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怖い目にあったからまたヒナコは部屋に引きこもって『聖女なんて無理』と言い出すかもしれないとみんなが戦々恐々としていた。だが、今回はそんなこともなくヒナコは顔を青ざめながらも魔王が封印されている地へと目指した。
私は神官に痛み止めを処方してもらいエイルの馬に乗ってヒナコと一緒に旅路を急いだ。途中、何度もエイルが気遣ってくれたので思いのほか楽だった。
魔物の襲撃に加え、盗賊の襲撃も何度か受けたがそれでも私たちは多大な被害を出すこともなく魔王が封印されている地へと辿り着くことができた。
息をするのさえも苦しい。その地へ降り立つだけなのになぜか恐怖する感じる。百戦錬磨の騎士さえ顔色を悪くしていた。
「・・・・これが魔王」
岩の間に氷漬けにされた巨人がそこにいた。
「聖女様、『聖なる光』を」
神官に言われ、ヒナコは顔を青ざめ、足をがくがく震わせながらそれでも一歩、また一歩と前に進み、魔王の元へ行った。
胸の前で手を組み、静かに目を閉じる。数分後、ヒナコの体から訓練の時と同じように『聖なる光』と呼ばれる光が出た。
私は全くの素人で、何の力も持たないただの高校生なのでヒナコが出す『聖なる光』にどれほどの効果があるのか分からない。それでも何となくではあるが重苦しい空気の中で、少しだけ息がしやすくなったような気がする。
「おお」と周りの騎士から声が上がる。彼らは神を崇拝するような目でヒナコを見ていた。
暫くすると光はヒナコの中に吸収されるように消えて行った。
「今日はここまでに致しましょう」
「はい」
疲れた顔をしてはいるが神官の言葉に頷き、私の元まで歩いてくるだけの余力はあるようだ。良かった。毎日、倒れるほどのことをしろってことだったら身が持たないからね。
「これはどれくらい続けるのですか?」
私の問いに神官は封印されている魔王を見つめる。おそらく神官にしか分からない、封印の具合を確かめているのだろう。
「一週間ぐらいですね」
「そうですか」
「・・・・一週間。何だか、短いような、長いような」
ヒナコはそんなことを呟きながら魔王を見つめる。
私は神官に痛み止めを処方してもらいエイルの馬に乗ってヒナコと一緒に旅路を急いだ。途中、何度もエイルが気遣ってくれたので思いのほか楽だった。
魔物の襲撃に加え、盗賊の襲撃も何度か受けたがそれでも私たちは多大な被害を出すこともなく魔王が封印されている地へと辿り着くことができた。
息をするのさえも苦しい。その地へ降り立つだけなのになぜか恐怖する感じる。百戦錬磨の騎士さえ顔色を悪くしていた。
「・・・・これが魔王」
岩の間に氷漬けにされた巨人がそこにいた。
「聖女様、『聖なる光』を」
神官に言われ、ヒナコは顔を青ざめ、足をがくがく震わせながらそれでも一歩、また一歩と前に進み、魔王の元へ行った。
胸の前で手を組み、静かに目を閉じる。数分後、ヒナコの体から訓練の時と同じように『聖なる光』と呼ばれる光が出た。
私は全くの素人で、何の力も持たないただの高校生なのでヒナコが出す『聖なる光』にどれほどの効果があるのか分からない。それでも何となくではあるが重苦しい空気の中で、少しだけ息がしやすくなったような気がする。
「おお」と周りの騎士から声が上がる。彼らは神を崇拝するような目でヒナコを見ていた。
暫くすると光はヒナコの中に吸収されるように消えて行った。
「今日はここまでに致しましょう」
「はい」
疲れた顔をしてはいるが神官の言葉に頷き、私の元まで歩いてくるだけの余力はあるようだ。良かった。毎日、倒れるほどのことをしろってことだったら身が持たないからね。
「これはどれくらい続けるのですか?」
私の問いに神官は封印されている魔王を見つめる。おそらく神官にしか分からない、封印の具合を確かめているのだろう。
「一週間ぐらいですね」
「そうですか」
「・・・・一週間。何だか、短いような、長いような」
ヒナコはそんなことを呟きながら魔王を見つめる。
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