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「須崎さん、貴女ってプロ? こんなおいしいの飲んだ事ないわ」
「ありがとうございます。美味しいモヒートのコツは、新鮮なミントと、香りを引き出す事なんです」
だから直前で自家栽培のミントを摘んできたり、ごりごり擦ったりしていたのか。
すっかり清涼感に満たされた私は、もう彼女に対してマイナスなイメージを欠片も持っていなかった。
「ねえ、貴女恋人は?」
「はひ!? え、あ、その、い、いないですよ。こんな酒カス女ですよ?」
顔を真っ赤にさせて、しどろもどろになる須崎は、それでも今使った道具をきれいに洗っている。顔と手の動きがミスマッチだ。
「じゃあ、実は男だったりしないの? そしたら、私が付き合うわ」
「残念ですが女なんですねー。男の人はこのキッチン見てみんなドン引きでした」
そう言うと今度はシェイカーにロックアイスと数種類の液体をぱぱぱと注いで、ふたをすると胸と顎の中間くらいの高さでシェイクを始めた。その立ち姿が本当に絵になる。
シェイカーの中でリズミカルに氷が跳ねているのが、音だけでわかる。
数秒間。シェイカーに霜がうっすらとかかったら、シェイクを止めておしりをポンと叩いた。簡単に外れた注ぎ口の蓋。そんな小技があったのかと驚く私をしり目に、彼女はカクテルグラスに赤い液体を注いだ。
「きれいなお酒ね。なんていうの?」
「コスモポリタンです」
「へえ。おいしそう」
「ウォッカベースなので、度数高いですよ?」
「え」
そういう須崎は涼しい顔でそれを飲んでいる。酒カス女は本当なのかもしれない。
「ねえ、あなたはいい男捕まえようとか、そういうの考えないの?」
率直な疑問を口にすると、彼女は苦笑を浮かべていた。
「あはは。さっきも言った通りですよ。酒カス女なんで、殿方には引かれておしまいです」
「そうなの? むしろ楽しそうじゃない。毎日おいしいお酒、飲ませてくれるんでしょう?」
「毎日はだめですよ。結構糖度高いですから、すぐ太っちゃいますよ?」
ダメダメと手でバッテンを作る彼女。いちいちあざとい。
というのも、ジャケットを脱いだ彼女は、存外女子らしい体つきだったのだ。ボリューミーなバストと、パンツに綺麗にしまわれたシャツの裾から、腰の細さとそのからのヒップラインが強調されている。こんなメリハリボディ、維持するだけでプライベートな時間が無くなる。
たぶん猫背だし着やせしているしで、今まで気付かなかった。気付いてたら会社中の独身男性がこぞって声をかけてくるだろう。
こんなのは反則だ。
こんなギャップを目にして、彼女に入れ込まない人間なんていやしない。
「ねえ、もう一杯。次はちょっと強めがいいわ」
このままでは落ちてしまう。だったら先に酒に落ちた方がいい。相手も私も同性なのだ。間違いがあってはダメだ。
「ありがとうございます。美味しいモヒートのコツは、新鮮なミントと、香りを引き出す事なんです」
だから直前で自家栽培のミントを摘んできたり、ごりごり擦ったりしていたのか。
すっかり清涼感に満たされた私は、もう彼女に対してマイナスなイメージを欠片も持っていなかった。
「ねえ、貴女恋人は?」
「はひ!? え、あ、その、い、いないですよ。こんな酒カス女ですよ?」
顔を真っ赤にさせて、しどろもどろになる須崎は、それでも今使った道具をきれいに洗っている。顔と手の動きがミスマッチだ。
「じゃあ、実は男だったりしないの? そしたら、私が付き合うわ」
「残念ですが女なんですねー。男の人はこのキッチン見てみんなドン引きでした」
そう言うと今度はシェイカーにロックアイスと数種類の液体をぱぱぱと注いで、ふたをすると胸と顎の中間くらいの高さでシェイクを始めた。その立ち姿が本当に絵になる。
シェイカーの中でリズミカルに氷が跳ねているのが、音だけでわかる。
数秒間。シェイカーに霜がうっすらとかかったら、シェイクを止めておしりをポンと叩いた。簡単に外れた注ぎ口の蓋。そんな小技があったのかと驚く私をしり目に、彼女はカクテルグラスに赤い液体を注いだ。
「きれいなお酒ね。なんていうの?」
「コスモポリタンです」
「へえ。おいしそう」
「ウォッカベースなので、度数高いですよ?」
「え」
そういう須崎は涼しい顔でそれを飲んでいる。酒カス女は本当なのかもしれない。
「ねえ、あなたはいい男捕まえようとか、そういうの考えないの?」
率直な疑問を口にすると、彼女は苦笑を浮かべていた。
「あはは。さっきも言った通りですよ。酒カス女なんで、殿方には引かれておしまいです」
「そうなの? むしろ楽しそうじゃない。毎日おいしいお酒、飲ませてくれるんでしょう?」
「毎日はだめですよ。結構糖度高いですから、すぐ太っちゃいますよ?」
ダメダメと手でバッテンを作る彼女。いちいちあざとい。
というのも、ジャケットを脱いだ彼女は、存外女子らしい体つきだったのだ。ボリューミーなバストと、パンツに綺麗にしまわれたシャツの裾から、腰の細さとそのからのヒップラインが強調されている。こんなメリハリボディ、維持するだけでプライベートな時間が無くなる。
たぶん猫背だし着やせしているしで、今まで気付かなかった。気付いてたら会社中の独身男性がこぞって声をかけてくるだろう。
こんなのは反則だ。
こんなギャップを目にして、彼女に入れ込まない人間なんていやしない。
「ねえ、もう一杯。次はちょっと強めがいいわ」
このままでは落ちてしまう。だったら先に酒に落ちた方がいい。相手も私も同性なのだ。間違いがあってはダメだ。
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