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王子は姫に隠したい2
しおりを挟む「はぁ~」
優は1人きりの自室でまたため息をついた。あいつ…中学校が同じだったやつにまさか出会ってしまうとは。しかも依澄と一緒にいる時なんかに……
「お父さん!強くてカッコいい!!」
「そうかぁ!優も父さんみたいに強くなるか?」
「なるー!優も父さんみたくカッコよくなりたーい!」
「あっ!!ズルい優!俺も!」
「俺も俺も!!」
「あらあら、皆お父さんが好きなのね。お母さんもお父さん大好き~」
なんて親子仲良く笑い、父と兄妹3人で筋トレしたり体を動かしていた頃は良かった。楽しかったし、やればやるだけ強くなる自分が嬉しかった。けれど成長するにつれ、自分は他の子たちと違うことに気付いてしまった。気付くだけでなく、それに耐えられなくなってきたのだ。思春期の子供というのは残酷だ。優は力が強く、やり返すことができたがそれでも心は傷付いていた。
男女ってなんだよ。弱いくせに。そっちが色々言ったりちょっかいかけてくるから、やり返してるだけでこっちからは何もしてないのに!
そんな日々を過ごすうちに、依澄は自分の心を守るため、からかってくるヤツには倍にしてやり返し怯えさせるようにした。そうすれば少し脅すだけで馬鹿なヤツらは逃げていったから。そして心に決めた。高校は絶対に遠いところにして、自分が若王子武の娘で腕っぷしの強い女だと知らない所に行くと。
今まで少しでも女の子らしくと伸ばしていた髪は、高校受験が終わり無事合格した時にバッサリ切ってしまった。そしていざ高校に入学したら、若王子なんて苗字と顔の良さ、さらには長身によって周りから王子なんて呼ばれるようになってしまった。
暗黒の中学時代を過ごした優は、すっかり男が嫌いになっていたし、女の子が自分を慕って寄ってきてくれるのは、友人の少なかった自分にとって可愛く見えた。このまま王子らしく振る舞うのも悪くない、と思って皆の望む王子っぽい人間でいることにした。慣れるまでは少し大変だったけど、すぐに慣れて平和な学園生活を送ることができて、優は割と楽しく過ごしていた。
そう、それに依澄という可愛い存在に会えた。強い自分で良かったと久しぶりに思える出来事だった。女の子みたいに可愛らしい見た目と困った顔の依澄は、うさぎみたいで本当に可愛かった。震える依澄を庇った時、相手の男子への嫌悪と怒りを隠すため力んで震えてしまったけど、依澄にはバレていなかったようで良かった。
だけど今日のことは本当に危なかった。あんな弱そうな男だとしても依澄からしたら、怖かったかもしれない。なのに自分を庇おうとしてくれていた。でももし自分が、その男くらい簡単に力でねじ伏せられる存在だとバレたら。野蛮な人間だと思って離れていってしまったら……考えただけで背中に嫌な汗が出てきた。依澄は弱くて可愛いんだから、守ってあげないといけないのに。せっかく自分を慕って、友達でいてくれてるのに……
「はぁ~~」
またため息をつく優の耳には、ずっと父の筋トレに励むうるさい声が聞こえていた。嫌いじゃない。今でも強くて悪役でありながらも人気のある父親のことは好きだし、尊敬している。
「だからってさぁ、困るよ」
こんな(怪力でその辺の男より強い)体にしてくれた父には、しばらく優しく接してあげたくないと思った。
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