α、β、Ωで結婚したら無敵だった

2、玄関開けたら

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　鳥飼のセーターは伸びきっているのでイオが着用するとミニワンピのようなサイズ感。見えそう、でも見えない、というきわどい丈のバランス。
　襟ぐりもでろでろだから、身体を動かすたびに背中が大きく見えたり肩が露出する。洗濯を失敗しただけのただのセーターだというのにとても煽情的だ。童貞を五人は殺せそうである。
　ゆっくりもったいつけて振り返ると、あらかじめ用意しておいた椅子にすとんと座る。足を大きく組み替える。その度に流助と鳥飼の視線が面白いくらい脚と脚の間にすいよせられる。
　昔、役者として舞台出演したことがあった。女装のストリッパー役だった。演技の才能はないとうすうす気づいていたがダメ押しとなったそのステージで、見せ場のストリップシーンのダンスはまあまあ評判が良かったのだ。
　二人が純粋に自分の動きにくぎづけになっているのを見て、死ぬほど怒られ気が狂うほど同じことをさせられて、それでも演出家の納得のいくようにはできなかった当時の自分が、ちょっとだけうかばれるような気がした。
　観客はかぶりつきでイオのショーを見ている。セーターのすそを、腕をクロスして脱ぐかにみせかけきわどく持ち上げるが、ぱっと手を離しておろす。二人はそれに、ほうっとため息をついた。
　そのまま自分の身体を抱きしめるようにして、前へキャットウォーク、鳥飼にまっすぐ近寄って抱えていた膝をくずさせ、その上に横座りする。
「セーターの洗濯、失敗しちゃった」
　耳元でささやいて鳥飼の髪をぐちゃぐちゃにし、大きな身振りで頬にキスした。鳥飼が、思わず、という感じで身をのりだしたところを軽く突き飛ばした。流助が歓声をあげた。
　鳥飼は顔が紅潮して固まったまま突き飛ばされ、心臓をおさえた。かわい。
　ここのタイミング、合うと楽しかった。はずすと情けなくて帰り道死にそうな気持ちで駅まで歩いた。
「俺も！ 俺も！」
　キャンキャン仔犬ちゃん、待ちなさい。