私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月

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「何だか私、自信がない」
召喚されてから一ヶ月。
私とヒナコの訓練での成果はない。体の中に何かが流れるような感覚もないし、ゲームや小説で語られているように自身が発光するという現象もない。
周りの落胆は日に日に大きくなる。それを気にしてか、休憩中、ヒナコがぽつりと言った。
休憩用に与えられた部屋には私とヒナコ以外ではそれぞれの護衛騎士と給仕をしてくれる侍女が一人いる。
この世界はイギリスのようにアフタヌーンティーの習慣があるようで私とヒナコはその真っ最中だった。
「聖女なんて、やっぱり無理なんだよぉ」
私はカップに口をつけたままヒナコを見た。
ヒナコは手元にある紅茶を眺めていた。両手でカップを包み、縁を指でなぞりながら不安を紛らわせようとしていた。
「異世界召喚され→聖女確定→魔王を見事撃退→イクメン彼氏ゲット→ハッピーエンド。なんて、小説の中だけの話し。現状、私たちはこの国の人間に拉致監禁されて、いつ殺されてもおかしくない」
「こ、殺されるんでしょうか」
ヒナコは目を大きく見開き、私を見る。自分が殺されるかもという考えは眉唾物だったようだ。
私はちらりと視線を護衛や騎士たちに向ける。バートランドもエイルも動揺した様子はない。二人ともポーカーフェイスが得意のようだ。何を考えているかまるで分からない。
「虞ながらヒナコ様、ミズキ様」
恐る恐るといった感じに侍女が話しかけてきた。
「お二人は大切な聖女候補様です。無体を強いるものなどおりません」
ヒナコはあからさまにほっと胸を撫で下ろした。
「ただの冗談よ。本気にしないで。ちょっと退屈だったからからかっただけ」
「そんな冗談は聞きたくなかったです」
むっと口を尖らせてヒナコが抗議する。そんな顔をしても迫力ゼロだ。声も小さい。
「悪かったわね」
ただ、あくまでも『聖女候補』。つまり聖女でもなく候補でもなくなればその身の安全は保証されない可能性がある。
私はそんな思考を胸のうちに仕舞った。行ったところで今の私たちには何もできないから。
「そろそろ次の講義に行きましょう」
「はい」
次はこの国の歴史や知性についてだ。
地形はともかく歴史なんか知って意味があるかは不明だ。
まぁ知識はあっても邪魔にはならないので大人しく講義を受けることにするが。
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