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7、夫のアレがアレだとしても

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 鳥飼は皆にイオを紹介した。
 何らかのジャッジがくだされた感じがし、それから温かく迎え入れられた。鳥飼は終始、いつもの鳥飼だった。しかし鳥飼の父親が登場すると表情が一変した。
「おお、君がうわさの『残った方の夫』かい。誠、変わり者のお前が、Ωとβ両手に花だって随分甲斐性がいいと思って驚いたが、Ωに逃げられたとは、残念だったな。まあ一人残ったんだから万々歳だ」
 悪気は全く感じられず、イオ自身はそれほど嫌な気はしなかった。腫れものに触るように振る舞われるほうがよっぽど嫌だ。
 しかし、鳥飼が能面みたいな顔になっているのを見ると何も言えない。
 家族のことは所詮部外者には、わからない。曖昧な笑みを浮かべるしかない。
 一方鳥飼の母親は、若く美しく天真爛漫な人だった。華やかな空気をまき散らしながら一番最後に別荘に到着し、イオをみとめるとまっすぐ近づいてきて、ハグをもとめた。
「やっとお会いできたわね」
 にこにこと嬉しそうに質問攻めにしてくる。
「あなた、いりようなら遠慮なく言ってね? Ωがいなくても大丈夫よ。いい代理母を知っているの。ちゃんとしたところよ。わたしが紹介するから」
「母さん」
 初めましての会話にしてはストレートな内容に、鳥飼が制しても、鳥飼の母は微笑んだままだった。
「イオさんの子どもはきっとかわいいわ! 最初はイオさんの子どもにしなさいな、ねえ、誠」
 鳥飼の顔が能面を通りこして、わずかに口角が上がる。義母はその笑顔をただの笑顔としか受け取らず、鳥飼と同じ青い瞳を輝かせ、機嫌のいいまま、別の誰かをみつけ場を離れた。
 鳥飼は用事があるから少し一人にするとイオに断って、小柄な男と話している。見た目αじゃなさそうだな、と思いつつ手持無沙汰にしていると、親族の子どもたちにボードゲームを誘われた。
 αの子どもたちは大人ほど目力が強くない。中にはαとは一見わからない子もいた。しかし、ゲームで興奮すると、どんな大人しい子でも一様に瞳孔が開き、目をキラキラさせた。牙を隠したやんちゃな子どもオオカミといった感じで、鳥飼の子ども時代もこんなだったのかな、とイオは想像した。
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