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ブランジァン視点
「どうだった?」
学校が終わったら真っすぐ王宮に向かった。
暫くすると護衛を終えたディランが戻ってきた。
現在、王宮の客間には私とディラン、リュウがいる。
なぜかというとアニスのことだ。信じられないかもしれないけど彼女が偽物であるという可能性が浮上しているからだ。
ただあそこまでそっくりだと考えにくい。
けれどディランとリュウは確信しているようだ。護衛として一日の大半を一緒に過ごしているから持てている確信なのかもしれない。
私は学校で接触したアニスを思い浮かべる。
「今までのが自分を特別視することに対する反発から演じていた。無駄だったので悪女からいい子ちゃんに戻ったっていうアニスの意見は少し無理があるかもしれないけどなくはない話だと思うわ」
でも決定的におかしな点がある。
私には王家やその関係者しか知らない特技がある。それは人の魔力量を見ることができるのだ。
「でも魔力量はかなり低かった。今までのアニスの足元にも及ばない少なさよ。魔力量が減少するなんて事象は報告にないからたぶんない。彼女がその最初の犠牲者でなければだけど」
「魔力量が少ない?」
ディランとリュウの目が鋭くなり、二人とも眉間に皴を寄せている。
「だがあいつは聖女の仕事を普通にこなしていたぞ」
ディランの言葉を私はあり得ないとすぐに否定した。彼女の魔力量は普通の人よりも少ない。聖女の仕事をこなせる魔力量ではない。浄化も治癒魔法も通常よりも魔力を使う。彼女の魔力で使用をするのは難しい。
そのことを私が伝えると「まさか」と呟いたリュウは顔を真っ青にしていた。
「魔力回復薬と魔力増幅薬。この二つを摂取すれば可能だろう」
「それでも複数、摂取する必要があるわ。治癒魔法は聖女の仕事ではかなり使用するはずです」
「つまり彼女は規定量を超えた薬を仕事の度に摂取しているということか」
「それも二種類も」
ディランとリュウはとても厳しい顔をしていた。私はまだ信じられない気持ちで二人を見ていた。
「この二つの薬は過剰摂取していいものではないわ。体にかなりの負荷があるはずよ。あの子の魔力量で聖女だと誤魔化すには負荷が大きすぎる。それに彼女が本当に偽物だとして、本物のアニスはどこへ行ったの?」
「何度か体調不良を起こしていたな」
リュウはため息交じりに言う。気づけなかった自分に対して怒りを感じているように思う。
「あそこまで似ているんだ。血縁者なのは間違いない。現場を抑えて本物のアニスについて聞き出せばいい」
「聖女の仕事に対して彼女は誠実だった。乱暴を働くのなら容認できない」
リュウの言葉をディランは鼻で笑う。
「性悪女のアニスと繋がっているんだぞ。それさえも演技の可能性がある」
ディランの言葉に私は頷くことができなかった。魔力回復薬と増幅薬の過剰摂取による危険性を十分に理解していたからだ。
「命を落とす危険だってあるのよ。そこまでしてアニスになる理由は何?」
「知るか」
「アニスの命令に逆らえない立場にあるのかもしれないな。その場合、目的までは知らないかも」
「はっ。他人の命令に命をかけるのか。とんだお人好しだな」
ディランは心底軽蔑するような目をしていた。彼の育った環境を考えると仕方がないのかもしれない。きっと理解できないのだろう。逆らう意思を持つことができない人間のことを。
「そういう人間だっている。それに彼女が本物だという可能性もまだ残っている。慎重に動いた方が良い」
そこだけはディランも賛同した。
「ブランジァン、可能な限り聖女の傍に居て監視しておいてくれ」
「分かったわ」
私たちの話し合いはここで終了した。
「どうだった?」
学校が終わったら真っすぐ王宮に向かった。
暫くすると護衛を終えたディランが戻ってきた。
現在、王宮の客間には私とディラン、リュウがいる。
なぜかというとアニスのことだ。信じられないかもしれないけど彼女が偽物であるという可能性が浮上しているからだ。
ただあそこまでそっくりだと考えにくい。
けれどディランとリュウは確信しているようだ。護衛として一日の大半を一緒に過ごしているから持てている確信なのかもしれない。
私は学校で接触したアニスを思い浮かべる。
「今までのが自分を特別視することに対する反発から演じていた。無駄だったので悪女からいい子ちゃんに戻ったっていうアニスの意見は少し無理があるかもしれないけどなくはない話だと思うわ」
でも決定的におかしな点がある。
私には王家やその関係者しか知らない特技がある。それは人の魔力量を見ることができるのだ。
「でも魔力量はかなり低かった。今までのアニスの足元にも及ばない少なさよ。魔力量が減少するなんて事象は報告にないからたぶんない。彼女がその最初の犠牲者でなければだけど」
「魔力量が少ない?」
ディランとリュウの目が鋭くなり、二人とも眉間に皴を寄せている。
「だがあいつは聖女の仕事を普通にこなしていたぞ」
ディランの言葉を私はあり得ないとすぐに否定した。彼女の魔力量は普通の人よりも少ない。聖女の仕事をこなせる魔力量ではない。浄化も治癒魔法も通常よりも魔力を使う。彼女の魔力で使用をするのは難しい。
そのことを私が伝えると「まさか」と呟いたリュウは顔を真っ青にしていた。
「魔力回復薬と魔力増幅薬。この二つを摂取すれば可能だろう」
「それでも複数、摂取する必要があるわ。治癒魔法は聖女の仕事ではかなり使用するはずです」
「つまり彼女は規定量を超えた薬を仕事の度に摂取しているということか」
「それも二種類も」
ディランとリュウはとても厳しい顔をしていた。私はまだ信じられない気持ちで二人を見ていた。
「この二つの薬は過剰摂取していいものではないわ。体にかなりの負荷があるはずよ。あの子の魔力量で聖女だと誤魔化すには負荷が大きすぎる。それに彼女が本当に偽物だとして、本物のアニスはどこへ行ったの?」
「何度か体調不良を起こしていたな」
リュウはため息交じりに言う。気づけなかった自分に対して怒りを感じているように思う。
「あそこまで似ているんだ。血縁者なのは間違いない。現場を抑えて本物のアニスについて聞き出せばいい」
「聖女の仕事に対して彼女は誠実だった。乱暴を働くのなら容認できない」
リュウの言葉をディランは鼻で笑う。
「性悪女のアニスと繋がっているんだぞ。それさえも演技の可能性がある」
ディランの言葉に私は頷くことができなかった。魔力回復薬と増幅薬の過剰摂取による危険性を十分に理解していたからだ。
「命を落とす危険だってあるのよ。そこまでしてアニスになる理由は何?」
「知るか」
「アニスの命令に逆らえない立場にあるのかもしれないな。その場合、目的までは知らないかも」
「はっ。他人の命令に命をかけるのか。とんだお人好しだな」
ディランは心底軽蔑するような目をしていた。彼の育った環境を考えると仕方がないのかもしれない。きっと理解できないのだろう。逆らう意思を持つことができない人間のことを。
「そういう人間だっている。それに彼女が本物だという可能性もまだ残っている。慎重に動いた方が良い」
そこだけはディランも賛同した。
「ブランジァン、可能な限り聖女の傍に居て監視しておいてくれ」
「分かったわ」
私たちの話し合いはここで終了した。
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