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オードブル
Ⅲ.魔王降臨により派閥は一日目で解散しました。
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知らない間に派閥ができていた。
私の派閥は男爵家から公爵家まで幅広く、ジュリアの派閥は伯爵以上の者が入っている。
私はこんな派閥を作るつもりはなかったのだが。
というか、派閥の長をしているつもりもない。
周りの人間が勝手に私に付きまとっているだけなのだ。
はっきり言って鬱陶しい。
多分、彼らは私とお近づきになるように親に言われているのだろう。
「カーティス公爵令嬢、今日も大変美しいですね」
と、ごますりをするようなポーズでどこかの子息が私に近づく。
「ありがとうございます。けれど、美しい花はそこかしこに咲いておりますのでどうぞ、お気になさらず」
「ご謙遜を」
「あなたよりも美しい花など我々は知りません」
いや、本当にうざい。
因みに私達がいるのは食堂だ。
私は一人で来て、ゆっくりと食べたかったのだが腰ぎんちゃくのようにくっついて離れない連中が大勢いる。
「カーティス公爵令嬢、先程の授業素晴らしかったですわ」
「本当に、カーティス公爵令嬢は博識でいらっしゃいます」
これ、どうにかならないだろうか。
「レイラ」
そう、思っていた私に救いの手が差し伸べられた。
「お兄様」
兄は人の好い笑みを浮かべ、私に近づく。
私の周りに居た令嬢は頬を染め、急に身だしなみを気にし始める。
相変わらずお兄様は令嬢達に絶大な人気を誇っているようだ。
そのお兄様だが私の周りに居る人間に視線を向け、にっこりと微笑むがそれが表向きだけだということは私だけは分かった。
「私の妹と仲良くしてくれてありがとう」
誰に言うでもなく、言うと「いいえ」、「当然ですわ、クラスメイトですもの」などの答えが返って来た。
兄は更に笑みを深める。
それを直視できずに俯いてしまった令嬢は気づかない。
だが、真正面から兄を見つめている子息たちは気づき、顔を引きつらせ、無意識だろうが足も若干引いている。
「でもね、私の妹は君達と違って一人で何でもできるんだよ」
急に声音が変わったことを不思議に思い、顔を上げた令嬢は紅色の頬を瞬時に青くさせた。
何とも器用なことだ。
「ミレイユ公爵令嬢とのことは私の耳にも届ているよ。
でも、些細なすれ違いではないかな?
それをくだらない派閥を本人の了承もなく作って騒ぎ立てるのは如何な物かな?」
「そんな、俺達にはそんなつもりは」
「おや、ではどんなつもりでここに居るのかな?
まさか、この私の可愛い妹にちょっかいを出そうなんて考えていないよね」
ニッコリと兄は微笑んでいるが言われた男子生徒は土気色だ。
「カーティス公爵家とお近づきになりたいと思う君達の心意気は高く評価するよ。
貴族なら当然のことだ。決して間違いではない。
でも、行き過ぎた行為は不興しか買わないから気を付けることだね」
「・・・・・はい」
青ざめた一同の返事を聞き、満足したのか兄は家で見せてくるいつもの笑顔に戻った。
「では、レイラ。一緒に食事をしよう。
折角会えたんだから、勿論お兄様と一緒に食事を取ってくれるよね」
「・・・・はい」
逆らってはいけないと本能が教えてくれました。
「では、みなさま、ごきげんよう」
煩わしい集団から離れて兄の所に行くと背後から「あれが噂の魔王か」、「笑顔が怖かった」、「普段はあんなに温和な方なのに」、「学校の暗黙の了解の一つと聞きましたわ、魔王は起こすなと」などという分かるような、でもやっぱり分からないような、というか分かりたくない言葉が聞こえてきました。
背後の言葉に耳を傾けながら兄を見ると、兄は分かっていながら「どうかしたの?」と首を傾けて聞いてきます。
なので、全力で何も聞いていなことにしました。
「レイラも気を付けることだね。
貴族というのはどん欲だ。
隙を見せれば骨までしゃぶるよ。
昨日の些細なことで直ぐに派閥何て作って君に取り入ろうとしたのが良い例だ」
「はい。迂闊でした。気を付けます」
「そうだね。学校というところは社交界と同じだ。
学校は社交界の模擬戦と考えた方が良い。
社交界でも学校でも噂になれば直ぐに誰もかれもが叩きに来る。
それで没落の一途を辿る家なんて珍しくはないんだから」
「はい、反省しています」
昨日、私はミレイユ公爵令嬢とちょっとした口論まではいかないがそれに近いことがあった。
それを放置していたので派閥を勝手に作られたのだ。
もし、派閥を作られると派閥の人間が起こした不祥事さえ、その長のせいにされてしまうから派閥というのは作らない方が良いのだ。
その為にも次からは何かしらのフォローが居るだろう。
貴族社会って面倒くさい。
私の派閥は男爵家から公爵家まで幅広く、ジュリアの派閥は伯爵以上の者が入っている。
私はこんな派閥を作るつもりはなかったのだが。
というか、派閥の長をしているつもりもない。
周りの人間が勝手に私に付きまとっているだけなのだ。
はっきり言って鬱陶しい。
多分、彼らは私とお近づきになるように親に言われているのだろう。
「カーティス公爵令嬢、今日も大変美しいですね」
と、ごますりをするようなポーズでどこかの子息が私に近づく。
「ありがとうございます。けれど、美しい花はそこかしこに咲いておりますのでどうぞ、お気になさらず」
「ご謙遜を」
「あなたよりも美しい花など我々は知りません」
いや、本当にうざい。
因みに私達がいるのは食堂だ。
私は一人で来て、ゆっくりと食べたかったのだが腰ぎんちゃくのようにくっついて離れない連中が大勢いる。
「カーティス公爵令嬢、先程の授業素晴らしかったですわ」
「本当に、カーティス公爵令嬢は博識でいらっしゃいます」
これ、どうにかならないだろうか。
「レイラ」
そう、思っていた私に救いの手が差し伸べられた。
「お兄様」
兄は人の好い笑みを浮かべ、私に近づく。
私の周りに居た令嬢は頬を染め、急に身だしなみを気にし始める。
相変わらずお兄様は令嬢達に絶大な人気を誇っているようだ。
そのお兄様だが私の周りに居る人間に視線を向け、にっこりと微笑むがそれが表向きだけだということは私だけは分かった。
「私の妹と仲良くしてくれてありがとう」
誰に言うでもなく、言うと「いいえ」、「当然ですわ、クラスメイトですもの」などの答えが返って来た。
兄は更に笑みを深める。
それを直視できずに俯いてしまった令嬢は気づかない。
だが、真正面から兄を見つめている子息たちは気づき、顔を引きつらせ、無意識だろうが足も若干引いている。
「でもね、私の妹は君達と違って一人で何でもできるんだよ」
急に声音が変わったことを不思議に思い、顔を上げた令嬢は紅色の頬を瞬時に青くさせた。
何とも器用なことだ。
「ミレイユ公爵令嬢とのことは私の耳にも届ているよ。
でも、些細なすれ違いではないかな?
それをくだらない派閥を本人の了承もなく作って騒ぎ立てるのは如何な物かな?」
「そんな、俺達にはそんなつもりは」
「おや、ではどんなつもりでここに居るのかな?
まさか、この私の可愛い妹にちょっかいを出そうなんて考えていないよね」
ニッコリと兄は微笑んでいるが言われた男子生徒は土気色だ。
「カーティス公爵家とお近づきになりたいと思う君達の心意気は高く評価するよ。
貴族なら当然のことだ。決して間違いではない。
でも、行き過ぎた行為は不興しか買わないから気を付けることだね」
「・・・・・はい」
青ざめた一同の返事を聞き、満足したのか兄は家で見せてくるいつもの笑顔に戻った。
「では、レイラ。一緒に食事をしよう。
折角会えたんだから、勿論お兄様と一緒に食事を取ってくれるよね」
「・・・・はい」
逆らってはいけないと本能が教えてくれました。
「では、みなさま、ごきげんよう」
煩わしい集団から離れて兄の所に行くと背後から「あれが噂の魔王か」、「笑顔が怖かった」、「普段はあんなに温和な方なのに」、「学校の暗黙の了解の一つと聞きましたわ、魔王は起こすなと」などという分かるような、でもやっぱり分からないような、というか分かりたくない言葉が聞こえてきました。
背後の言葉に耳を傾けながら兄を見ると、兄は分かっていながら「どうかしたの?」と首を傾けて聞いてきます。
なので、全力で何も聞いていなことにしました。
「レイラも気を付けることだね。
貴族というのはどん欲だ。
隙を見せれば骨までしゃぶるよ。
昨日の些細なことで直ぐに派閥何て作って君に取り入ろうとしたのが良い例だ」
「はい。迂闊でした。気を付けます」
「そうだね。学校というところは社交界と同じだ。
学校は社交界の模擬戦と考えた方が良い。
社交界でも学校でも噂になれば直ぐに誰もかれもが叩きに来る。
それで没落の一途を辿る家なんて珍しくはないんだから」
「はい、反省しています」
昨日、私はミレイユ公爵令嬢とちょっとした口論まではいかないがそれに近いことがあった。
それを放置していたので派閥を勝手に作られたのだ。
もし、派閥を作られると派閥の人間が起こした不祥事さえ、その長のせいにされてしまうから派閥というのは作らない方が良いのだ。
その為にも次からは何かしらのフォローが居るだろう。
貴族社会って面倒くさい。
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