私は聖女（ヒロイン）のおまけ

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夜会が始まってまたままもない。
陛下は仕事が押しているので少し遅れての出席となる。
そんな時に起こってまさかの婚約破棄騒動。
その渦中にいたベディーは夜会も早々に切り上げ、誰といない廊下を足早に歩く。
苛立ちから綺麗に整えられた爪を噛んでしまう。
「許さない、許さない、許さない。あの女狐。私から殿下を奪うなんて」
王族の、それも王太子の婚約者という立場は令嬢の中でトップの地位だ。つまり、私の命令に令嬢たちは逆らえない。
次期王妃として贅沢な暮らしを約束されていたのに。それを異界から来た女に奪われた。あっという間に私はトップから転落したのだ。こんなの許されるわけがない。
頭に浮かぶのはすかした顔の髪の短い女
「いい気になるなよ。庶民が。卑しい女が。自分の立場を分からせてやる」
ニッコリと浮かべた笑みはまさに悪鬼のようだった。だが幸いなことにそれを目撃した人はいなかった。