私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月

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「ミズキ様、殿下のことですけど」
部屋を出て直ぐに神官長が殿下のことで謝罪をしてきた。彼もなかなか大変そうだ。でも、私には関係ない。
「私は必要ないみたいね」
自分が思っていたよりも低い声が出た。青を通り過ぎて真っ白になっている神官長は今にも倒れてしまいそうだ。
「それでも私は帰れないの?」
「申し訳ありません」
神官長の言葉にため息が漏れる。その行為ですらも神官長には恐怖を与えたらしい。ビクリと体を揺らした。
「ミズキ様にはこの城に留まっていただきたく」
「それでどうしろと?あの『殿下』?のお小言を黙って聞いていろと?」
皮肉と嘲笑を交えて私は言った。
「聖女としての勉強と訓練をしていただきたいのです。勝手な申し出であることは分かっています」
「本当に勝手ね」
でも、そうするしかないのだろう。私は無一文だし。この国の常識何て知らない。
ここで聖女(ではないかもしれないけれど。むしろ絶対に違うだろうけど)としての訓練と勉強をしながらこの世界のことも同時に学んでいく必要がある。
そして何とか自分で自立できるようにしないと。
「条件があるわ」
「何でしょう?」
「労働には対価が付きものよ。私は無償報酬なんて御免だわ」
ファンタジー小説をいくつか読んだことが私は自分が異世界に行ってみて初めて疑問に思ったことがある。まぁ。最終的には有力貴族と結婚してハッピーエンドだからいいのかもしれないけれど。
残念ながら私の身に起きたことが現実である以上、エンドはすなわち私自身の死を意味する。
だから思ったのだ。ファンタジー小説に出てくるヒロイン・ヒーローよ。何で聖女や勇者なんて割に合わないことでただ働きしているの。
「もちろん、それなりの報酬が国から贈られるます」
「具体的には?言っておくけれど土地も地位も要らないわよ。土地なんて思っていても維持なんてできるほど高性能ではないの、私。地位だって合っても面倒なだけよ」
考えていた報酬を否定されて神官長は戸惑う。権力者の与える報酬なんて下心見え見えね。
地位があればそれなりの責任が問われるし、それに貴族にでもなればそれはこの国の王の臣下になるということだ。つまり王族は何が何でも『聖女』を傍に置いておきたいのだろう。
「では何を望まれますか?」
「月給制で働いた分だけのお給料を。聖女候補がそんな俗なものを求めると思わなかった?神格化しないでね。私もあのヒナコって子もこことは違う世界の人間というだけであって、それ以外はあなた達と変わらない人間だもの。幾らにするかはこの国の賃金の平均を知らないからあなた達に任せるわ。でも、平均賃金なんて調べようと思えば調べられるから適当に決めないことね」
「・・・・・分かりました」
これで大丈夫だろう。
きっと彼らは私に幻滅しただろうね。でも、それがどうしたの?
勝手に拉致しておいて喜んでただ働きをしてくれるなんて都合のいい話があるわけがない。
「お部屋を用意しております。ミズキ様も今日はお疲れでしょう。早めにお休みください」
「そうさせてもらうわ」
確かに疲れた。いろいろとありすぎて。
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