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3、親に紹介したい系
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今日はグレイのセーターに黒のパンツ、コートを手にもっている。一見なんてことのない恰好だったが、そのシンプルさが逆にイオの「ただ者じゃない感」を強調している。手首にはゴールドの腕時計をつけており、ダークな全体の中そこだけが輝いて、近寄りがたさを増している。
時計は某ハイブランドのリュクスなシリーズで、ジュエリーを思わせる輝きと重量を感じるデザインで文字盤には小さなダイヤが埋めこまれている。メンズにしては冒険しているデザインだ。
鳥飼と流助がイオの誕生日に贈った。
――誕生日に欲しいものある?
尋ねた時にその何十万もする時計を即答したイオは、本気で言っているわけじゃなかった。それは鳥飼も流助も承知している。
わかっていながら相談してそれに決めた。実際贈ってみると、イオは喜ぶどころか一瞬言葉を失い、呆れ顔になり、怒った。
「こんな高いもの買うとかありえない。何考えてるんだよ」
鳥飼の感覚からすれば、愛する夫へのプレゼントにこのくらいなんでもない。
それに、「このシリーズでこんないかついゴールドって超レア、こういうのすげえ好き」と言ってさんざん騒いでいたから、欲しいならあげたいと純粋に思ったのだ。その結果がこれだ。
鳥飼は一気に落ちこんだ。
過去にも似たような経験があるのに、同じ轍を踏んだ。
金銭感覚は人によって違う。高価なものを贈られても居心地が悪いだけの人がいる。イオがそのタイプだと見抜けなかった。大切な記念日を、台無しにしてしまった。鳥飼はどうすればイオが機嫌を直してくれるのかわからず、途方に暮れてしまった。
そこに、流助がけろっとした顔で言った。
「あのさ、イオ、例えば俺が五千円の時計をイオにプレゼントしたらどんな気持ち?」
「うれしいよ。ダサいのだったらやだけど」
「金額じゃないっしょ?」
「うん、誰がくれたか、それからぼくが好きなものをちゃんとわかってくれてるか、だ。やっぱり好みをわかってくれていないと愛を感じない」
時計は某ハイブランドのリュクスなシリーズで、ジュエリーを思わせる輝きと重量を感じるデザインで文字盤には小さなダイヤが埋めこまれている。メンズにしては冒険しているデザインだ。
鳥飼と流助がイオの誕生日に贈った。
――誕生日に欲しいものある?
尋ねた時にその何十万もする時計を即答したイオは、本気で言っているわけじゃなかった。それは鳥飼も流助も承知している。
わかっていながら相談してそれに決めた。実際贈ってみると、イオは喜ぶどころか一瞬言葉を失い、呆れ顔になり、怒った。
「こんな高いもの買うとかありえない。何考えてるんだよ」
鳥飼の感覚からすれば、愛する夫へのプレゼントにこのくらいなんでもない。
それに、「このシリーズでこんないかついゴールドって超レア、こういうのすげえ好き」と言ってさんざん騒いでいたから、欲しいならあげたいと純粋に思ったのだ。その結果がこれだ。
鳥飼は一気に落ちこんだ。
過去にも似たような経験があるのに、同じ轍を踏んだ。
金銭感覚は人によって違う。高価なものを贈られても居心地が悪いだけの人がいる。イオがそのタイプだと見抜けなかった。大切な記念日を、台無しにしてしまった。鳥飼はどうすればイオが機嫌を直してくれるのかわからず、途方に暮れてしまった。
そこに、流助がけろっとした顔で言った。
「あのさ、イオ、例えば俺が五千円の時計をイオにプレゼントしたらどんな気持ち?」
「うれしいよ。ダサいのだったらやだけど」
「金額じゃないっしょ?」
「うん、誰がくれたか、それからぼくが好きなものをちゃんとわかってくれてるか、だ。やっぱり好みをわかってくれていないと愛を感じない」
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