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勇者様 女の園へようこそ

求婚 そして嫉妬

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雷鳥の林を抜けて華やかな街のゲートが見えた。
ゲートの検問を済ませ中にはいると、それはそれは豪華な街並みが。
宝石ショップやエステ、行列のできるケーキ屋など女子が好きそうなものばかりがずらりと並ぶ。
しかし、一際目を引くのはやはりピンクの城だろう。
日本のテゾニーランドのなんちゃら姫の城に形が似ている。

一方、街の人々のなかではざわめきが起こっていた。
「男よ。なんてハンサムなボーイズなんでしょ!」
「うわぁ。イケメンさんだぁ」
「身長も180センチくらいと175センチくらいかしら!」
「せ、精子くれ!」

瞬く間に僕らは女の人に囲まれた。
「うわぁぁぁぁぁっ」
桜が人波に流されかけたので手を握ろうとした。
ガシッ! 
握れた。
「あらまぁ。私と結婚してくれるのかしら?」
マダムの手だった。
(ば、ばばあ。お前じゃねーよ!)

人々は皆こういう。
「わ、私と結婚してぇ♡」
「い、いや!私の旦那様にぃ!」
「いやいや、ダーリン!一緒に幸せな家庭を築きましょうね♡」
「せ、精子くれ!」
皆が皆求婚してくるのである。
ただでさえ女しかいないのか、男が珍しいのだろう。
そういえば、僕も吹雪も中々のイケメンだ。
モテても仕方があるまい。
でも、ここはきっぱり断ろう。
「あのー、僕には婚約者がいますし、皆さんのことは分かりかねませんので~」
吹雪が耳打ちする。
ボソッ(語尾が弱すぎます!仕方ないですね。)
「せ、セフレでもいいから~」
「お姉さんのおっぱい沢山触らせてあげるわよ♡」
「この世界は一夫多妻性よ。第2妻でもいいから!」
「せ、精子くれ!」
吹雪が息を吸った。
「よく聞け!メス豚ども!
俺たちはな!人間の女には興味あるが、豚には興味ねぇんだよ!
大人しく小屋へ帰りやがれ!」
「ちょっ!吹雪!」

女たちはざわめいた。先程とは別の意味で。
「なにこいつら。最低。」
「あんたらこそ帰ったら!」
「おばさん、バカにしてると痛い目にあうわよ」
「せ、精子くれ!」
そういうと皆かえっていってしまった。
(最後のやつ何なんだよ。)

しかし、
「た、助かった~!吹雪のやり方には驚いたけどありがとう」
「いえいえ。一先ず桜を探しましょう。」
桜はすぐに見つかった。
花の沢山咲いた公園のベンチに座っていた。
下を向いている。体調でも悪いのだろうか。
とりあえず側に駆け寄って桜の頭の高さまでしゃがむ。
「さ、桜ごめん!はぐれちゃって。」
「うん。」
「どうした?気分悪いのか?」
「別に。」
(な、何か怒ってる~!)
「悩み事?」
「別に。気分でも悩みでもない。」
「じゃあ、何なんだよ。」
「なんでわかんないの!!!!!!!!!」
急に大声を上げられたので後ろにのけ反ってしまった。
上げた顔には涙が溢れている。
(あっ。また泣かせてしまった…)
「ご、ごめん!」
「ごめんじゃないよ!何か言ってよ!
他に言うことあるでしょ!」
「手、掴めなくてごめん。」
「違う!そうじゃない!」
(ダメだ。分からん。頭をフル回転させろ俺!)
「一言でいいの。たった一言で。」
(ひとこと?)
「バーカ!そんなヒントで分かるかよ。」
「バカッ!そうじゃない!
好きって…好きって言ってよ…んっ!」
最後まで聞かずにキスをした。
桜はキスに弱いからな。
強く抱きしめた。
キスし終わって桜の顔を見るとやはり真っ赤だ。
「いつまで泣いてんだ?王子様が助けに来てやったんだぞ。
桜、一人にしてごめん。好きだ。大好きだ。」
「遅いよ…私も好きだよ…バカ。」 
「もう離さないから。」
「はい。」
再びキスをした。
強く強く。
「そういえばここでキスしたカップルは永遠の愛を手にいれるみたいなジンクスあるそうですよ。」
吹雪が急にそんなことを言うのでドキッとした。
二人顔を見合わせる。お互いに頬が赤い。
「微笑ましいですね~」
吹雪がいたずらっぽく言うので改めてこんな公共の場でキスしてたことが恥ずかしく思える。

僕らは3人はベンチに腰かけてゆっくり時間を過ごした。
今回は僕が真ん中だ。
左には顔の赤い桜が僕の肩に頭をちょこんとのせてぼけ~っとしている。
右から吹雪が耳打ちする。
ボソッ(また、桜、泣かせましたね♪)
(な、何かこえ~っ)
右を見た。
瞳をギラギラさせている。
「ふ、二人とも。こ、こ、これからどうしようか!?」
暫くこのままでいたいと桜がいったのでもう暫くはここにいよう。
地獄だ。右からは悪魔の囁きがきこえてくる。
ボソッ(今度桜を悲しませたら僕が許しませんからね…)
ボソッ(体の半分なくなっちゃうかもよ…)

ボソッ(い、以後きをつけます。はい。)
こういうしかない。
弟は怖いことを知った今日この頃。
(だ、誰か助けて~!)
彼方の叫びは遥か彼方へ飛んでいった。
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