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第2話 ゴブリン、勇者に会う
勇者退治3
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「だ、誰か助けてくれーっ!!」
泣き叫ぶ勇者を追いながら、俺はいつの間にかさっきヴァニスさんが言っていた岩場の近くまで来ているのに気がつく。
罠とは知らず、勇者はそのまま一目散に岩場に駆け込んだ。
「ひ、人っ?すんません、ホモゴブリンに追われてるんです、助けて下さいっ!」
勇者は岩場に佇む人影に助けを求める。だがその人影は待機していたサイジャ君だった。
「オラアァァアー!死ねっ、勇者っ!」
「グエエェェーっ!」
完全に戦意を喪失していた勇者は、あっさりサイジャ君の飛び蹴りにやられてしまう。
強烈な攻撃を受けた勇者は、2~3m吹っ飛び地面に倒れた。
「よしっ、今だヴァニスさんっ!」
サイジャ君が呼ぶと、すぐにヴァニスさんが倒れた勇者を縄で捕縛する。
「大成功ですっ」
ヴァニスさんは勇者をしっかり縛リ上げたのを確認すると、こちらに満面の笑みを向けた。
「しっかしすげーよアニキは。完全にビビり散らしてたもんアイツ。一体何を言ったんだ?」
「は、はは……まぁ、何となくね」
まさかやばいホモと勘違いされてたとは言えず、曖昧な返事しかできない。
「な、なんだよお前らっ!」
突然、倒れている勇者が叫び声を上げる。
それに反応して、サイジャ君はゆっくりと勇者の方を見下した。
「俺達はゴブリンだ」
「と、リザードマンです」
「ゴ、ゴブリンだぁ?ゴブリンが俺に何の用だよっ」
「ちっ、うるせーなコイツ。とりあえず防具脱がすか」
「ぬ、ぬがっ……!や、止めてくれよ、それだけは勘弁してくれよぉ」
「だ~からそれ勘違いだっての!」
「脱がされるくらいなら…くっ、殺せ」
「止めろぉ!その台詞を男が言うんじゃねぇ!」
俺は耳を塞いでぷるぷる震える。もうこの勇者とは話が噛み合う気がしない。
「私達は村のリザードマンに迷惑を掛けるお前を退治しに来たんだよ」
まともに会話が出来ない俺達に代わってヴァニスさんが勇者に説明する。
「……はぁ?迷惑だぁ?」
「オイコラァ!何でそんな事したんだぁ!」
「あぁ?何だこのチビ。ガキは家に帰んな」
「なにぃ!やっちゃって下さいアニキ」
サイジャ君がヤンキー漫画の下っ端みたいな台詞を言いながらこっちを見る。いやそんな期待されても……。
「ひっ!言うから、言うからっ。だから襲うなぁ!」
「かんちが……もういいや」
いちいち突っ込んでももう話が進まないだけだし、大人しく話を聞く事にする。
「ギルドからの依頼があったんだよ…。俺は仕事しただけだっつーの、シ·ゴ·ト」
「し、シゴトぉ!?」
サイジャ君が仕事という言葉に過剰に反応する。まぁニ……自由ひとだしな。
「嘘をつくな。私達リザードマンは人間に何もしてないし、ギルドがそんな依頼出すわけないだろう」
「あ~、理由は……何かリザードマンが人間の狩場を荒らしたとか言ってたな。それで半殺しにして来いって」
「なっ!それを言ったら人間だってリザードマンの釣り場を勝手に使ってるだろっ」
「知らねーよそんな事、俺には関係無いし。まぁどっちもどっちじゃね(笑)」
「……よし、死刑で」
「ま、まぁまぁ落ち着いて」
俺はおもむろに拳を上げるサイジャ君を宥める。
しかしギルドってこんな一方的にモンスターを襲ってくるのか…。随分乱暴な組織だな。
「ん?でも半殺しって命令されてたのに、リザードマンは脅されただけだよね……なんで?」
もしかしたら、勇者なりに一方的なギルドの命令に反発心があったのかもしれない。
「え?……それはまぁ、うちのパーティ女の子いるし、優しい俺カッケー的な?」
「……よし、死刑で」
「ちょ、落ち着いて」
俺は再びおもむろに拳を上げるサイジャ君を宥める。
「もう何かコイツよくねぇ?別に何かコイツもうよくねぇ?」
俺は勇者を見ながらそう吐き捨てる。
モンスターを襲う悪役勇者というより、ただの小物に見えてきた……。
「……とりあえずギルドに命令を取り消すようお前から伝えろ」
ヴァニスさんが勇者に凄む。
「あー、わかったわかった。俺達も悪かったみたいだしな。伝えとくは」
勇者は一応ヴァニスさんの目を見ながらそう約束した。
「まぁ、また何かしたら今度こそボコボコにするから、アニキが」
サイジャ君はそう言いつつも勇者の縄を解く。
つーかまた俺が退治しなきゃならんのか……。
「あー、一応言っとく。俺の名前は」
「知ってる。ゴンスだろ。ほらっ」
ヴァニスさんは勇者ゴンスにギルドカードを投げ渡す。
「どわぁ!こ、個人情報、し、知られっ……」
勇者がガタガタ震えながら俺の方を見る。あーもう勝手に勘違いしとけ。
「いいか、ちゃんと伝えろよ」
俺は勇者をじーっと睨みつけて念押しする。
「わ、わ、わわ、わかった!」
勇者はギルドカードを拾い上げるて素早く立ち上がる。
「じゃ、俺はこれでっ!」
そしてシュタタタタタともの凄い勢いで走り去って行った。
「これで良かった……のか?」
「まぁまぁ、これでリザードマンは襲われなくなるでしょ」
「そうですね。とりあえずポゴナ村に帰りましょう。お二人の宴会をさせて下さい」
「おっしゃ。ゴキブリムカデ食い放題だぜっ!アニキ!」
「う~ん……」
「ハハハ、ちゃんと肉もありますよっ」
┋
┋
┋
……そうして俺達はポゴナ村に招待され、村人に歓迎された。リザードマンの女の子ともちゃんと仲良くなれたし、その後無事にランタン村にも帰れた。
更に風の噂によるとランタン村には男色のかなり恐ろしいゴブリンが住み着いているという伝説が生まれたらしい。
何かさぁ、俺の異世界転移おかしくね?
普通即チートスキル発動していろんな女の子助けたり周りからヨイショされたり現世の嫌な事さっさと忘れてクエストに挑んたりそこで無双してお金をいっぱ
オワリ
泣き叫ぶ勇者を追いながら、俺はいつの間にかさっきヴァニスさんが言っていた岩場の近くまで来ているのに気がつく。
罠とは知らず、勇者はそのまま一目散に岩場に駆け込んだ。
「ひ、人っ?すんません、ホモゴブリンに追われてるんです、助けて下さいっ!」
勇者は岩場に佇む人影に助けを求める。だがその人影は待機していたサイジャ君だった。
「オラアァァアー!死ねっ、勇者っ!」
「グエエェェーっ!」
完全に戦意を喪失していた勇者は、あっさりサイジャ君の飛び蹴りにやられてしまう。
強烈な攻撃を受けた勇者は、2~3m吹っ飛び地面に倒れた。
「よしっ、今だヴァニスさんっ!」
サイジャ君が呼ぶと、すぐにヴァニスさんが倒れた勇者を縄で捕縛する。
「大成功ですっ」
ヴァニスさんは勇者をしっかり縛リ上げたのを確認すると、こちらに満面の笑みを向けた。
「しっかしすげーよアニキは。完全にビビり散らしてたもんアイツ。一体何を言ったんだ?」
「は、はは……まぁ、何となくね」
まさかやばいホモと勘違いされてたとは言えず、曖昧な返事しかできない。
「な、なんだよお前らっ!」
突然、倒れている勇者が叫び声を上げる。
それに反応して、サイジャ君はゆっくりと勇者の方を見下した。
「俺達はゴブリンだ」
「と、リザードマンです」
「ゴ、ゴブリンだぁ?ゴブリンが俺に何の用だよっ」
「ちっ、うるせーなコイツ。とりあえず防具脱がすか」
「ぬ、ぬがっ……!や、止めてくれよ、それだけは勘弁してくれよぉ」
「だ~からそれ勘違いだっての!」
「脱がされるくらいなら…くっ、殺せ」
「止めろぉ!その台詞を男が言うんじゃねぇ!」
俺は耳を塞いでぷるぷる震える。もうこの勇者とは話が噛み合う気がしない。
「私達は村のリザードマンに迷惑を掛けるお前を退治しに来たんだよ」
まともに会話が出来ない俺達に代わってヴァニスさんが勇者に説明する。
「……はぁ?迷惑だぁ?」
「オイコラァ!何でそんな事したんだぁ!」
「あぁ?何だこのチビ。ガキは家に帰んな」
「なにぃ!やっちゃって下さいアニキ」
サイジャ君がヤンキー漫画の下っ端みたいな台詞を言いながらこっちを見る。いやそんな期待されても……。
「ひっ!言うから、言うからっ。だから襲うなぁ!」
「かんちが……もういいや」
いちいち突っ込んでももう話が進まないだけだし、大人しく話を聞く事にする。
「ギルドからの依頼があったんだよ…。俺は仕事しただけだっつーの、シ·ゴ·ト」
「し、シゴトぉ!?」
サイジャ君が仕事という言葉に過剰に反応する。まぁニ……自由ひとだしな。
「嘘をつくな。私達リザードマンは人間に何もしてないし、ギルドがそんな依頼出すわけないだろう」
「あ~、理由は……何かリザードマンが人間の狩場を荒らしたとか言ってたな。それで半殺しにして来いって」
「なっ!それを言ったら人間だってリザードマンの釣り場を勝手に使ってるだろっ」
「知らねーよそんな事、俺には関係無いし。まぁどっちもどっちじゃね(笑)」
「……よし、死刑で」
「ま、まぁまぁ落ち着いて」
俺はおもむろに拳を上げるサイジャ君を宥める。
しかしギルドってこんな一方的にモンスターを襲ってくるのか…。随分乱暴な組織だな。
「ん?でも半殺しって命令されてたのに、リザードマンは脅されただけだよね……なんで?」
もしかしたら、勇者なりに一方的なギルドの命令に反発心があったのかもしれない。
「え?……それはまぁ、うちのパーティ女の子いるし、優しい俺カッケー的な?」
「……よし、死刑で」
「ちょ、落ち着いて」
俺は再びおもむろに拳を上げるサイジャ君を宥める。
「もう何かコイツよくねぇ?別に何かコイツもうよくねぇ?」
俺は勇者を見ながらそう吐き捨てる。
モンスターを襲う悪役勇者というより、ただの小物に見えてきた……。
「……とりあえずギルドに命令を取り消すようお前から伝えろ」
ヴァニスさんが勇者に凄む。
「あー、わかったわかった。俺達も悪かったみたいだしな。伝えとくは」
勇者は一応ヴァニスさんの目を見ながらそう約束した。
「まぁ、また何かしたら今度こそボコボコにするから、アニキが」
サイジャ君はそう言いつつも勇者の縄を解く。
つーかまた俺が退治しなきゃならんのか……。
「あー、一応言っとく。俺の名前は」
「知ってる。ゴンスだろ。ほらっ」
ヴァニスさんは勇者ゴンスにギルドカードを投げ渡す。
「どわぁ!こ、個人情報、し、知られっ……」
勇者がガタガタ震えながら俺の方を見る。あーもう勝手に勘違いしとけ。
「いいか、ちゃんと伝えろよ」
俺は勇者をじーっと睨みつけて念押しする。
「わ、わ、わわ、わかった!」
勇者はギルドカードを拾い上げるて素早く立ち上がる。
「じゃ、俺はこれでっ!」
そしてシュタタタタタともの凄い勢いで走り去って行った。
「これで良かった……のか?」
「まぁまぁ、これでリザードマンは襲われなくなるでしょ」
「そうですね。とりあえずポゴナ村に帰りましょう。お二人の宴会をさせて下さい」
「おっしゃ。ゴキブリムカデ食い放題だぜっ!アニキ!」
「う~ん……」
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┋
┋
┋
……そうして俺達はポゴナ村に招待され、村人に歓迎された。リザードマンの女の子ともちゃんと仲良くなれたし、その後無事にランタン村にも帰れた。
更に風の噂によるとランタン村には男色のかなり恐ろしいゴブリンが住み着いているという伝説が生まれたらしい。
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オワリ
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