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第Ⅰ章

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 私はアルビノ
 白金の髪に青みのかかった目をしている日本人
 人と違うことはそんなにいけないことでしょうか?
 学校に行くと私はいつものように暴行を受ける。
 お腹を蹴られても、顔を殴られてももう、痛みを感じなかった。
 全部に目を閉じればいい。
 何も感じないように全ての感覚をシャットアウトすればいい。
 そうしたらいつの間にか痛みは過ぎ去っていくから。
 そうしたら彼女達は飽きて、すぐにどこかに行ってくれるから。
 大丈夫。
 痛みなんて感じない。
 大丈夫。
 傷ついたりしない。
 大丈夫。
 絶望なんてしない。
 現状を嘆いたりしない。
 だって、意味がないから。
 手を伸ばしたところで、助けを求めたところで振り払われるなら何もしない。
 耐えるだけ。
 だって、振り払われた手はどこに行けばいい?
 行く宛てのない手は下に下ろすしかないじゃないか。
 ならそんな無駄な労力は支払わない。
 無駄に体力を消耗させる必要はどこにもない。
 「大丈夫?」
 耐えている間に女子の集団はいつの間にか消えていた。
 代わりに少し高めの男の声がした。
 視線だけを上に向けるとそこには心配そうに私を見下ろす男子生徒が居た。
 随分珍しい光景だと他人事のように思っていた。
 「えっと、大丈夫?」
 見上げる私から声がないことを心配して、男子生徒はもう一度声をかけて来た。
 私は痛む体を無視して起き上がった。
 途中、その男子生徒が心配そうに慌てて私を助け起こそうとしたけれど私はその手を振り払った。
 「ねぇ。本当に大丈夫?」
 「あなたには関係ない」
 「そんなことないよ。そんなにボロボロになって。
 本当に大丈夫なの?病院一緒に行こうか?」
 「構わないで」
 訳が分からない。
 どうしてこの男は私に構うのだろう。
 自分から声をかけてくる人間は大抵が嘲笑の的にする者ばかりだった。
 「俺、黒川正人くろかわまさとって言うんだ。
 君は神山柚利愛だろ。
 結構学校の中で有名だから知ってたんだ。
 アルビノって初めて見たけど、本当に白いんだな」
 「物見遊山なら帰ってくれる?
 動物園のパンダですら客はお金を払っているのに、タダで見せる気はないわ。
 それともアルビノは動物以下なのかしら?」
 皮肉のように言えば黒川正人と名乗った男は少し慌てた。
 面白いと思った。
 何も慌てることなんてない。
 私の言葉に怒るなり肯定するなりすればいい。
 人間というものはそういうものでしょう。
 「ごめん、そういうちもりで言ったわけじゃないんだ。
 俺はただ君と仲良くしたくって」
 「・・・・どうして?」
 そんなことを言ってくれた人間は初めてだった。
 「君、ピアノのコンクールに出ていたろ。
 俺の姉貴が実はそのコンクールで準優勝だったんだ」
 「・・・・そう」
 「君のピアノ、凄かったよ。何て言うか、心が震えた。
 とても感動して、君みたいな子と仲良くなりたいって思ったんだ」
 それは本心だろうか?
 「あなた、私のこと何も知らないの?
 私なんかと構うと、あなたも群れから外れることになるわよ」
 何も分かっていない顔をする黒川正人を無視して私はその場を去った。
 これ以上、この訳の分からない男に付き合うのはごめんだ。
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