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第三章

36.ルルーシュ視点

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地下牢はかび臭さと一緒にすえた匂いがした。
一番奥の地下牢に薄汚れた男が入っている。
男は俺の存在に気づくとギラギラと血走った眼を向けてきた。
ガシャンッ
俺を噛み殺そうと、俺に少しでも近づこうとするけど両手両足を鎖で繋いでいる為彼は俺に近づくことすらできない。
「へぇ~。まだ動けるんだ。凄いね。あれだけ痛めつけたのに」
不愉快だったから声は先に潰しておいた。
だから彼は唸り声しか上げられない。
「あはは。まるで本物の獣だね」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぐがぁっ」
唾と血を吐き散らしながら唸る男を手袋をつけた手で殴った。
「うるさいよ」
男の顔は判別ができないほど腫れあがり手足の骨は折っている。
「君たち獣って哀れだよね。自分の意志に関係なく『運命』が決めた相手しか愛せないなんて。まるで呪いじゃないか。そんなものを後生大事にするなんて滑稽だね」
腹を蹴り、折った足を踏みつけた。
痛みで唸る男は息も絶え絶えだ。
獣人の生命力ってゴキブリ並みだなと思いながら俺は手袋が血で染まるほど殴り続けた。
「君がセイレーンと婚約破棄したのはいいよ。君にはもったいない人だからね。でも傷つけるのは許さない」
虚ろな目で地面を見つめる男の前髪を鷲掴みにして無理やり俺の方に向かせるけど視線は合わない。
意識が朦朧としていて虚空を見ている感じだ。
「安心してよ。セイレーンは俺が幸せにするから、君はそこでくたばってな」
もう何の反応も示さない男に俺は最後の爆弾を落とす。
「君の大好きな番のところに逝かせてあげる。ああ、そうそう。言い忘れてたけど君の番を殺したのは俺だから。最後の最後まで醜くて無様だったよ」
「ぐがぁぁっ」
瞬間、男は暴れ出した。
ガシャンッ、ガシャンッと音を立てて何とか俺のところに行こうとする。
壁に繋がれた鎖が外れそうになっているのには驚いた。あれだけ痛めつけたのにまだそんな力があるとは思わなかった。
「まぁ、俺には関係ないけどね」
ぐしゃり
男の頭を壁に叩きつけて潰した。
ぐったりとゴミになった体が崩れて行く。もう暴れることも耳障りな唸り声をあげることもない。
「バイバイ、ディアモン・ジュノン」
番である女を失ってから彼は空いた穴を埋めるように女で遊ぶようになった。
さんざん遊んだ挙句、その女が番の女でないこと気づき、絶望して暴力を振るう。どれも貧民街の女だばかりなので泣き寝入りする女ばかりで問題にはならなかった。
その程度で終わるんだったら問題はなかった。
愚かで哀れな男の末路に興味はない。
問題なのは彼の矛先がセイレーンに向いたこと。
セイレーンがいるから番が消えた。セイレーンの存在が自分の運命を狂わせた。セイレーンさえいなければ。
そんな思いを抱くようになったディアモンはセイレーンを誘拐する計画を立てていた。
計画と呼ぶにはあまりにも杜撰なものだった。
念の為、ディアモンに見張りをつけておいて良かった。彼につけていた見張りのおかげで奴の行動は全て俺に筒抜けだった。
俺はすぐに行動を起こした。
ディアモンを誘拐して地下牢に監禁。自分が犯そうとした罪の深さを思い知らせるためにここで痛め続けた。
「いっそう殺してくれ」と思わせるほどの苦痛を与え、それでも今日まで生かし続けた。
「残りのゴミも片付けないと」
残すゴミはあの義妹とセイレーンを貶めようとした馬鹿な獣たち。
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