仄暗い部屋から

神崎真紅

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第一章

act 9 溺れる

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「あっ、はっ、あっ....」

   助手席に乗せられた瞳は、その花芯に埋め込まれたローターの振動と、バスローブ一枚しか着ていない身体の前を賢司に肌蹴られ、乳首に刺激を受けていた。

 「あっあっ、もっ....と」
 「瞳、対向車から丸見えだぞ?」

   賢司の言葉に、一瞬びくりとするが、また乳首を掴まれ何も考えられなくなる。
  あぁ...。
  もっと、もっと苛めて....。
  瞳の身体は、賢司から苛められる事だけを追い求めていた。

   賢司は笑っていた。
   瞳は完璧なMに仕上がる事は、間違いない。
   既に、その片鱗を瞳は見せていた。
   俺だけの、M奴隷に仕上げてやるからな。
   少し走って目的地に到着した。

 「瞳、直ぐ戻ってくるからな」

   賢司は急ぎ足で一軒の家に入って行った....。
  その間、2・3分だろうか?
   何かが入った袋を持って賢司は戻って来た。
  その袋の中身を確かめる。

 「....やっぱりいいな」

   それからまたふたりはマンションに戻って行った。
   瞳の調教が、いよいよ本格的に始まるのだ。

  マンションに着いたが、瞳はふらついていてひとりでは、歩けない。
   賢司に支えて貰って、辛うじてエレベーターに乗り込んだ。

   虚ろな目をした瞳を、抱き抱える様にして、部屋に入る。
  そのまま....。
   瞳は寝室のベッドに寝かせ、賢司はさっき持って来た薬の味見をする。
   少しの量を注射器(ポンプ)に詰めて、水で溶かす。
   器用に片手で自分の静脈に針を刺す。

  ....かなりの上物だ。
   瞳はまだ切れてない状態だ。
   薬の量を調節して、注射器(ポンプ)に詰め水で溶かす。
   二本の注射器(ポンプ)を持って、賢司は寝室に入ってゆく....。
   ベッドの上では、瞳が震えていた。

 「どうした、瞳?」
 「あ....けん、じ....、離れない、で....」
 「大丈夫だ、ちゃんと傍にいるからな」

   薬のせいで、不安になってるな。
   これなら、絶対に俺から離れないだろうな。

 「瞳、腕を出せ」
 「え....な、に....?」

   賢司は瞳の腕を押さえて、静脈に針を刺す。
  途端に身体中を駆け巡る熱。

 「あ....つ、い....」
 「熱いか、効いた証拠だ。気持ちいいだろう?瞳」

   熱が身体中を駆け巡る。
   目が回る。
   胸が苦しい程に、早鐘を打っている。

 「さ、む....」

   今度は急速に冷えて来た。
   滝の様に流れ落ちる汗が、熱を奪ってゆく。

 「寒いのか?かなり効いたな。もう力も入らねぇだろ?」

   瞳の様子を伺っていた賢司が、毛布を掛けながら言った。
....大丈夫そうだな。
   瞳に変化がない事を確認してから、賢司は自分の腕に針を刺した。
   熱が巡って来る。
   かなりの上物だ。
   噴き出す汗と一緒に、賢司の理性も流れていった。

 「瞳....」

   賢司の腕が、瞳を抱き締める。
   四肢が冷たい。
  もう今のふたりに止められるもの等なかった。

 「瞳、俺は絶対にお前を放さない。それを忘れるな....」
 「あ....たし、も....」

   回らない頭で、瞳は賢司の言葉に相槌を打った。
   寒い....。

 「指先がこんなに冷え切ってるな。こっちはどうかな?」

   賢司が瞳の両膝をいっぱいに広げた。
   花芯が硬く、盛り上がっている。
   賢司は躊躇う事なく、その花芯に指を1本、挿入した。

 「ひぅ、あぅ、あっ、いいっ」

   悲痛なまでの、瞳の声に賢司は指の送還を繰り返した。

 「あっあっ....いい、気持ち、いい、の」
 「気持ちいいか、それじゃこれはどうだ?」

   賢司は瞳の乳首にクリップを挟んだ。

 「ひっ、いいっ、もっと、もっと....」
 「乳首感じるだろう?このまま乳首を苛め抜いたら、お前間違いなく狂うぜ」

  そんな事もうどうでもいい。
  瞳はただ賢司にもっと激しく苛めて欲しかった。
   狂うなら、狂ってもいい。
   枷の外れたマリオネットは、今まさに地獄の門を開けようとしていた。

 「くる、っても、い、い....」
 「大丈夫だ、お前を狂わすのはこの俺だけだからな」

  1本だった指を、2本に変えて、花芯の奥深くにあるGスポットを責め始めた。

 「ひっ、で、でちゃ....」

  ピュ!!
  瞳の花芯が潮を吹いた。

 「瞳、今潮吹いたぜ。何て厭らしいまんこなんだ」

  そう言いながら、乳首に挟んだクリップを両手で引っ張る。

 「ひっ、ひっ、いいっ、もっと痛くしてっ」

   今にも登りそうな、瞳の声....。
  まだ逝くのは、早いぜ。

 「お、みす....」

   口の中が渇き切って辛い。瞳が水を欲しがった。

 「飲めるか?」

   賢司は口移しで瞳に水を与える。
   半分は口の端から零れ落ちるが、辛うじて少しだけ口を潤した。

 「さぁ、どうして欲しい?」
 「おっぱい....苛めて」
 「やっぱりそこか」

   賢司は両手で瞳の胸を執拗に揉みしだく。
   固くなった突起を舌先で転がし、時折歯を立てる。

 「あぅっ、いいの、噛んで、もっと苛めてっ、いきそう....」

  いきてぇか?
  いかせてやるか。

 「瞳、これでいったら、瞳は俺に狂うぜ」

  賢司は妖しく笑いながら、瞳の乳首を掴んで捻り上げる。

 「ひぃっ、いいの、もっと苛めてっ」
 「俺に狂っても、いいんだな?」

  やっぱり瞳は真性のMだったな。
  賢司は探してた....。
  自分のS性に合う女を。

  散々遊び、色んな女を見てきた。
  覚醒剤から逃れたくても、逃れられずに、悪夢を見続ける女。

  覚醒剤欲しさに身体を差し出す女。

  こんな女にはちょっとした共通点がある。
  つまり、普通のSEXは出来なくなる。
   快感の度合いが桁違いだからだ。

   瞳は俺が付いている。
   他の誰にも触れさせやしねぇ。
....やっと見つけた天性の相性だからな。

 「瞳、いかせてやるよ」

  そう言って、賢司は瞳の乳首を両手で掴み捻り上げた。

 「ひっ....、あっ、あっ、い、く....」

  ガクリ!
   瞳の身体から力が抜けた。

 「本当に乳首でいったな....」

   満足気に賢司は頷いた。

 「完全に乳首の快感を覚えちまった様だな」

   賢司はそう言って、今度は瞳の固く突起した花芯の中心部に、バイブを充てる。

 「あっ、あっ、だめっ、感じ過ぎちゃう~」

   呆気なく瞳は達した。
  しかし、賢司はお構い無しにそのままバイブを充てる。

 「ひっ、あっ、だめっ、あぅ~」

   首が千切れる程に、激しく左右に振って瞳はまた絶頂を迎えた。
   瞳の呼吸が上がる。
   賢司は、今度はそのままバイブを固定して、乳首を責め立てた。

 「あっ、いいっ、乳首痛くして、いいの、もっと苛めてっ」

  その声は、絶叫に等しくなっていた。
 賢司は微笑みながら、乳首を掴んで捻り上げる。

 「あぅ~、もっと、もっと、乳首苛めてっ」

   賢司は満足していた。
   瞳がこれ程の素質を持っていたとは....。

 「瞳、最高に感じるだろう?俺も最高に楽しいぜ」
 「けん、じ....、だいす、き....」
 「あぁ、俺も瞳が大好きだよ。絶対にお前を放さないからな」

  そう言って、また乳首を責め立てた。


  覚醒剤(シャブ)には、二通りの使い方がある。

  ひとつは炙りと呼ばれるもので、大概はアルミホイルに覚醒剤(シャブ)を乗せて、アルミの下から火で炙る。
  覚醒剤(シャブ)が燃え上がり、煙りが立ち始める。それをストロー等で吸い込む。

  もうひとつの使い方は、覚醒剤(シャブ)を注射器(ポンプ)に入れて、水で溶かしたものを直接静脈に打つもの。

  後者の方が圧倒的に覚醒剤独特の快感を得られる。
  打った瞬間に全身に巡る熱と快感。
  再犯率が圧倒的に高いというのは覚醒剤だと言うのも頷ける。
  それだけ依存性が強いのだ。

   ただ....。
   打つ量を間違えたり、純度の高い覚醒剤をいつもと同じ量を打ってしまったら、そこに待っているのは....死。
   常に死と快感は隣り合わせだと言う事だろうか?
  尤(もっと)も末端で売られているものに、そんなに上物等ないだろう。
  大概は何かを混ぜて、量を増やして利益を得ているものだ。

  覚醒剤の入った小さな袋、(通称パケと呼ばれるもの)
 これひとつで0.2~0.3gが良いところだろう。
  これで1万円が末端の相場だろう。
  高いか安いかは、個人の考え方だ。
  賢司はそれをいとも簡単に純度の高いものを、10g引いて来た。
  さすが元売人と言った所だろうか。
  薬を見極める目も、かなりのものだった....。

  覚醒剤(シャブ)を打っている人は、静脈に針が刺さって血液がスッと螺旋を描いて逆流する様が何とも言えなく好きだと言う。
 それを確認する様に、押し棒を引く。
  赤黒い血液が注射器に入り、覚醒剤溶液と混ざり合う。
 それを一気に静脈に押し入れる。
 身体中に巡る熱。
 全身から吹き出す汗。
 対称的に急速に冷えて行く四肢。
 髪の毛が逆立つ様な感覚は、多分に脳が憶えた記憶なのだろう。
 消える事のない記憶だった。

 人は快楽を求め、またその快楽に溺れて己れを見失う。
 愚かにして、滑稽な生き物だと思う。
 眠る事なく、また食べる事すら忘れて、快楽に全身すっぽりと支配されてしまう。
それでも、この悪魔の薬に蝕まれて己れを見失う輩が、今も何処かに必ずやいる事だろう。
 後は薬に喰われるか、それとも薬を上手くコントロールして自分のものにするか、二者択一だと思う。

 賢司は巧みに薬を使う。
けれどそんな賢司ですら一度身体に薬が入ってしまえば、理性も糞も吹き飛んでしまう。
 目の前の獲物に貪り食らい付くハイエナの如くに、瞳の身体を凌辱してゆく。

 瞳もまた、賢司からの快楽に溺れてゆくのだった。
 賢司は最初から覚醒剤(シャブ)を注射器で憶えた。
 だから賢司には炙りでは効かない。
 無論、瞳もまた賢司の手によって初めから静脈に打たれた。
 瞳の身体や脳裏に焼き付いた快楽は、生涯忘れ去る事等不可能だろう。

....ふたりはかれこれ12時間は互いの身体を貪っていた。
 時間の感覚がずれるのも、この薬の特徴だった。

 「あっ、はっ、あぁ~っ。い、くっ」

もう何十回絶頂を迎えただろう?
 瞳の身体にも、限界が来ていた。

 「け、んじ....少し、休ませて....」

  懇願する様に、瞳は賢司に呟いた。
  疲れが出てきたという事は、薬がキレてきたのか....。
  しばし賢司は考えると、おもむろに注射器に薬を詰め始めた。
  注射器に水を吸い込むと、瞳の腕を掴んだ。

 「賢司....、やめ、て....」

  瞳の哀願する声も賢司の耳には届かなかった。
 そのまま....。
  瞳はまた覚醒剤を打たれてしまい、また自分を失くしてしまう。

 「あ、はっ、はっ、あぁ....、あ、つい....」
 「もう疲れも感じねぇだろう?瞳。此処は別の様だかな?」

  瞳の固く冷たくなった花芯に、ぴちゃぴちゃと、淫猥な音を立てて舐め始めた。
  瞳の花芯から溢れて留まる事すら忘れた愛液が、止めどなく流れて来ていた....。
 ぴちゃぴちゃと、淫猥な音を響かせて、賢司は瞳の固くなった花芯を舐め続ける。

 「ひっ、ひっ、ひっ....」

  その声は、歓喜なのか、苦痛なのかすら判別し難い悲痛な声だった。
   瞳の身体は覚醒剤で全身が性感帯と化していたが、その身体は既に疲労が限界まで達していた。

(このまま続いたら、あたしは....どうなるの....?)

  困惑が瞳を襲う。
 そして、いつしかそれは一種の猥怖に変化していった....。

 「け、んじ....」
 「あぁ....、どうした?瞳」

  返事をしながらも、賢司は瞳の花芯に指を入れ、その中を掻き回す。

 「ひっ、あっ、あっ~」

....呆気なく登り詰めた。
と、同時に瞳は失神してしまった。

 「瞳....、また失神か」

   口元に、薄笑いを浮かべながら、賢司は既に失神している瞳の花芯を今度はバイブで掻き回す。
  ビクッビクッっと反応する瞳の身体。

 「気絶してても感じるってか?」

   薄笑いはいつしか下卑た高笑いに変わっていった....。

 「愛してるぜ....瞳....」

  ハァハァと、荒い息遣いの下で、賢司は瞳の下半身に集中していた。
  瞳という最高級の相性のパートナーを手中にした賢司の、歯車が音を立てて軋み出す。
 その中で、瞳の下半身から発する湿った音だけが、部屋の中に響き渡る....。

 「ひっ、や、め....。いたっ!」

  突如瞳の叫ぶ声が、賢司の耳に響いた。
  瞳は、下半身を引き裂かれる様な痛みに、我に返った。
  賢司は瞳のアナルにバイブを無理矢理挿入した。
  瞳のアナルは、裂傷による出血が見られた。

 「瞳....、気が付いたか?どうだ?後ろの穴の感触は」
 「けん....、い、たい、よ....」
 「痛みなんか直ぐに快感に変わるぜ」

  そう言っては、瞳の血濡れたアナルにバイブを挿入し、動かす。
  次第に痛みが快感へと変わって行くのを、瞳自身も感じていった。

 「あっ、はっ、はっ....あぅっ」
 「瞳、後ろの穴でもいかせてやるよ。狂う程にな」

   実際後ろの穴でいった女が完全に狂う様を、賢司はその身で体験済みだった。
   最もその女は、元々ジャンキーで、賢司のただの暇潰しの材料にしか過ぎなかったのだが。
  それでも、一度限りと約束させて遊んでやった女に、しつこく付きまとわれて賢司は、その女を始末した。

   始末と言っても、殺した訳じゃない。
   世の中には、ジャンキーはそれこそ掃いて棄てる程いる。
  その女をただそいつらの玩具として、提供してやっただけの話だ。
  賢司にとって、遊びの女がどうなろうと、知った事じゃなかった。

  けれど、瞳は違う。
  瞳は賢司が初めて本気で惚れた女だった。
  だからこそ、瞳を手放したくない思いが強かった。
  その為には、覚醒剤が必要不可欠だった。
  それも哀しい賢司の運命の悪戯だったのかも知れない。
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