α、β、Ωで結婚したら無敵だった

2、玄関開けたら

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　一方でβとΩの組み合わせは露骨にいってしまえばΩがβを「性的にたらしこんだ」という風に見られる。
　身体が弱く、ヒートの期間寝たきりのようになることもある、冷静に考えればやっかいものでしかないΩである。
「Ωのフェロモンって理性をなくしてしまうくらいすごいらしい」から結婚したのだろう。そう思われる。
「すっごいセックスしてるのは事実だからしょうがないかもね」
　なんとか元気づけよう、話の方向を変えようと見当はずれなことを言ったイオに、流助はまたキヒヒと笑った。
「鳥が卵産むとき、どこから産むか知ってる？ お尻から産むんだよ。もちろん交尾もそこからだ」
「……え、鳥ってそうなんだ」
「鳥は排泄も生殖も開口部一つで済ますんだ。ヒトの男のΩはつまり鳥と同じ」
　流助は早口で言う。
「人間だってせーしはおしっこと同じとこから出るじゃん。それを棚に上げてオスのΩの子宮が直腸の奥にあることを汚らしいとか、発情期を変態的だとか、よく言えるよな」
　侮蔑的なことを言われ続けられ、そんな中で自分を保とうとしてきた流助を思うとイオの心はしんと痛んだ。
　自分の家族やパートナーをばかにされるのは我慢ならない。
　Ωというだけで不当な扱いをされるなんて世の中の方が間違っている。
　急速に憤りそう言うと、流助は、自分は慣れているから別にいい。ただ自分と結婚することでイオが嫌な目に合うのはきついなあ、と言った。　
　子どものような見た目の夫。かぶれた場所が痒いといって肌をバリバリ掻いている夫。騒がしく強情で、飛び跳ねてはよく転ぶ夫。自分よりイオを気づかう。
　流助のもっとちゃんとした味方になりたい。
　大事にしたい。
　そんな風に思うようになったのは、むしろ結婚してからのことだった。
　たくさん話し合いをし、同じ時間を過ごしてゆく中で強まった絆だった。
　
　そんなことを考えてた。
　つまりイオは愛に満ちあふれたモードだった。玄関まで走ってきて飛びついてくる流助が待ち遠しくてたまらない。
　でもなるべく普通にふるまうと決めている。普通の顔を保ったままうきうきとバッグを置いて、靴を脱ぐため玄関のスツールに腰かける。