好き、ぃ」
ぶちゅう、と唇を強く吸わはむはむされる。
うわうわうあああう、と思いながらも、こうなったら、平太の我慢にも限界がある。
「モカ! さ! ん!」
キスに応じ、舐め返してこちらからもはむはむしまくってしまう。
はあはあ、と息があがり、舌や唇、口の中、頬、されたことをそのまま、またそれ以上に返す。吸いまくる。スイッチがはいる。
「ん、ん……ん、は、あ……ん」
「モカさん、モカさん……、好き、かわいい、大好きいきなりいなくならないでください」
平太は、モカに押し倒され抑えこまれていた体勢から、反動をつけて起き上がり、逆転した。モカの上になった。
断崖絶壁やなぞのつり橋、洞窟をぬける。いずれもこの山にこんな場所絶対ないよね? 地理的にここはいったい日本のどこ? と言いたくなるような世界遺産じみた絶景ばかりだった。
いくつもの難所を越えると、突如目の前がひらけた。そして急に普通の街角があらわれ、マンションっぽい建物の前にたどり着く。
「えっ……ここはいったい」
「私たち、ポメラニアンの隠れ里です」
隠れ里というと、鄙びた集落を想像してしまうが、何のへんてつもない平凡な街並みとコンクリートの建物だった。エレベーターに乗って、マンションの一室に案内された。
室内は子どものおもちゃが散乱している。モカは消臭スプレーを玄関と玄関前にかけ、そのまま通路やエレベータにもかけにいった。
「私たちは嗅覚がするどいのです。来る時は誰とも会わずにラッキーでしたが……念のためこれも」
平太自身にもハーブのようなフレグランスをスプレーされる。マロンや自分にもシュッシュとかけ、「マロンをご近所さんに預けてくるんで、とりあえずここで待っていてくれますか」と言い残し、平太と遊びたがっているマロンを強制抱っこして部屋を出て行った。
しばらくし、一人で戻ってきたモカは、二人分のお茶をいれて正座していた平太と向き合った。
「先ほどお伝えしたとおり、ここはポメの隠れ里です。人間が侵入するなど、ご法度。あまり時間はありません」
深刻な空気に顔を引き締めたつもりが、つい、ふにゃ、とゆるんでしまった。
「……どうして笑うんですか」
「マロンくんを預けるような親しいお友だちがいるんだ、って思いましてつい。いや、一人で子育ては大変かと思い心配してたんです。マロンくんを頼めるほどご近所さんと仲いいっていいですね!」
「……平太さん」
モカは眉間に深い皺をつくり、深くため息をつくと顔を左右に振った。
「あっ、余計なことを言ってしまいました……気に障ったならすみません。話の続きを」
「好き」
深々と眉間にしわを作りながら、モカは苦しそうに言った。
「え」
「好き、です」
「え、え、」
モカは、勢いよく平太に抱きついた。
平太は驚いた顔のまま床に押し倒され頭を強く床にぶつけた。
モカは倒れこんだ平太に何度も何度も角度をかえ、何度も、キスをしてくる。その様子は、テンションがあがりきって、嬉しさや愛情をどう表現していいかわからない、無垢な仔犬のようだ。
額、目、頬、鼻、顎、口に、ちゅ、ちゅ、と一方的にキスをされる。されるがままパニックになるやらぶつけてばかりの頭が痛いやらぼおっとするやらで、平太は、うわ、うわ、とわけのわからないことを言う。
「あの、モカさ、わ、わ、あの、ええと」
モカは自分で自分を止められない様子で、キスとキスの間にとぎれとぎれに言う。
「平太さんの、ん……、む、優しいとこっ、んぅ、……思いやりのあるとこ、ぅ……ん、すごく好き、だいすき、」
口づけは繰り返し繰り返し、平太に降り注がれる。モカの勢いは増すばかりで、キスに飽き足らず、ついには温かく濡れた舌が平太の右頬を、耳を往復する。
なにごとも思いつめ内に秘めがちで、真面目で、おくゆかしいタイプに思われる人が、何がどうなったのか、完全にタガがはずれ、めろめろに溶けてしまっている様子を目の前にし、平太は圧倒され、どうしていいのかわからない。
そんな平太の身体をモカはまさぐり続け、執拗にキスをし、匂いをかぎ、舐めまわしてくる。
「モカさ、待っ」
「待てない……、好き、ぃ」
ぶちゅう、と唇を強く吸わはむはむされる。
うわうわうあああう、と思いながらも、こうなったら、平太の我慢にも限界がある。
「モカ! さ! ん!」
キスに応じ、舐め返してこちらからもはむはむしまくってしまう。
はあはあ、と息があがり、舌や唇、口の中、頬、されたことをそのまま、またそれ以上に返す。吸いまくる。スイッチがはいる。
「ん、ん……ん、は、あ……ん」
「モカさん、モカさん……、好き、かわいい、大好きいきなりいなくならないでください」
平太は、モカに押し倒され抑えこまれていた体勢から、反動をつけて起き上がり、逆転した。モカの上になった。
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