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「‥‥・」
私はベッドの上に寝かされている。とても豪華な部屋だ。少なくとも我が家ではない。
何があったのだろう。
私は昨日に引き続き魔物が出現したとのことで現場に向かった。
治癒魔法での治療や土地の浄化を行ったことは覚えている。
任務は完了したはず。
「アニス様、お目覚めになったのですね」
見慣れない侍女が私を見て安堵の息をもらした。
「あなたは?ここはどこ?」
「ここは王宮の客室です。私は王宮侍女のルイと申します」
「!?」
‥‥・王宮
「覚えていらっしゃいませんか。アニス様は任務を終え、帰還途中でお倒れになったのですよ」
朝から体調を崩していたしその上で魔力増幅薬を飲んだのだ。無理もないか。本来なら立て続けに服用するものではないし。
ルイは「失礼します」と言って私の額に触れる。
とても温かな手だ。何をしているのだろう。
「まだ熱がた高ございますね。お邸に使者を送らせていただきます。今日はこのままお休みくださいませ」
「ダメっ」
思わず叫んでしまった。
使者を送る手配をする為に踵を返したルイは私が急に大声を出すものだから驚いて振り返る。
私は咄嗟に起き上がって叫んだが、目の前がぐらついた。意識が一瞬真っ暗になりまた倒れるかと思った。
「いけません。急に起き上がっては。お体に障ります」
私を心配してルイが駆け寄ってきてくれたけど今はそれどころではない。
この程度のことで王宮に迷惑をかけたことを邸の人達に知られると何をされるか分からない。
「わ、私は大丈夫です。帰るので、使者は必要ありません」
「しかし」
アニスならこの程度で体調を崩したりしない。私はアニスだ。だからこの程度で倒れてはいけない。
私は彼女を安心させるために彼女の制止を無視してベッドから起き上がった。
立とうとして足元がふらついた。
倒れないように踏ん張ったけど全く踏ん張りがきかなかった。
「っ」
倒れると思ったけど衝撃がくることはなかった。
男らしい熱い胸板が私を受け止めた。
見上げるとリュウが私を受け止めてくれていた。彼は相変わらずの無表情で私を見つめた後、私を抱き上げてベッドに寝かせる。
「使者は既に送ってある」
「!?」
「何が問題なんだ?」
リュウの陰に隠れて気づか中ってけどディランもいたようだ。
驚く私をじっと観察しながらディランは言葉を続ける。
「お前の両親はお前を溺愛している」
そうだ。知っている。彼らはアニスをとても大切にしていた。
「し、心配をかけたくないので」
「本当にそれだけか?」
ディランは私の言葉を疑っている。彼は私がアニスではないと疑っているのだろうか?
上手くアニスになりきれていないのは分かっている。それにアニスのままを演じていたら問題があるので敢えてしていない部分もある。疑問に思われるのは当然だ。でも、別人だと疑われるはずがない。見た目はここまでそっくりなのだから。
それに誰も私の存在を知らない。疑いようがないのだ。
「はい」
私の返答にディランはじっと私を観察した後舌打ちをして出て行った。
「すでに邸には使者を送っている。今日はもう休め。体調不良に気づかなくて悪かった」
リュウはそう言って部屋を出て行った。
私はベッドの上に寝かされている。とても豪華な部屋だ。少なくとも我が家ではない。
何があったのだろう。
私は昨日に引き続き魔物が出現したとのことで現場に向かった。
治癒魔法での治療や土地の浄化を行ったことは覚えている。
任務は完了したはず。
「アニス様、お目覚めになったのですね」
見慣れない侍女が私を見て安堵の息をもらした。
「あなたは?ここはどこ?」
「ここは王宮の客室です。私は王宮侍女のルイと申します」
「!?」
‥‥・王宮
「覚えていらっしゃいませんか。アニス様は任務を終え、帰還途中でお倒れになったのですよ」
朝から体調を崩していたしその上で魔力増幅薬を飲んだのだ。無理もないか。本来なら立て続けに服用するものではないし。
ルイは「失礼します」と言って私の額に触れる。
とても温かな手だ。何をしているのだろう。
「まだ熱がた高ございますね。お邸に使者を送らせていただきます。今日はこのままお休みくださいませ」
「ダメっ」
思わず叫んでしまった。
使者を送る手配をする為に踵を返したルイは私が急に大声を出すものだから驚いて振り返る。
私は咄嗟に起き上がって叫んだが、目の前がぐらついた。意識が一瞬真っ暗になりまた倒れるかと思った。
「いけません。急に起き上がっては。お体に障ります」
私を心配してルイが駆け寄ってきてくれたけど今はそれどころではない。
この程度のことで王宮に迷惑をかけたことを邸の人達に知られると何をされるか分からない。
「わ、私は大丈夫です。帰るので、使者は必要ありません」
「しかし」
アニスならこの程度で体調を崩したりしない。私はアニスだ。だからこの程度で倒れてはいけない。
私は彼女を安心させるために彼女の制止を無視してベッドから起き上がった。
立とうとして足元がふらついた。
倒れないように踏ん張ったけど全く踏ん張りがきかなかった。
「っ」
倒れると思ったけど衝撃がくることはなかった。
男らしい熱い胸板が私を受け止めた。
見上げるとリュウが私を受け止めてくれていた。彼は相変わらずの無表情で私を見つめた後、私を抱き上げてベッドに寝かせる。
「使者は既に送ってある」
「!?」
「何が問題なんだ?」
リュウの陰に隠れて気づか中ってけどディランもいたようだ。
驚く私をじっと観察しながらディランは言葉を続ける。
「お前の両親はお前を溺愛している」
そうだ。知っている。彼らはアニスをとても大切にしていた。
「し、心配をかけたくないので」
「本当にそれだけか?」
ディランは私の言葉を疑っている。彼は私がアニスではないと疑っているのだろうか?
上手くアニスになりきれていないのは分かっている。それにアニスのままを演じていたら問題があるので敢えてしていない部分もある。疑問に思われるのは当然だ。でも、別人だと疑われるはずがない。見た目はここまでそっくりなのだから。
それに誰も私の存在を知らない。疑いようがないのだ。
「はい」
私の返答にディランはじっと私を観察した後舌打ちをして出て行った。
「すでに邸には使者を送っている。今日はもう休め。体調不良に気づかなくて悪かった」
リュウはそう言って部屋を出て行った。
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