4 / 33
4
しおりを挟む
夜。あまり食事を摂る気にもなれず、出された食事のほとんどを残してしまった。私が怒っているということが城内に知れ渡っているのか、私の世話を任されたという侍女、ドーラ・エレインは怯えながら私の世話を焼いてくれた。
明るい茶髪に金色の目をしたかわいらしい女性だ。そして胸がとても大きかった。
そんなどうでもいいことを考えながらベッドに入る。
自分がとても疲れていたのだと初めて自覚した。睡魔があっという間に襲ってきて、起きるのがとても億劫に感じられた。このまま朝何て来なければいいのに。
襲ってくる睡魔に逆らう理由はないので身を任せようとしたとき、控えめなノックが聞こえた。こんな時間に誰だろう。無視をしようと思ったのだけど、再びノック音がした。
「もう、誰よ」
休息を邪魔され、若干イラつきながらも私はドアを開けた。するとそこには寝間着姿のヒナコがいた。
「あなた」
「あ、あの、こんな時間にごめんなさい。カナエさん、少しお時間いいですか?」
「ミズキでいいわ。私もあなたのことをヒナコって呼んでいい?」
「あ、はい。どうぞ」
私は体を横にずらしてヒナコを中に入れた。
身の置き場に困っている彼女をソファーに座らせて私もその対面に座る。
「それで、どうしたの?」
「あ、あの、私たち、これからどうなるんでしょうか?」
知るかっ!
「殿下とずっと一緒にいたのでしょう。何も聞いていないの?」
ドーラの話では食事も一緒にしたとのことだった。
「聖女として魔王を封印することぐらいしか」
何て使えないのでしょう。情報提供者が好意を向けてくれ、しかもずっと一緒にいたのならいろいろと情報を引き出せるだろうに。
「で?あなたはどうする気なの?」
「どうって・・・・」
そこで言葉に詰まってしまうヒナコ。その答えを私に聞きに来たのか。でも、私だってこれが正しいって言える答えなんて持っていない。そんなものがあるのなら私だってほしい。
「どうしたらいいのか、分からない。うっ。どうしてこんなことになったの。くすん。お父さんにもお母さんにももう会えないのかな」
そう言ってヒナコは泣き出してしまった。
眠い。早く帰ってくれないかな。ここで泣かれても困る。
「わ、私、もう、どうしたらいいのか分からない。ねぇ、どうすればいいのかなぁ?」
だから聞くなよ。
私が黙っているとヒナコはさらに泣き出してしまった。
・・・・・慰めたほうがいいのかな。
「聖女のことは明日、詳しく説明してくれるそうよ。本当に元の世界に帰れないのかは分からない。ただ言えるのは私たちはこの世界の常識なんて知らない。だからまずはそれを学んで、自分一人でも生計を立てられるようにしないと」
涙で濡れたヒナコの目が私を捉える。
「そんなことできるの?ここは私たちの知っている世界じゃないのに」
「しないと生きれないでしょう」
「む、無理だよ。私には。日本に、家族の元に帰りたい」
そう言って再びヒナコは泣き出す。
本当に早く帰ってくれないかな。・・・・・眠い。
明るい茶髪に金色の目をしたかわいらしい女性だ。そして胸がとても大きかった。
そんなどうでもいいことを考えながらベッドに入る。
自分がとても疲れていたのだと初めて自覚した。睡魔があっという間に襲ってきて、起きるのがとても億劫に感じられた。このまま朝何て来なければいいのに。
襲ってくる睡魔に逆らう理由はないので身を任せようとしたとき、控えめなノックが聞こえた。こんな時間に誰だろう。無視をしようと思ったのだけど、再びノック音がした。
「もう、誰よ」
休息を邪魔され、若干イラつきながらも私はドアを開けた。するとそこには寝間着姿のヒナコがいた。
「あなた」
「あ、あの、こんな時間にごめんなさい。カナエさん、少しお時間いいですか?」
「ミズキでいいわ。私もあなたのことをヒナコって呼んでいい?」
「あ、はい。どうぞ」
私は体を横にずらしてヒナコを中に入れた。
身の置き場に困っている彼女をソファーに座らせて私もその対面に座る。
「それで、どうしたの?」
「あ、あの、私たち、これからどうなるんでしょうか?」
知るかっ!
「殿下とずっと一緒にいたのでしょう。何も聞いていないの?」
ドーラの話では食事も一緒にしたとのことだった。
「聖女として魔王を封印することぐらいしか」
何て使えないのでしょう。情報提供者が好意を向けてくれ、しかもずっと一緒にいたのならいろいろと情報を引き出せるだろうに。
「で?あなたはどうする気なの?」
「どうって・・・・」
そこで言葉に詰まってしまうヒナコ。その答えを私に聞きに来たのか。でも、私だってこれが正しいって言える答えなんて持っていない。そんなものがあるのなら私だってほしい。
「どうしたらいいのか、分からない。うっ。どうしてこんなことになったの。くすん。お父さんにもお母さんにももう会えないのかな」
そう言ってヒナコは泣き出してしまった。
眠い。早く帰ってくれないかな。ここで泣かれても困る。
「わ、私、もう、どうしたらいいのか分からない。ねぇ、どうすればいいのかなぁ?」
だから聞くなよ。
私が黙っているとヒナコはさらに泣き出してしまった。
・・・・・慰めたほうがいいのかな。
「聖女のことは明日、詳しく説明してくれるそうよ。本当に元の世界に帰れないのかは分からない。ただ言えるのは私たちはこの世界の常識なんて知らない。だからまずはそれを学んで、自分一人でも生計を立てられるようにしないと」
涙で濡れたヒナコの目が私を捉える。
「そんなことできるの?ここは私たちの知っている世界じゃないのに」
「しないと生きれないでしょう」
「む、無理だよ。私には。日本に、家族の元に帰りたい」
そう言って再びヒナコは泣き出す。
本当に早く帰ってくれないかな。・・・・・眠い。
16
お気に入りに追加
1,404
あなたにおすすめの小説
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

現実的な異世界召喚聖女
章槻雅希
ファンタジー
高天原の神々は怒っていた。理不尽な異世界召喚に日ノ本の民が巻き込まれることに。そこで神々は怒りの鉄槌を異世界に下すことにした。
神々に選ばれた広瀬美琴54歳は17歳に若返り、異世界に召喚される。そして彼女は現代日本の職業倫理と雇用契約に基づき、王家と神殿への要求を突きつけるのだった。

【完結】召喚されて聖力がないと追い出された私のスキルは家具職人でした。
井上 佳
ファンタジー
結城依子は、この度異世界のとある国に召喚されました。
呼ばれた先で鑑定を受けると、聖女として呼ばれたのに聖力がありませんでした。
そうと知ったその国の王子は、依子を城から追い出します。
異世界で街に放り出された依子は、優しい人たちと出会い、そこで生活することになります。
パン屋で働き、家具職人スキルを使って恩返し計画!
異世界でも頑張って前向きに過ごす依子だったが、ひょんなことから実は聖力があるのではないかということになり……。
※他サイトにも掲載中。
※基本は異世界ファンタジーです。
※恋愛要素もガッツリ入ります。
※シリアスとは無縁です。
※第二章構想中!

召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
蜜柑
ファンタジー
レイラは生まれた時から強力な魔力を持っていたため、キアーラ王国の大神殿で大司教に聖女として育てられ、毎日祈りを捧げてきた。大司教は国政を乗っ取ろうと王太子とレイラの婚約を決めたが、王子は身元不明のレイラとは結婚できないと婚約破棄し、彼女を国外追放してしまう。
――え、もうお肉も食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?
追放される道中、偶然出会った冒険者――剣士ステファンと狼男のライガに同行することになったレイラは、冒険者ギルドに登録し、冒険者になる。もともと神殿での不自由な生活に飽き飽きしていたレイラは美味しいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。
その一方、魔物が出るようになったキアーラでは大司教がレイラの回収を画策し、レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。
※序盤1話が短めです(1000字弱)
※複数視点多めです。
※小説家になろうにも掲載しています。
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる