私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月

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ヒナコが部屋から出るようにり、陛下を始め国の上層部は一安心していた。
本当なら聖女がではない私はさっさとこの国からおさらばすべきなのだがヒナコ一人に重責を負わせるわけにはいかない。
それに陛下からも遠回しではあるがやんわりと王宮に留まるように言われた。
いざという時の為のヒナコ対応だろう。
「大丈夫ですか?」
ぼーっと自室でまどの外を見ていた。だから声をかけられるまでエイルの顔が唇がつきそうになるぐらい近くにあることに気づかなかった。
思わず上げそうになった悲鳴を飲み込んだ私を誰か誉めてほしいものだ。
彼は自覚があるのかないのか分からないけれどなかなか女性受けする顔をしている。
私だって女なのだからそんな顔が近くにあるのは耐えられない。
ただでさえ免疫がないのだから。
「何だかお疲れのようです。少し休まれては?」
私は身を引いてエイルから離れた。エイルはその分だけ距離を狭める。
「・・・・近い」
「すみません。あなたの顔をよく見たいので」
「見なくても問題ないでしょう」
私はエイルの体を押しのけて立ち上がった。
どくどくとうるさい心臓を落ち着かせる意味も込めて私はバルコニーに出る。横を通り過ぎる風が心地よくて、ほてった顔にはちょうど良かった。
エイルはそんな私の後ろに護衛として立つ。背後から感じる視線にちょっと落ちかなくなるけれど私は無視をする。

◇◇◇

ヒナコは聖なる力をコントロールするための訓練を始めた。
力に目覚めるのにも時間がかかったヒナコだ。今回の訓練でも相当、苦労しているようだ。
これはあくまでも推測なのだが自分に自信のないことが力の目覚めが遅かった要因ではないのかと思う。そしてコントロールに関してもそれは少なからず影響していると思う。
「ヒナコ様、少し休憩しましょうか」
神官長がなかなか成果の出ないヒナコを気遣い提案する。
「・・・・はい」
上手くできないせいか心なしか落ち込んで見える。
私は特にすることもないので訓練しているヒナコの後ろに立っているだけなので楽なものだ。あまりにも暇なのでこの国の常識について学んだり、どんな職業があるのかなどを調べたりもしている。
エイルや家庭教師のおかげで文字の読み書きはなんとかできる。
「私、本当に聖女としてやれるのかな」
不安そうにヒナコが呟く。それは誰かに聞かせるためのものではなかったのかもしれない。それぐらい小さな声だった。でも、近くにいた神官長にははっきりとヒナコの言葉が聞こえた。
「大丈夫ですよ、ヒナコ様。慣れないことに上達が芳しくないのは仕方のないことです。焦らずにゆっくりとしていきましょう」
優しく神官長は言う。
「・・・・はい」
僅かにはにかみながらヒナコが答える。
「ヒナコ、調子はどうだ?」
この男は働いているのだろうか?ちょっと疑問に思ってしまうのも仕方ないぐらい殿下はよく顔を見せに来る。
今も上機嫌にこちへやってくる。もっとも私の顔を見た瞬間、眉間にしわを寄せていたが。
今までの私に対する態度に陛下からお叱りを受け、謹慎処分を受けていた殿下。きっと怒られたのは私のせいだと思っているのだろう。
「まだいたのか」
「殿下」
殿下の言葉をやんわりとだが窘める神官長。殿下は彼を一瞥した後、ふんと鼻で笑ってヒナコの横に腰かける。私に背を向けるような態勢で。
子供か。
「どうだ、調子は」
「ダメです。なかなかうまくいきません。やっぱり、私は聖女なんかじゃないんじゃ。きっと何かの間違いだったんですよ」
「何を言っている。そんなわけないだろう。お前は聖女だ。上達しないのは周りの者の指導が悪いからだ」
指導をしている神官長の前でよくも堂々と言えるものだ。せめていないところで言えばいいのに。
ちらりと神官長を見ると、彼は若干怒気をはらみながらもそれを表に出すことなく二人のやり取りを見ていた。
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