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第2話 ゴブリン、勇者に会う
勇者退治
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それからベロちゃんに乗って移動する方法は却下して、地道に歩いてポゴナ村まで辿り着いた。
「ほぇ~」
森を抜けて随分日当たりの良い草地にポゴナ村はあった。それに家らしい建物は無く、テントや木の洞などちょっとした隠れ家の様なものしか無かった。日光に当たらないと活動できないからか?
「ふ~ん、良い所じゃねぇか」
「ん?」
俺達が村に入ると、子供だろうか、小さいリザードマンがこっちをジーっと見ていた。
「こんにち」
「ひぎゃああぁぁー!!」
挨拶しようとすると、子供は泣き叫びながら逃げて行った。
そしてそれを聞いて集まってきた他の大人リザードマンも俺を畏怖の目で見ていた。
「くくく…これよこれ。アニキの姿に恐れ戦け」
「えぇ…」
サイジャ君がニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべる。
「みんな、ただいまー。この人達は悪い人じゃないよー」
ヴァニスさんが咄嗟にフォローしてくれる。
そのおかげか、村人達は訝しげな目をしながらも、少し警戒を解いてくれた。
「この人達は勇者をやっつけに来てくれたんだよ~」
俺は得意の営業スマイルを作りながら村人に近づく。
よし、このまま村人と打ち解けて…。
「グオォォォアッ!」
突然後ろからベロがドシンドシンと村に入って行く。
「ぎゃああっ!ゴブリンが化け物連れてきたぞおおっ!」
「子供を隠れさせろぉ!」
「逃げろ逃げろ逃げろぉ!」
村人達は一目散に逃げて行った…。
「…なんか、すいませんうちの人達が…」
「ははは、ゴブリンの恐ろしさを思い知ったか!」
┋
┋
┋
その後俺達は村人を恐がらせないために一旦村を出た。
「ふぁ~、腹減ったなー!」
「すいませんっ!村でご馳走するつもりだったんですが…。せめてコレ、食べます?」
「おっ、ムカデゴキブリの姿焼きじゃねぇか、サンキュー!」
サイジャ君は得体の知れない気持ち悪い虫を手渡され、バリバリと食べる。…流石ゴブリン。
「オオタさんもどうぞ」
「えっ!い、今はお腹すいてないんで」
「そうですかぁ」
ヴァニスさんはちょっと残念そうな顔をする。
「い、いや、やっぱ食べますっ!」
デブキャラがメシ断るとか論外でしょ!
ここはペロリと食って空気読まないと。 「おぇぇぇぇっ!う、うまい!おうぇ!まじぃ!ウンコの味がするっ!」
「本音出てんぞ~アニキ」
…何とかして全部喉に流し込む。しかし全然お腹が満たされた気がしない、口直ししたい…。あーあ、ポテチとかないかなー。
「ん?何か美味しそうな匂いが…」
なんか肉が焼ける良い匂いがどこからか漂ってきた。
「あれじゃねぇ?」
サイジャ君が草を掻き分け匂いの元を探し当てる。そこには豚の丸焼きの残骸があった。
「これって勇者がやったんじゃねーか?」
「調べてみましょう!」
ヴァニスさんが勇者の痕跡が無いか丸焼きの周囲を調査する。
「お!何だコレ?」
丸焼きからちょっと離れた所に大きな岩がある。そこに勇者の物であろうズタ袋が何個かあった。
「メシっ、メシを頼むっ!」
「いやそれより金でしょ」
「いや…もっと真面目な調査をですね…」
俺達3人は一斉にズタ袋をまさぐる。
しかしその中には殆ど何も無かった。
「これ、勇者が捨てていったんでしょうね」
ヴァニスさんがズタ袋を人差し指と親指で摘まんでぷらぷら揺らす。
そうだよなぁ、明らかにゴミ袋だし。
「ん、何だコレ?」
サイジャ君が地面に、落ちている紙切れみたいなのを拾い上げた。
「何それ、免許証?」
「ギルドカードですね、コレ」
ギ、ギルド!やっぱりあるのか。
聞くだけでワクワクする響きだぜ!
「なんかすげーチャラチャラした男が写ってんだけど、コイツが勇者か?」
「これさぁ、僕の顔に上書きして使えねぇかな?」
「無理だろ、アニキどう見てもゴブリンだし」
く、くそ。この世界って見た目差別がひどすぎないか!
「まぁ、そもそもギルドカードは魔術委員会に厳重に管理されてますしねぇ」
「へー、じゃあ忘れてったコイツは相当マヌケだな」
「もしかしたら……取りに戻って来るかもしれませんね」
「ほっほーん」
サイジャ君が何かを企む様な顔をした。
「よし、勇者が戻って来た所を正面突破だ」
「罠を張りましょう」
サイジャ君の意見は即却下され、代わりにヴァニスさんが話を主導する。
「罠ってどんなの?」
「そうですねぇ、ギルドカードを囮にジワリジワリ追い詰めて……」
ヴァニスさんがヒソヒソ声で俺達に作戦を話す。……だがその時、後ろの草陰から誰かがやって来る音が聞こえた。
「!?」
「ま、まさかもう勇者がっ?」
「ほぇ~」
森を抜けて随分日当たりの良い草地にポゴナ村はあった。それに家らしい建物は無く、テントや木の洞などちょっとした隠れ家の様なものしか無かった。日光に当たらないと活動できないからか?
「ふ~ん、良い所じゃねぇか」
「ん?」
俺達が村に入ると、子供だろうか、小さいリザードマンがこっちをジーっと見ていた。
「こんにち」
「ひぎゃああぁぁー!!」
挨拶しようとすると、子供は泣き叫びながら逃げて行った。
そしてそれを聞いて集まってきた他の大人リザードマンも俺を畏怖の目で見ていた。
「くくく…これよこれ。アニキの姿に恐れ戦け」
「えぇ…」
サイジャ君がニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべる。
「みんな、ただいまー。この人達は悪い人じゃないよー」
ヴァニスさんが咄嗟にフォローしてくれる。
そのおかげか、村人達は訝しげな目をしながらも、少し警戒を解いてくれた。
「この人達は勇者をやっつけに来てくれたんだよ~」
俺は得意の営業スマイルを作りながら村人に近づく。
よし、このまま村人と打ち解けて…。
「グオォォォアッ!」
突然後ろからベロがドシンドシンと村に入って行く。
「ぎゃああっ!ゴブリンが化け物連れてきたぞおおっ!」
「子供を隠れさせろぉ!」
「逃げろ逃げろ逃げろぉ!」
村人達は一目散に逃げて行った…。
「…なんか、すいませんうちの人達が…」
「ははは、ゴブリンの恐ろしさを思い知ったか!」
┋
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その後俺達は村人を恐がらせないために一旦村を出た。
「ふぁ~、腹減ったなー!」
「すいませんっ!村でご馳走するつもりだったんですが…。せめてコレ、食べます?」
「おっ、ムカデゴキブリの姿焼きじゃねぇか、サンキュー!」
サイジャ君は得体の知れない気持ち悪い虫を手渡され、バリバリと食べる。…流石ゴブリン。
「オオタさんもどうぞ」
「えっ!い、今はお腹すいてないんで」
「そうですかぁ」
ヴァニスさんはちょっと残念そうな顔をする。
「い、いや、やっぱ食べますっ!」
デブキャラがメシ断るとか論外でしょ!
ここはペロリと食って空気読まないと。 「おぇぇぇぇっ!う、うまい!おうぇ!まじぃ!ウンコの味がするっ!」
「本音出てんぞ~アニキ」
…何とかして全部喉に流し込む。しかし全然お腹が満たされた気がしない、口直ししたい…。あーあ、ポテチとかないかなー。
「ん?何か美味しそうな匂いが…」
なんか肉が焼ける良い匂いがどこからか漂ってきた。
「あれじゃねぇ?」
サイジャ君が草を掻き分け匂いの元を探し当てる。そこには豚の丸焼きの残骸があった。
「これって勇者がやったんじゃねーか?」
「調べてみましょう!」
ヴァニスさんが勇者の痕跡が無いか丸焼きの周囲を調査する。
「お!何だコレ?」
丸焼きからちょっと離れた所に大きな岩がある。そこに勇者の物であろうズタ袋が何個かあった。
「メシっ、メシを頼むっ!」
「いやそれより金でしょ」
「いや…もっと真面目な調査をですね…」
俺達3人は一斉にズタ袋をまさぐる。
しかしその中には殆ど何も無かった。
「これ、勇者が捨てていったんでしょうね」
ヴァニスさんがズタ袋を人差し指と親指で摘まんでぷらぷら揺らす。
そうだよなぁ、明らかにゴミ袋だし。
「ん、何だコレ?」
サイジャ君が地面に、落ちている紙切れみたいなのを拾い上げた。
「何それ、免許証?」
「ギルドカードですね、コレ」
ギ、ギルド!やっぱりあるのか。
聞くだけでワクワクする響きだぜ!
「なんかすげーチャラチャラした男が写ってんだけど、コイツが勇者か?」
「これさぁ、僕の顔に上書きして使えねぇかな?」
「無理だろ、アニキどう見てもゴブリンだし」
く、くそ。この世界って見た目差別がひどすぎないか!
「まぁ、そもそもギルドカードは魔術委員会に厳重に管理されてますしねぇ」
「へー、じゃあ忘れてったコイツは相当マヌケだな」
「もしかしたら……取りに戻って来るかもしれませんね」
「ほっほーん」
サイジャ君が何かを企む様な顔をした。
「よし、勇者が戻って来た所を正面突破だ」
「罠を張りましょう」
サイジャ君の意見は即却下され、代わりにヴァニスさんが話を主導する。
「罠ってどんなの?」
「そうですねぇ、ギルドカードを囮にジワリジワリ追い詰めて……」
ヴァニスさんがヒソヒソ声で俺達に作戦を話す。……だがその時、後ろの草陰から誰かがやって来る音が聞こえた。
「!?」
「ま、まさかもう勇者がっ?」
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