私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月

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夜。あまり食事を摂る気にもなれず、出された食事のほとんどを残してしまった。私が怒っているということが城内に知れ渡っているのか、私の世話を任されたという侍女、ドーラ・エレインは怯えながら私の世話を焼いてくれた。
明るい茶髪に金色の目をしたかわいらしい女性だ。そして胸がとても大きかった。
そんなどうでもいいことを考えながらベッドに入る。
自分がとても疲れていたのだと初めて自覚した。睡魔があっという間に襲ってきて、起きるのがとても億劫に感じられた。このまま朝何て来なければいいのに。
襲ってくる睡魔に逆らう理由はないので身を任せようとしたとき、控えめなノックが聞こえた。こんな時間に誰だろう。無視をしようと思ったのだけど、再びノック音がした。
「もう、誰よ」
休息を邪魔され、若干イラつきながらも私はドアを開けた。するとそこには寝間着姿のヒナコがいた。
「あなた」
「あ、あの、こんな時間にごめんなさい。カナエさん、少しお時間いいですか?」
「ミズキでいいわ。私もあなたのことをヒナコって呼んでいい?」
「あ、はい。どうぞ」
私は体を横にずらしてヒナコを中に入れた。
身の置き場に困っている彼女をソファーに座らせて私もその対面に座る。
「それで、どうしたの?」
「あ、あの、私たち、これからどうなるんでしょうか?」
知るかっ!
「殿下とずっと一緒にいたのでしょう。何も聞いていないの?」
ドーラの話では食事も一緒にしたとのことだった。
「聖女として魔王を封印することぐらいしか」
何て使えないのでしょう。情報提供者が好意を向けてくれ、しかもずっと一緒にいたのならいろいろと情報を引き出せるだろうに。
「で?あなたはどうする気なの?」
「どうって・・・・」
そこで言葉に詰まってしまうヒナコ。その答えを私に聞きに来たのか。でも、私だってこれが正しいって言える答えなんて持っていない。そんなものがあるのなら私だってほしい。
「どうしたらいいのか、分からない。うっ。どうしてこんなことになったの。くすん。お父さんにもお母さんにももう会えないのかな」
そう言ってヒナコは泣き出してしまった。
眠い。早く帰ってくれないかな。ここで泣かれても困る。
「わ、私、もう、どうしたらいいのか分からない。ねぇ、どうすればいいのかなぁ?」
だから聞くなよ。
私が黙っているとヒナコはさらに泣き出してしまった。
・・・・・慰めたほうがいいのかな。
「聖女のことは明日、詳しく説明してくれるそうよ。本当に元の世界に帰れないのかは分からない。ただ言えるのは私たちはこの世界の常識なんて知らない。だからまずはそれを学んで、自分一人でも生計を立てられるようにしないと」
涙で濡れたヒナコの目が私を捉える。
「そんなことできるの?ここは私たちの知っている世界じゃないのに」
「しないと生きれないでしょう」
「む、無理だよ。私には。日本に、家族の元に帰りたい」
そう言って再びヒナコは泣き出す。
本当に早く帰ってくれないかな。・・・・・眠い。
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