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しおりを挟む「花園さん、これからも頑張ってね!俺は一足先に転生します!」
なんだかんだとここにきて働きはじめて、3ヶ月が経っていた。私より前からここで働いていた妹尾さんは、ついに徳を積み終わり転生するようだ。
「妹尾さん、おめでとうございます!少し寂しくなりますね、けど、私もすぐ転生できるように頑張ります!」
「うん!じゃ、さよならー!」
手を振ってこれまた美人すぎる金髪さんに連れられ、妹尾さんはいなくなってしまった。3ヶ月の間に、私もすっかり仕事に慣れ、長のサミュエルさん含む金髪美人数人とは、休憩を一緒にとったりたまに話したりするようになっていた。
中でもサミュエルさんは、気を遣ってくれているのか、休憩中は仕事の時の厳しさが嘘のように優しくしてくれた。もし前世でこんな美形に優しくされていたら、勘違いして好きになっちゃったかも、などと思うくらいには良くしてもらっていた。
この世界の金髪美人たちは、最初はよくわからなかったが一応性別があるようだ。ゆったりした白い服を皆着ているのでわかりにくいが、よく見ると胸のあるなしや背の高さ、喉仏の有無、関節の太さなど性別による体型の違いがあるようだ。
「サミュエルさんは、男性なんですか?」
ある日、勇気を出して聞いてみることにした。私の観察によるところ、サミュエルさんは間違いなく男性だと思うんだけど、どうだろう?ちなみに性別があるようだと気づくまで気にしなかったが、気にしてみれば声は完全に男性のものだ。
「えぇ、そうですよ。今まで気付かなかったんですか?」
「すいません。ここの人たちは天使みたいなもので、性別がないものだと最初思い込んでいたので」
サミュエルさんの少し驚いた顔、レアだ!心のシャッターを切りまくる。この世界で過ごす間の心のアルバムに、バッチリ保存した。
「そうでしたか。少しショックでしたが、気付いてもらえたのは良かったです。私たちには性別がありますし、中には夫婦や恋人同士もいるんですよ」
「そ、そうなんですか!?全然気がつきませんでした。じゃあ私たち人間と同じような感じなんですかね」
まさか金髪美人達は、恋愛もするのかと驚いてきくと、そうだと肯定が、返ってくる。
「私たちも人間のように、結婚したり女性は出産したり、休日には家族で出かけたりなんかもします。もちろん歳もとりますよ。この世界は時間の進み方がゆっくりなので、歳をとるのもゆっくりですがね」
「歳もとるんですか!!!!」
みんな美人すぎて、そこには全く気が付かなかった。皆不老不死なのかと思ってた。驚く私をサミュエルさんはじっと見つめ、少し微笑んだ。
「実摘、ここにきて3ヶ月経ちましたが、ここでの暮らしはどうですか?」
「え?」
3ヶ月のうちに、私は下の名前で呼ばれるようになっていた。初めはいきなり?と少し戸惑った。だが慣れてくると、前世でも仲良くなれば名前で呼び合ってたし、これって少しは仲良くなれてるってことかなと嬉しく思っていた。
それと、サミュエルさんの質問のここでの暮らし…まぁ悪くはないかな。金髪美人たちは穏やかだし目の保養になるし、ご飯もまずくないし。でもその内いなくなる場所だから、どうとか考えたこともなかった。
「悪くはないです。皆さん優しいですし。あとどのくらいいるのかわからないですけど、もし私がポイント貯めるためにここにきたのでなければ、ずっと居続けても良いなぁと思うくらいには気に入ってます」
悩んだ末、正直にそう答えた。ただ、夢のボンキュッボンライフのために、必ずここでポイントをため出て行くのは決まっている。そもそも、狭間の世界って、そんなずっといられないでしょ。転生待ちの身で。
「そうですか」
妹尾さんが、滞在期間半年程で出て行ったという事実を知っている。だから私も何かミスしたり問題を起こさない限り、あと3ヶ月ほどでここを離れるのだ。休憩中に他の金髪美人さんにも、大体みんなそのくらいの期間でいなくなると聞いていた。
私は自分の思考に夢中になり、サミュエルさんがどんな表情で自分を見ていたのか全く気づかなかった。
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