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番外編
バートランド
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初めまして。私はバートランド・アイルシュタイン。私は聖女様の専属護衛に任命された。それはとても栄誉なことだと分かってはいる。分かってはいるが・・・・・。
「どうして、どうして私なの」
そう繰り返して泣き続けるヒナコ様を見て、ため息が出た。
異界より召喚された女性は二人。うち一人はミズキ様というこの国の女性にしては珍しい髪の短い女性だ。黒曜のような目には強い意思が感じられた。
それを裏切らないように彼女は状況把握に努めたり、自分の中で優先事項を定めて動いている。そんな彼女の魅力にひかれたのか。
私の親友であるエイル。顔は整っているが、無表情で無関心がデフォルトの彼に近づこうとする勇気ある令嬢は少ない。そんなエイルが珍しくミズキ様を気に入り、少しでも男が近づこうものならその鋭い眼光で牽制していた。
しっかり者のミズキ様だが、鈍いところもあるみたいでそんな男たちの視線にも、エイルの気持ちにも気づいはいないようだ。
そんなちょっと抜けているところは愛らしく思ってしまう。きっと彼女の魅力の一つなのだろう。
「無理だよ。できるわけない」
私はもう一度泣いている聖女様を見た。
つい先ほど、ヒナコ様は文献に載っている『聖なる光』というものを発して、聖女認定された。けれど彼女には荷が重かったのだろう。あれ以来、部屋に閉じこもり、ずっと泣いている。
私はもう一度ため息をついた。
「ヒナコ様。大丈夫ですよ。聖女としての力をコントロールできるようにみなが協力してくれますし、あなたに全責任を押し付けるような愚か者はおりません」
私は笑顔を心がけてそう言った。ヒナコ様は一度私を涙で濡れた目で見る。そして直ぐに視線を落とす。
「む、無理だよ。そ、そういう問題じゃないもん。何で、私なの?ミズキなら分かるけど。私には無理だよ」
そう言って再び泣き出してしまった。もうお手上げだ。そう思っているとドアの外からミズキ様とエイルの声が聞こえた。
「ヒナコ」
外から聞こえたミズキ様の声にヒナコ様は直ぐに反応した。縋るように彼女はドアに向かう。私もその後を追う。
「・・・・・私、どうしたらいいんだろう」
ドアを開け、現れたミズキ様にヒナコ様がそう問うた。『知るか』と言いそうになるのをグッと堪えているかのような顔をしてミズキ様は部屋に入ってくる。
一緒に部屋に入って来たエイルはどことなく不機嫌だ。といってもいつも通り無表情だけど。動かない表情筋から彼の機嫌を察することができるのは私が彼と長い付き合いだからだ。
「ヒナコ、私たちは元の世界には帰れない」
ソファーに腰かけたミズキ様は淡々と事実だけを述べる。その事実にヒナコ様は悲壮な顔をされた。それでもミズキ様は構わず話を続ける。
強い女性だと思った。本当は彼女だってヒナコ様のように悲嘆にくれたいのだろう。でも、彼女はそれをしない。するだけ無駄だと分かっているからだ。
ミズキ様はヒナコ様を叱咤激励して何とか聖女の役目をする方向に持っていってくれた。
強くて、優しくて、厳しい女性だと思った。だからこそ彼女が内に秘めている思いに不安に思う。ヒナコ様と同じ理不尽な理由で、右も左も分からない場所にいるミズキ様。ましてや彼女は聖女ではなかった。今の彼女の立場はとても微妙なものとなっている。聖女ではなのなら王宮にとどめておく必要はない。戸籍を与えて市井で暮らさせようという声も上がっている。
何とも身勝手なことだ。でも、それがこの国の貴族なのだ。
そのことをミズキ様が知っているかは分からない。聡明な方だからもしかしたら既にご自分の立場を理解し、その為に動いているかもしれない。
私はエイルを見た。ミズキ様のことは心配だけど、それをするのは私の役目ではないと判断し、私は聖女となってしまったヒナコ様の護衛に専念することにした。
「どうして、どうして私なの」
そう繰り返して泣き続けるヒナコ様を見て、ため息が出た。
異界より召喚された女性は二人。うち一人はミズキ様というこの国の女性にしては珍しい髪の短い女性だ。黒曜のような目には強い意思が感じられた。
それを裏切らないように彼女は状況把握に努めたり、自分の中で優先事項を定めて動いている。そんな彼女の魅力にひかれたのか。
私の親友であるエイル。顔は整っているが、無表情で無関心がデフォルトの彼に近づこうとする勇気ある令嬢は少ない。そんなエイルが珍しくミズキ様を気に入り、少しでも男が近づこうものならその鋭い眼光で牽制していた。
しっかり者のミズキ様だが、鈍いところもあるみたいでそんな男たちの視線にも、エイルの気持ちにも気づいはいないようだ。
そんなちょっと抜けているところは愛らしく思ってしまう。きっと彼女の魅力の一つなのだろう。
「無理だよ。できるわけない」
私はもう一度泣いている聖女様を見た。
つい先ほど、ヒナコ様は文献に載っている『聖なる光』というものを発して、聖女認定された。けれど彼女には荷が重かったのだろう。あれ以来、部屋に閉じこもり、ずっと泣いている。
私はもう一度ため息をついた。
「ヒナコ様。大丈夫ですよ。聖女としての力をコントロールできるようにみなが協力してくれますし、あなたに全責任を押し付けるような愚か者はおりません」
私は笑顔を心がけてそう言った。ヒナコ様は一度私を涙で濡れた目で見る。そして直ぐに視線を落とす。
「む、無理だよ。そ、そういう問題じゃないもん。何で、私なの?ミズキなら分かるけど。私には無理だよ」
そう言って再び泣き出してしまった。もうお手上げだ。そう思っているとドアの外からミズキ様とエイルの声が聞こえた。
「ヒナコ」
外から聞こえたミズキ様の声にヒナコ様は直ぐに反応した。縋るように彼女はドアに向かう。私もその後を追う。
「・・・・・私、どうしたらいいんだろう」
ドアを開け、現れたミズキ様にヒナコ様がそう問うた。『知るか』と言いそうになるのをグッと堪えているかのような顔をしてミズキ様は部屋に入ってくる。
一緒に部屋に入って来たエイルはどことなく不機嫌だ。といってもいつも通り無表情だけど。動かない表情筋から彼の機嫌を察することができるのは私が彼と長い付き合いだからだ。
「ヒナコ、私たちは元の世界には帰れない」
ソファーに腰かけたミズキ様は淡々と事実だけを述べる。その事実にヒナコ様は悲壮な顔をされた。それでもミズキ様は構わず話を続ける。
強い女性だと思った。本当は彼女だってヒナコ様のように悲嘆にくれたいのだろう。でも、彼女はそれをしない。するだけ無駄だと分かっているからだ。
ミズキ様はヒナコ様を叱咤激励して何とか聖女の役目をする方向に持っていってくれた。
強くて、優しくて、厳しい女性だと思った。だからこそ彼女が内に秘めている思いに不安に思う。ヒナコ様と同じ理不尽な理由で、右も左も分からない場所にいるミズキ様。ましてや彼女は聖女ではなかった。今の彼女の立場はとても微妙なものとなっている。聖女ではなのなら王宮にとどめておく必要はない。戸籍を与えて市井で暮らさせようという声も上がっている。
何とも身勝手なことだ。でも、それがこの国の貴族なのだ。
そのことをミズキ様が知っているかは分からない。聡明な方だからもしかしたら既にご自分の立場を理解し、その為に動いているかもしれない。
私はエイルを見た。ミズキ様のことは心配だけど、それをするのは私の役目ではないと判断し、私は聖女となってしまったヒナコ様の護衛に専念することにした。
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