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ろく
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周りの女の子達の発育が進みだすと、私は絶望した。周りの子はみんな小ぶりであれ、ささやかでも膨らみがあったのに、私は本当に成長の兆しも見えずブラもスポブラかAAカップ。なんで私の胸こんなにないの?え?私の胸小さすぎーーー?
「絶対生まれ変わったら巨乳になる!!!!」
前世からの切なる願いを無意識に叫んだようだ。自分の叫びで目が覚めた。
目が覚めたのは見たこともない部屋だった。施設のシンプルだが機能的な部屋とは違う。壁紙は淡いグリーンで家具もなんだか丁度いい具合に可愛らしい。
「目が覚めましたか実摘?心配しましたよ」
聞き覚えのある声だ。低くてうっとりするサミュエルさんの声だ。
「サミュエルさん…?」
「はい。気分はどうですか?」
少し体を起こすと、ベッドの横にある椅子に、サミュエルさんが腰掛けて優しい顔でこちらを見ていた。
「気分は、特に悪くもないです。でも…」
「それはよかったです。気絶してなかなか目を覚さないので心配しましたよ」
「そうでしたか、それはすいません。それで、あの、ここはどこなんでしょうか?それに聞きたいことが山程あるんですが」
おずおずと切り出すと、サミュエルさんは口角を上げて上機嫌に言った。
「ここはこれから実摘が暮らす家の中の、実摘のために用意した部屋ですよ」
「私の暮らす家?私の部屋?」
よく理解出来なくてぼんやり復唱する。
「はい。実摘は転生せずに、このままこの世界で私と夫婦になり暮らすんです」
益々理解が追いつかない。転生しないで夫婦?そんな話聞いたこともないし考えたこともない。いくら推しで神とはいえ、これは中々理解出来ないし納得できない。
「あの、私転生を諦めたつもりもないですし、サミュエルさんとお付き合いした記憶もないです。夫婦になるって一体どういう」
「転生はもう諦めてください。実は一目見た時から、私はあなたを妻にして共に生きると決めたんです」
なんだその勝手な決定は。私の意見は?サミュエル教やめようかな。
「そんな勝手な…」
「実摘、私が生まれて初めて手放したくない、自分だけのものにしたいと思った相手があなたです。絶対に逃さないようにここまで準備したんです。こんなに欲しいと思ったのは、あなただけだ」
真っ直ぐ見つめられて、ものすごい事を言われてしまった。どうしよう。内容に若干不穏なものがあったけど、めちゃくちゃ好みの外見の、しかも推しにこんなこと言われて、1ミリも動揺しない人いる?私のささやか過ぎる胸の中の小さな心臓は、驚きやら照れやらで今にも爆発しそうだ。
「黒髪が見られなくなるのは残念ですが、それ以上に側から離したくない、ずっと腕の中に閉じ込めておきたいと思い、あなたを食事に誘いました。あの日は本当に素晴らしい日でした」
それに関しては同意する。食事の日は本当に良い日だった。
「あなたの前世の世界に、よもつへぐいという言葉があると思います。この世界でも似たようなルールがあって、あの日食事に誘ったのは実摘をこの世界に留めておく為です」
よもつへぐいって、黄泉の世界の食べ物を口にすると現世へ戻れなくなるってやつ?でも私ここにきて普通に飲食してたけど、妹尾さんもそうだったし…
「転生前の方が入る施設で、口に入れるものは全て用意されていたでしょう?あれは特別なんです。それ以外のものを口にすると、この世界に留まるという意思表示になりいつまでも滞在できるようになります」
ここでサミュエルさんは、笑みをさらに濃くして言った。
「さらにアルコールを口にすることで、この世界から出て行くことが出来なくなるんです。…あの時のシャンパン、本当に美味しかったですね」
思い出しているのか私から少し視線を外して、蕩けるような表情を浮かべる様子を見て、私はぞくりとした。
「もう、あなたは私から逃げられません。髪の色も変わってきているでしょう?この世界で生きていくものは、皆金髪になるんです。ここまで多少苦労はありましたが、親である狭間の世界の代表にも報告し認められ、私たちは正式に夫婦となりました」
実摘、と甘い声で呟き私の頬に手を添える。そんならサミュエルさんを、私はぼんやりした頭と目で眺めている。髪の毛の根本の色、気のせいじゃなかったのかー。この凡庸な顔に金髪似合うのかな?
視界に影が差し、唇に何かが触れたと理解したところで、私はまた気絶した。
私は絶対に転生して、このまな板体型を卒業したかったのに!!!!!
どうしてこうなった???
「絶対生まれ変わったら巨乳になる!!!!」
前世からの切なる願いを無意識に叫んだようだ。自分の叫びで目が覚めた。
目が覚めたのは見たこともない部屋だった。施設のシンプルだが機能的な部屋とは違う。壁紙は淡いグリーンで家具もなんだか丁度いい具合に可愛らしい。
「目が覚めましたか実摘?心配しましたよ」
聞き覚えのある声だ。低くてうっとりするサミュエルさんの声だ。
「サミュエルさん…?」
「はい。気分はどうですか?」
少し体を起こすと、ベッドの横にある椅子に、サミュエルさんが腰掛けて優しい顔でこちらを見ていた。
「気分は、特に悪くもないです。でも…」
「それはよかったです。気絶してなかなか目を覚さないので心配しましたよ」
「そうでしたか、それはすいません。それで、あの、ここはどこなんでしょうか?それに聞きたいことが山程あるんですが」
おずおずと切り出すと、サミュエルさんは口角を上げて上機嫌に言った。
「ここはこれから実摘が暮らす家の中の、実摘のために用意した部屋ですよ」
「私の暮らす家?私の部屋?」
よく理解出来なくてぼんやり復唱する。
「はい。実摘は転生せずに、このままこの世界で私と夫婦になり暮らすんです」
益々理解が追いつかない。転生しないで夫婦?そんな話聞いたこともないし考えたこともない。いくら推しで神とはいえ、これは中々理解出来ないし納得できない。
「あの、私転生を諦めたつもりもないですし、サミュエルさんとお付き合いした記憶もないです。夫婦になるって一体どういう」
「転生はもう諦めてください。実は一目見た時から、私はあなたを妻にして共に生きると決めたんです」
なんだその勝手な決定は。私の意見は?サミュエル教やめようかな。
「そんな勝手な…」
「実摘、私が生まれて初めて手放したくない、自分だけのものにしたいと思った相手があなたです。絶対に逃さないようにここまで準備したんです。こんなに欲しいと思ったのは、あなただけだ」
真っ直ぐ見つめられて、ものすごい事を言われてしまった。どうしよう。内容に若干不穏なものがあったけど、めちゃくちゃ好みの外見の、しかも推しにこんなこと言われて、1ミリも動揺しない人いる?私のささやか過ぎる胸の中の小さな心臓は、驚きやら照れやらで今にも爆発しそうだ。
「黒髪が見られなくなるのは残念ですが、それ以上に側から離したくない、ずっと腕の中に閉じ込めておきたいと思い、あなたを食事に誘いました。あの日は本当に素晴らしい日でした」
それに関しては同意する。食事の日は本当に良い日だった。
「あなたの前世の世界に、よもつへぐいという言葉があると思います。この世界でも似たようなルールがあって、あの日食事に誘ったのは実摘をこの世界に留めておく為です」
よもつへぐいって、黄泉の世界の食べ物を口にすると現世へ戻れなくなるってやつ?でも私ここにきて普通に飲食してたけど、妹尾さんもそうだったし…
「転生前の方が入る施設で、口に入れるものは全て用意されていたでしょう?あれは特別なんです。それ以外のものを口にすると、この世界に留まるという意思表示になりいつまでも滞在できるようになります」
ここでサミュエルさんは、笑みをさらに濃くして言った。
「さらにアルコールを口にすることで、この世界から出て行くことが出来なくなるんです。…あの時のシャンパン、本当に美味しかったですね」
思い出しているのか私から少し視線を外して、蕩けるような表情を浮かべる様子を見て、私はぞくりとした。
「もう、あなたは私から逃げられません。髪の色も変わってきているでしょう?この世界で生きていくものは、皆金髪になるんです。ここまで多少苦労はありましたが、親である狭間の世界の代表にも報告し認められ、私たちは正式に夫婦となりました」
実摘、と甘い声で呟き私の頬に手を添える。そんならサミュエルさんを、私はぼんやりした頭と目で眺めている。髪の毛の根本の色、気のせいじゃなかったのかー。この凡庸な顔に金髪似合うのかな?
視界に影が差し、唇に何かが触れたと理解したところで、私はまた気絶した。
私は絶対に転生して、このまな板体型を卒業したかったのに!!!!!
どうしてこうなった???
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