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第98話 万象共鳴モード
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ディーノは自分の一撃によって発生した巨大クレーターの真ん中で、人間が起こしたとは思えない凄まじい破壊の痕跡を呆然と眺める。
そして数秒間の沈黙の後、ディーノは漸く現実を呑み込み震える声で口を開いた。
「何だよ……ッ、何だよコレッ!! すっげえェーッ!! 俺がやったのか、この腕一本で……あれ?」
この破壊を自分の腕が行ったと飲み込めたディーノは自分の右手をまじまじと眺める。
しかしその目に飛び込んで来たのは、拳がグチャグチャに崩れて至るところの皮膚が消し飛んだ腕が、煙を上げて再生を開始している光景であった。
恐らく先程の一撃を発した右腕が耐えられず自壊したのを、身体の周りの則が勝手に修復を開始したのだろう。
だがこんな事は当然初めてであり、自分の身体に何か途轍もない変化が派生しているのは間違い無い。
「万象ッ共鳴だ……」
ボロボロに成った自分の右腕を不思議そうに眺めるディーノの耳に、ゴンザレスの震えた弱々しい声が聞こえた。
その声には何時ものエネルギーが感じられず、何やら圧巻させられている様子である。
「ばんしょ……何だって? 俺の身体に起こってる事について何か知ってる事が有るんならハッキリ言ってくれよ」
「万象共鳴だ、ボスの……ボスの力の正体だよ。その力が有ったからボスは……でもッ流石に早すぎる。いやでもッ、ディーノはボスの息子だし……」
ディーノが聞き返すとゴンザレスは一層は歯切れが悪くなり、言葉に詰まり所々ボソボソと聞き取れ無い程小さな声を発した。
殆ど何を言っているのか聞き取れず、聞こえた所も知らない単語ばかりで理解出来ない。
そして遂に、ずっと我慢して耳を傾けていたディーノのイライラが爆発する。
「何行ってんのか欠片もわっかんねえよッ!! もっとハキハキと俺でも分かる単語を使って喋れ、俺は何がどうしてこう成ってコレから如何成るの??」
「あっ! あぁ……ごめん。ちょっと取り乱してた、余りにも珍しい物を見たもんだから。安心してディーノ、その力は取り扱いに失敗すれば死ぬけど、上手く扱えば途轍もない武器になる凄いモノなんだから!!」
「……取り扱いに失敗したら死ぬと言われて安心出来る人間なんてこの世に居ないと思うが、アンタが其れだけ言うって事は確実に凄いモノなんだろうな」
「うん凄いッ!! 凄いって事だけは胸を張って保証できるよ。何せ、ボス……君のお父さんであるルチアーノが世界最強に上り詰めた力だからねッ!!」
その言葉を聞いた瞬間、ディーノの目の色が変わる。
「親父と……同じ、力?」
「そうさ! その力は『万象共鳴モード』って言ってね、通常の何倍、下手すれば数百倍の則に干渉してエネルギーを操れる力だよ!! 凄いなディーノ、その力を上手く鍛えればオーウェンさんを倒す事だって不可能じゃない。其れにボスクラスまでその力を高めればビッグネームとだって対等以上に戦えるはずだ。良いなぁ~ディーノ! 僕もそんな力がッ……」
「ちょッ、ゴンちゃん一端落ち着けよ! ハッスルしすぎて情報過多に成ってる!!」
ボソボソと歯切れの悪い言葉を小さな子で発していたかと思えば、突然ゴンザレスの口からダムが決壊したかの様に言葉が溢れ出す。
ディーノはそのマシンガントークについて行けず、慌ててストップを掛けた。
興奮しすぎて説明の中に感情が大量に混入してしまっている。
「ご、ごめん……つい興奮しちゃって。でも具体的に何が凄いのかを聞かれると~、要するにスーパーサイヤッ……」
「変われゴンザレス、私が代わりに説明する」
ゴンザレスが発しようよした言葉を遮り、今まで基本的に修業にノータッチであったアンベルトの声が背後から響いた。
驚いて後ろを振り向くと数メートル後ろにいつの間にかアンベルトが立っていた。
いきなり出現したアンベルトに驚くのと同時に、ディーノは普段滅多に修行中現われないこの男が現われた事から余程の異常事態が自分に起きていると実感する。
「珍しいな、アンタが直接此処に現われるなんて」
「来たくて来た訳では無い、面倒だが仕方無く来ただけだ。この件に関しては実際に万象共鳴に突入出来る人間でなければ説明する事が困難だからな。加えて慎重に事を進めなくては、下手するとお前自身の力によって圧死する」
「おいおい、あんまり怖い事言うなよ……」
「事実を述べたまでだ、このままコントロール技術を上げずに則との共鳴力が上昇し続ければ間違いなく死ぬ。それ故、今から急ピッチで則のコントロールの修業を開始してもらう」
「お、おう……未だに何が何だかイマイチ分からねえが、死にたかねえから全力で修業するよ。で、何をすれば良い?」
アンベルトが発した脅しは意図してかどうかは分からないが、ディーノの尻に火を付けた。
この数日間でディーノが目まぐるしい成長を遂げた一番の理由、それは全力で自分の持ちうる技術や可能性全てを出さなければ冗談抜きに死ぬ極限環境にある。
彼自身の限界のギリギリ上を攻めた課題を出して命の危機に晒すことで、通常では有り得ない速度での限界突破を実現していくのだ。
そして今回も命という最も大切な物を人質に取られたディーノは、全力の集中でもって新たな修業に挑む。死ぬ気でやる、其れがどんな修行をするのかより大切な事だ。
「うむ、といっても先ずは初歩の初歩だ。一本の蝋燭に火をを付けて消すを1万回繰り返せ、其れが達成できるまでは食事抜きで他の修業も中止だッ」
そう言ってアンベルトは懐から何の変哲も無い蝋燭を出し、地面に立てたのだった。
そして数秒間の沈黙の後、ディーノは漸く現実を呑み込み震える声で口を開いた。
「何だよ……ッ、何だよコレッ!! すっげえェーッ!! 俺がやったのか、この腕一本で……あれ?」
この破壊を自分の腕が行ったと飲み込めたディーノは自分の右手をまじまじと眺める。
しかしその目に飛び込んで来たのは、拳がグチャグチャに崩れて至るところの皮膚が消し飛んだ腕が、煙を上げて再生を開始している光景であった。
恐らく先程の一撃を発した右腕が耐えられず自壊したのを、身体の周りの則が勝手に修復を開始したのだろう。
だがこんな事は当然初めてであり、自分の身体に何か途轍もない変化が派生しているのは間違い無い。
「万象ッ共鳴だ……」
ボロボロに成った自分の右腕を不思議そうに眺めるディーノの耳に、ゴンザレスの震えた弱々しい声が聞こえた。
その声には何時ものエネルギーが感じられず、何やら圧巻させられている様子である。
「ばんしょ……何だって? 俺の身体に起こってる事について何か知ってる事が有るんならハッキリ言ってくれよ」
「万象共鳴だ、ボスの……ボスの力の正体だよ。その力が有ったからボスは……でもッ流石に早すぎる。いやでもッ、ディーノはボスの息子だし……」
ディーノが聞き返すとゴンザレスは一層は歯切れが悪くなり、言葉に詰まり所々ボソボソと聞き取れ無い程小さな声を発した。
殆ど何を言っているのか聞き取れず、聞こえた所も知らない単語ばかりで理解出来ない。
そして遂に、ずっと我慢して耳を傾けていたディーノのイライラが爆発する。
「何行ってんのか欠片もわっかんねえよッ!! もっとハキハキと俺でも分かる単語を使って喋れ、俺は何がどうしてこう成ってコレから如何成るの??」
「あっ! あぁ……ごめん。ちょっと取り乱してた、余りにも珍しい物を見たもんだから。安心してディーノ、その力は取り扱いに失敗すれば死ぬけど、上手く扱えば途轍もない武器になる凄いモノなんだから!!」
「……取り扱いに失敗したら死ぬと言われて安心出来る人間なんてこの世に居ないと思うが、アンタが其れだけ言うって事は確実に凄いモノなんだろうな」
「うん凄いッ!! 凄いって事だけは胸を張って保証できるよ。何せ、ボス……君のお父さんであるルチアーノが世界最強に上り詰めた力だからねッ!!」
その言葉を聞いた瞬間、ディーノの目の色が変わる。
「親父と……同じ、力?」
「そうさ! その力は『万象共鳴モード』って言ってね、通常の何倍、下手すれば数百倍の則に干渉してエネルギーを操れる力だよ!! 凄いなディーノ、その力を上手く鍛えればオーウェンさんを倒す事だって不可能じゃない。其れにボスクラスまでその力を高めればビッグネームとだって対等以上に戦えるはずだ。良いなぁ~ディーノ! 僕もそんな力がッ……」
「ちょッ、ゴンちゃん一端落ち着けよ! ハッスルしすぎて情報過多に成ってる!!」
ボソボソと歯切れの悪い言葉を小さな子で発していたかと思えば、突然ゴンザレスの口からダムが決壊したかの様に言葉が溢れ出す。
ディーノはそのマシンガントークについて行けず、慌ててストップを掛けた。
興奮しすぎて説明の中に感情が大量に混入してしまっている。
「ご、ごめん……つい興奮しちゃって。でも具体的に何が凄いのかを聞かれると~、要するにスーパーサイヤッ……」
「変われゴンザレス、私が代わりに説明する」
ゴンザレスが発しようよした言葉を遮り、今まで基本的に修業にノータッチであったアンベルトの声が背後から響いた。
驚いて後ろを振り向くと数メートル後ろにいつの間にかアンベルトが立っていた。
いきなり出現したアンベルトに驚くのと同時に、ディーノは普段滅多に修行中現われないこの男が現われた事から余程の異常事態が自分に起きていると実感する。
「珍しいな、アンタが直接此処に現われるなんて」
「来たくて来た訳では無い、面倒だが仕方無く来ただけだ。この件に関しては実際に万象共鳴に突入出来る人間でなければ説明する事が困難だからな。加えて慎重に事を進めなくては、下手するとお前自身の力によって圧死する」
「おいおい、あんまり怖い事言うなよ……」
「事実を述べたまでだ、このままコントロール技術を上げずに則との共鳴力が上昇し続ければ間違いなく死ぬ。それ故、今から急ピッチで則のコントロールの修業を開始してもらう」
「お、おう……未だに何が何だかイマイチ分からねえが、死にたかねえから全力で修業するよ。で、何をすれば良い?」
アンベルトが発した脅しは意図してかどうかは分からないが、ディーノの尻に火を付けた。
この数日間でディーノが目まぐるしい成長を遂げた一番の理由、それは全力で自分の持ちうる技術や可能性全てを出さなければ冗談抜きに死ぬ極限環境にある。
彼自身の限界のギリギリ上を攻めた課題を出して命の危機に晒すことで、通常では有り得ない速度での限界突破を実現していくのだ。
そして今回も命という最も大切な物を人質に取られたディーノは、全力の集中でもって新たな修業に挑む。死ぬ気でやる、其れがどんな修行をするのかより大切な事だ。
「うむ、といっても先ずは初歩の初歩だ。一本の蝋燭に火をを付けて消すを1万回繰り返せ、其れが達成できるまでは食事抜きで他の修業も中止だッ」
そう言ってアンベルトは懐から何の変哲も無い蝋燭を出し、地面に立てたのだった。
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