α、β、Ωで結婚したら無敵だった

8、失恋と旅行

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　これまで何度も足を運び、流助と会わせてくれと頼んだが、首を縦に振ってくれなかった。あの時の絶望的な気持ちを思い出す。
「正攻法でやれば、そりゃ難しいだろうね」
　イオは華麗にベッドがから飛び降りると、プランを話しはじめた。

「いや、ほんと、イオくん、無理ですって。絶対バレますよ」
「大丈夫だって。流助パパも流助ママも、誠の素顔をほとんどみたことないだろ？」
「わたしがΩって設定、おかしいですよ……」
「じゃあ、中学のときの同級生」
「年齢」
「うーんとじゃあ元担任教師」
「それなら……いや、でも絶対わかりますって。それくらい覚えてますって」
　イオはとんでもなくださいスーツをどこからか調達してきて、ださい髪型、ださ眼鏡をかけて、自分のオーラを完全に消してしまった。これでは確かに誰もイオと気づくまい。
　人に与える印象を自由に変えることができるイオはともかく、鳥飼は普段身につけたことがないようなボサッっとしたスエットを着せられ、フィルタグラスはもちろん眼鏡のたぐいはつけない素顔だ。何年も会っていない人には素顔の方が逆に変装になる。
　二人とも、自分たちが流助の元夫であることを隠し、なんとか両親から流助の居所を探ろうという作戦だ。しかし設定からしてぐだぐだだで、鳥飼は不安しか感じない。
　流助の両親の店に着くと、あろうことか、イオは郵便受けをあさろうとした。
「（ダメですよ、イオくん、それ犯罪）」
　服をひっぱって必死で阻止しようとするが、当のイオはしれっとした顔をしている。
「ちっ、何もはいってない」
「（イオくん！）」
「じゃあね、ぼくがお客さんを装って、おとーさんおかーさんの注意をひくから、その間、誠が家に侵入して流助の現住所が書かれたものを探すんだよ？」
「（いや、だから）」
「それか、ぼくがおとーさんにハニートラップをしかけるから、その間に、」
「……ハニートラップて。……イオくん、お願いですからいったん犯罪から離れません？」
　鳥飼はひそひそ声をやめて、思わず普通の声の大きさで提案をした。
　と、背後から突然話しかけられた。
「今日定休日だよ」