α、β、Ωで結婚したら無敵だった

2、玄関開けたら

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　帰宅し「ただいま～」と言いながらイオがドアをガチャガチャやっていると、小さい方の夫がドタドタ走ってくる音がした。
　思わず顔がほころぶ。あんまり急ぐと転ぶぞ、と心の中で小言をいう。流助は飼い主の帰りを待ちわびていた忠実な室内犬のように、先に帰っている日はイオを玄関まで走ってきて迎えてくれる。
　それが嬉しく、時々うざったい。
　この感情は結婚する前からずっと変わらない。
　本当にキャンキャンと飛び跳ね鳴いているような感じなのだ流助は。抱っこしてよしよしたくなるし、あえて邪険にふるまいたくなる。意地悪して反応をみたくなる。
　流助と初めて会った時、とても驚いた。予備校の学校案内パンフレットの仕事で一緒だった中学生モデルとほぼ同じ体格だったからだ。
　イオは大学生講師の役で撮影に呼ばれ彼らと交流したのだが、肩幅は狭く胸は薄く、腕もか細い流助は、その時制服を着ていた少年たちにそっくりの背格好で、成人しているようにはまるで見えなかった。
　顔も頬が丸くてあどけなく、おまけに言動も子どもっぽく落ち着きがない。思ったことをすぐ口にし、縦にぴょんぴょんしがち。そんなところも余計に流助を幼く感じさせ、簡単にいうとイオはとてもひるんだのだった。
　　
　結婚相手をビッグデータで解析して紹介してくれる政府のマッチングサービスは、実際に会うまで相手の事前情報を教えてくれない。
　だから見合い相手の一人がΩだなんてことは当日までもちろん知らされてなくて、どんな相手が来ても失礼のないようにと覚悟をしていたイオだったが、流助を見て目が点になった。
　まさか子どもが相手？ その時隣にいた鳥飼を引率の保護者と勘違いしてしまうくらいそれは衝撃だった。